低LDLコレステロールと心不全

LDLコレステロール値が高いと医師はそれを下げるように教育されています。それに疑問を持つ医師の方が少ないでしょう。しかし、実際にはLDLコレステロール値が高い方が様々な利点があることが様々な研究で示されています。

今回の研究では、左心室駆が40%未満(平均35%)の心不全患者305人(平均年齢70.3歳)が対象です。平均追跡期間は11.3年で心不全の期間は15 か月から20.5年の範囲でした。LDLコレステロール値に従って110mg/dl を超えるグループと110mg/dl以下の2つのグループに分けました。スタチンを飲んでいるかどうかの違いはありません。(図は原文より)

上の図は20年間の追跡期間中の生存曲線を示しています。実線がLDL110超え、点線が110以下のグループです。LDL値が高い患者の方が21%長く生存しました。

上の図は70歳以下(a)と70歳以上(b)で分けたときの生存率です70歳以上では違いは非常に顕著です。

さらに、 LDLコレステロールと死亡率との関連の多変量解析ではLDL110以下は死亡のリスクが1.479倍となり、その他に糖尿病があると1.683倍、慢性の心房細動で1.548倍でした。以前の記事「スタチンと心房細動」で書いたようにスタチンは心房細動のリスクを高くします。

LDLコレステロールと死亡率との関連の多変量解析を70歳以下に限定すると、さらに死亡リスクは高くなり、LDL110以下で4.475倍にもなりました。

上の図はスタチンにより影響を受けたかを示しています。(a )は70歳以下でスタチンによる治療を受けた生存率です。スタチンでLDLが110以下となったグループは20年間の生存率が32%でした。(b)は70歳以上の患者の生存率です。LDL110超えの場合は予後良好と関連しており、20年生存率は63%でした。

20年間の追跡調査中に患者の43%が死亡し、死亡した患者のLDLコレステロール値は、追跡期間の終了時に生存していた患者のレベルと比較して有意に低くなっていました。

つまり、より低いLDLコレステロール値を維持した心不全患者に対するスタチン療法は死亡率増加をもたらします。これは他の研究でも示されています。

以前の記事「スタチンの心毒性」でも書いたように、スタチンをやめると心機能が改善する人も多くいますし、「低コレステロールは心不全のリスクを高くする」「スタチンでLDLコレステロール値の低い心不全患者の方が死亡率が高い」「慢性心不全では低コレステロールの方が死亡率が高い」でも書いたように、LDLコレステロール値が低い方が心不全のリスクや心不全での死亡率が高くなってしまいます。

コレステロールが高いことは本当に有害なことなのでしょうか?よく考えて自分で判断しましょう。

 

「A longitudinal 20 years of follow up showed a decrease in the survival of heart failure patients who maintained low LDL cholesterol levels 」

「20年間の長期追跡調査で、低LDLコレステロール値を維持した心不全患者の生存率が低下することが示された」(原文はここ

2 thoughts on “低LDLコレステロールと心不全

  1. こんばんは
    いつも有り難うございます

    私は55才の時動脈硬化を調べてもらいました
    平均より硬化が進んでおり、血圧、肥満、血糖値等問題なくLDLコレステロールだけが基準値越えでクレストールを処方されて基準値になりました が、一年半後動脈硬化を調べてもらったところが全く変わっていませんでした え?ってなりますよね そんな時たまたま読んでいた新聞に動脈硬化の改善に亜麻仁油がいいという記事を読み早速毎朝小さじ1飲んで6ヶ月後、何と20才も改善されていました
    クレストール飲んでいた時朝ベッドから降りる時足がジンとして痛かったり指がこわばってもしかしてリューマチかと疑ったりしていました それにしてもクレストール勧めた時の先生は「何の害もない、効果があるだけの本当に素晴らしい薬です」この言葉、忘れません

    1. マエダユキコさん、コメントありがとうございます。

      本来は医療はインフォームドコンセントが当たり前ですが、実際には多くの場面でこれが行われていません。
      逆に安全、安心ばかりが強調されているようにも思えます。
      副作用のない薬は存在しません。

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