インスリン抵抗性が高い高齢者は手術後に認知機能障害を起こす可能性が高くなる

高齢者は手術後に認知機能障害を起こすリスクが高くなります。その予測因子は何でしょう?当然私が記事にするので、糖質過剰摂取と関連しています。

今回の研究では、60歳以上(平均年齢69.8歳)で全身麻酔下で少なくとも2時間続く予定された胃腸(消化器)の手術を受ける患者124人が対象です。そのうち51人の患者 (41.1%) が手術後7日目に術後認知機能障害(POCD)と診断されました。(図は原文より)

上の図のように、術後認知機能障害を起こす可能性は5つのメタボの危険因子があると3.13倍、インスリン抵抗性の指標のHOMA-IRが2.6を超えると3.26倍でした。

上の図は様々な危険因子の有無による、インスリン抵抗性と術後認知機能障害の関連性を示しています。糖尿病、高血圧、内臓肥満、脂質異常、メタボリックシンドロームのどれについても、有無に関わらずインスリン抵抗性があれば術後認知機能障害の可能性は高くなっていました。特に高血圧やメタボリックシンドロームがあると術後認知機能障害の可能性は3倍以上でした。

以前の記事「高血糖や糖尿病はせん妄のリスクを高くする」で書いたように、脳のグルコース代謝を測定するPETを使って、せん妄を起こした脳を調べてみると、せん妄を起こした全ての人で脳の皮質のブドウ糖の代謝低下を認めました。術前のインスリン抵抗性は、脳のインスリン抵抗性も起こしている可能性が高く、術後に炎症が高まると、脳でブドウ糖がさらにうまく使えない状態になりやすいのでしょう。

糖質制限をしてケトン体を使えるようにしていても、術後の糖の入った点滴や術後の糖質たっぷりの入院食により、ケトン体産生が低下する可能性があります。外科医がケトン体産生を高める意識を持ってくれれば、術後の認知機能障害やせん妄の頻度は減少するかもしれません。糖質過剰摂取の人も入院前からできる限り糖質制限をして、術後早期回復プログラム(ERAS)に反して、術前の絶食時間を長くすると認知機能障害やせん妄リスクは減ると思います。

 

「Insulin Resistance Predicts Postoperative Cognitive Dysfunction in Elderly Gastrointestinal Patients」

「インスリン抵抗性は高齢消化器患者の術後の認知機能障害を予測する」(原文はここ

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