また変な研究 日本人の炭水化物と脂肪の摂取量と死亡リスク

バランスの良い食事が健康的だというエビデンスはありません。でもどうしてもそう願ってやまない人たちがいて、糖質制限などを批判したいようです。

今回の研究では日本人を対象に、炭水化物および脂質の摂取量と死亡リスクとの関連について調べました。これを行った方が言うには、「欧米をはじめとする諸外国における近年の疫学研究は、極端な炭水化物と脂質の摂取習慣が死亡リスクを高めることを示唆しており、低炭水化物食と低脂質食がもたらす「短期的な効果」と「長期的な生命予後」のあいだに大きな矛盾があるため、国際的な関心が高まっています。しかし、欧米人よりも一日あたりの炭水化物摂取量が多く、脂質摂取量が少ない日本人を含む東アジア人での知見はほとんどありません。」ということで行った研究のようです。欧米の「極端な炭水化物の摂取習慣が死亡リスクを高める」というのは以前の記事「糖質を制限すると寿命が縮まる? 冗談のような研究」で取り上げた研究でしょう。

J-MICC研究の参加者のうち、がんおよび心血管疾患の既往歴を持たない男性34,893人と女性46,440人を対象としています。追跡期間は約9年間です。1日当たりの炭水化物および脂質の摂取量は食物摂取頻度調査票によって推定している、ということなので、毎度のことですが食事アンケートのデータは質が低いデータです。まあ、見ていきましょう。(図は名古屋大学のプレスリリースより)

男性では炭水化物の摂取量(エネルギー比率)が40%未満だと、全死亡、がん死亡リスクが増加するようです。炭水化物50~55%と比較して40%未満では全原因死亡では1.59倍、がん死亡は1.48倍です。循環器疾患死亡は45~50%で2.32倍です。

女性の炭水化物摂取量との関連は男性と違い追跡期間によって分けていますね。死亡リスク増加の有意差を出すために苦労したようですね。追跡期間が5年以上のとき、炭水化物が50~55%と比較して、65%以上の高炭水化物摂取群で全死亡リスクが1.71倍(有意差なし)、がん死亡リスクは55~60%で1.38倍(有意差あり)、60%以上で1.40倍(有意差なし)でした。男性とは逆に炭水化物が多い方が死亡リスクが高くなっています。循環器疾患死亡とは関連がありませんでした。

しかし一方で追跡期間が5年未満では、45~50%と60%以上で循環器疾患死亡リスクが上昇し、それぞれ4.04倍と3.46倍でした。なんかグチャグチャですね。

では脂質摂取量ではどうでしょう。

男性では脂質摂取量20~25%と比較して、35%以上でがん死亡リスクが1.79倍です。循環器疾患死亡は脂質摂取量の増加に伴い死亡リスクが増加する傾向がありました。

一方で、女性の脂質摂取量の増加は全死亡リスクとがん死亡リスクを下げる傾向がありました。また飽和脂肪酸摂取と不飽和脂肪酸摂取に分けて分析したところ、飽和脂肪酸の摂取量の増加が全死亡リスクとがん死亡リスクを低下させる傾向にありました。

この研究グループは「ローカーボ食またはハイカーボ食がよい」、「脂質摂取はできるだけ控えたほうがよい」とする食事習慣を見直すことを提案しています。

つまり、食事バランスの重要性を訴えたいようです。アホくさ。必死になって、男女や死因によって摂取量の範囲や追跡期間まで変えて、やっと見つけたような結果でしょう。

完全に男女で真逆の結果に見えます。いずれにしても食事アンケートのデータである限り、どうでもいいような結果しか導き出せません。過少申告は当たり前だし、1年間毎日同じ食事をするわけでもないし。炭水化物40%未満ではロカボにもなっていません。糖質過剰摂取者を集めて研究しているのに、40%未満というのはまず考えられません。データがおかしいと気づかないようです。

まあ、論文のための研究なんでしょう。しかし、この結果は独り歩きをする可能性があります。アホなマスコミがこの結果だけを広げるかもしれません。

「Dietary Carbohydrate and Fat Intakes and Risk of Mortality in the Japanese Population: the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study」

「日本人の食事による炭水化物と脂肪の摂取量と死亡リスク:日本の多機関共同コホート研究」(原文はここ

6 thoughts on “また変な研究 日本人の炭水化物と脂肪の摂取量と死亡リスク

  1. 医療部外者から見ても、
    糖尿病標準治療を受けていらっしゃる
    方々の三大合併症が治らない、
    寧ろ進行して透析・失明・切断など
    悲惨な予後が明白なのに、
    今だに「極端な炭水化物の摂取習慣
    が死亡リスクを高める」
    段階に留まっている「専門家」。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      この研究は臨床医のものではないでしょうから、データをいじくって自分の思っている結論を出すことに
      喜びを感じているのだと思います。

  2. 何としても初期設定の結論を導こうとする努力が垣間見えますね。
    多数の研究者が雁首揃えていますが、みんなその仕事は楽しいのでしょうか 笑

  3. 私もこの研究のニュース見て、なんで炭水化物40パーセント未満だけが纏められてるんだろうと思いました。先生の仰るとおり、まぁそういうことですよね。

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