中性脂肪/HDLコレステロール比と腎機能の低下

腎機能の低下は多因子性ではあるでしょうが、一番の原因は糖質過剰摂取でしょう。タンパク質や塩分の過剰摂取で腎臓の負担が蓄積し、腎機能が低下すると言っている人もいまだにいると思いますが、恐らくウソです。

今回の研究では中性脂肪/HDLコレステロール比と腎機能低下の関連を調べています。中性脂肪/HDLコレステロール比というのはインスリン抵抗性を表す指標です。中性脂肪/HDL比が高くなると様々な糖質過剰症候群のリスクが増加します。(「中性脂肪/HDLコレステロール比と冠動脈心疾患のリスク」「脂肪肝と中性脂肪/HDLコレステロール比」「中性脂肪/HDLコレステロール比とうつ病」など参照)

eGFRが20~122の22~93歳の合計7,316人が対象です。中性脂肪/HDL比に基づいて、中性脂肪/HDL比が1.6未満(グループ1)、1.6~2.97未満(グループ2)、2.97以上(グループ3)の3つのグループに分けました。

腎機能の低下はeGFRがベースラインで60以上の正常値だったものが60未満になった場合、ベースラインで60未満だったものが、eGFRのカテゴリーの低下(≥90 [G1]、60-89 [G2]、45-59 [G3a]、30-44 [G3b]、15-29 [G4]、<15 [G5])またはeGFRの持続的な低下が1年で5をこえるもの、またはeGFRの30%以上の低下と定義されました。

ベースラインでeGFRが60以上だった人に腎機能低下が起きる可能性は次の表のようです。(表は原文より改変)

グループ1グループ 2グループ 3
TG/HDL-C < 1.601.60 ≤ TG/HDL-C < 2.97TG/HDL-C ≥ 2.97
多変数調整、OR (95 % CI)11.27 (1.01、1.59)1.30 (1.03、1.65)

中性脂肪/HDL比が1.6以上だと腎機能低下が起きる可能性が高まります。

ベースラインでeGFR未満の人に腎機能低下が起きる可能性は次のようです。

グループ1グループ 2グループ 3
TG/HDL-C < 1.601.60 ≤ TG/HDL-C < 2.97TG/HDL-C ≥ 2.97
腎機能低下の複合エンドポイント
  多変数調整、OR (95 % CI)11.32 (0.75、2.30)1.90 (1.21、3.23)
eGFRカテゴリーの減少
  多変数調整、OR (95 % CI)11.33 (0.76, 2.32)1.89 (1.12、3.21)
eGFRの急激な低下
  多変数調整、OR (95 % CI)11.24 (0.30、5.13)3.28 (0.97、11.10)
eGFR が30%以上低下
  多変数調整、OR (95 % CI)11.80 (0.70、4.60)2.56 (1.05、6.38)

中性脂肪/HDL比が2.97以上だとかなり腎機能低下のリスクがありそうです。

糖質過剰摂取では高血糖、酸化ストレスが増加します。炎症も起きやすくなるでしょう。またインスリン抵抗性も高くなります。慢性腎臓病、透析の原因疾患は圧倒的に糖尿病性のものであり、その他もほとんどが糖質過剰摂取からくるものからくると考えられます。

私は中性脂肪/HDL比は1.3以下を推奨しています。できれば1以下にしたいですね。

「The effect of triglycerides to high-density lipoprotein cholesterol ratio on the reduction of renal function: findings from China health and retirement longitudinal study (CHARLS)」

「腎機能の低下に対する中性脂肪対HDLコレステロール比の影響:中国の健康と退職の縦断的研究(CHARLS)からの調査結果」(原文はここ

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