ゼチーアの筋毒性

エゼチミブ、商品名ゼチーアはLDLコレステロールが高い人に対して、スタチンと併用されたり、スタチンが飲めない場合の薬としてよく使われています。

スタチンはミトコンドリア毒性があり、ミトコンドリア障害を起こし、これが筋肉のATP低下の原因だと考えられています。スタチンの副作用として筋毒性は有名ですが、ゼチーアはどうなのでしょうか?

1つの報告では、スタチンと併用せず、単独でゼチーアを使用して筋肉痛を発症し、CPK(クレアチンキナーゼ)が増加した例と、スタチンだけでは筋肉の問題が発生しなかったのにゼチーアを併用したら筋肉痛とCPK上昇が起きた例が報告されています。(ここ参照)

別の報告では、ゼチーア単独療法でのCPK上昇を認めた2例を報告しています。(ここ参照)

さらに興味深いものとして、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)にゼチーア単独で使用した効果を研究したものがあります。

その結果ゼチーアはNAFLDの肝線維症を改善しましたが、肝臓の長鎖脂肪酸となんとHbA1cを増加させました。ゼチーアは6か月で肝臓の組織は改善しましたが、酸化ストレス、インスリン抵抗性、HbA1cを増加(6.1から6.5へ)させました。

脂質も糖質もエネルギー源として代謝されるので、このようなリンクは当然あるのでしょうね。

そう言えば、ナイアシンもLDLコレステロールを低下させますが、インスリン抵抗性は高くなります。(「ナイアシンは安全か? その1」参照)

ナイアシン単独での筋毒性は私は知りませんが、スタチンと併用した場合、スタチンだけでは問題ないのにナイアシンを追加したら急に筋毒性が発症した報告があります。(ここここ参照)

そうすると当然だと思いますが、筋肉はエネルギーを取り込んだり、グリコーゲンを貯蔵したり、人体でエネルギーを消費する最大に器官なので、糖代謝と脂質代謝と筋肉は大きく関連しているのでしょう。

スタチンやナイアシンを使っていないのにLDLコレステロールが非常に低い人は糖尿病のリスクが2倍以上高くなります。(「低LDLコレステロールは糖尿病のリスクを高める」参照)

スタチンやナイアシンでLDLコレステロールが低下すると糖尿病のリスクが上がり、逆に糖質制限で血糖値が下がり糖尿病になる可能性が低下するとLDLコレステロールが上昇することが多いことを考えると、血糖値および耐糖能とLDLコレステロールおよびその他の脂質(中性脂肪やHDLコレステロール)は別々の次元の問題ではなく、お互いに強く関連して影響しあっていると考えられます。糖代謝と脂質代謝は一体なのでしょう。(「低LDLコレステロールと糖尿病」参照)そしてそこには筋肉の働きも一体のものだと思われます。

コレステロールを低下させると筋毒性が起きる可能性があります。

ある報告では、脂質低下療法で筋障害のある300人以上の患者を評価する中で、複数の脂質低下療法に対する不耐性、脂質低下療法を受けていない間の空腹時の呼吸交換比(RER)の上昇、高中性脂肪血症などの共通の特徴を持つグループを特定しました。RERの上昇も高中性脂肪も糖質をエネルギー源にしている人の特徴です。つまり、脂肪酸をエネルギーにすることが上手くできないのです。または糖質から脂質への代謝の切り替えが悪いとも考えられます。これらの特徴を有する患者のうち約30人にゼチーア単独療法を行ったところ18人に筋障害症状が再発したそうです。治療開始から 2 週間以内に発生し、これらの患者の多くは、フィブラート系薬剤やナイアシンにも耐えられませんでした。(ここ参照)

でも、エネルギー源としての脂質はコレステロールではなく、脂肪酸です。主にコレステロールを低下させる脂質低下療法が脂肪酸の代謝にも影響するのでしょうね。

まだまだ勉強不足でわかりません。どなたか知っていたら教えて下さい。

まあ、いずれにしても糖質制限をしているのであれば、LDLコレステロールを下げる必要はないでしょう。

ゼチーアはうるさいスタチン医者対策として一時的に使用する程度の方が良いでしょう。どうせゼチーアの実力は大したことはありません。(「スタチンではないコレステロールを低下させる薬ゼチーアの効果はこんなもの?」参照)

「The effects of ezetimibe on non-alcoholic fatty liver disease and glucose metabolism: a randomised controlled trial」

「非アルコール性脂肪肝疾患およびグルコース代謝に対するエゼチミブの効果:ランダム化比較試験」(原文はここ

3 thoughts on “ゼチーアの筋毒性

  1. そもそもコレステロールが
    「万病の源」という
    共通認識が、こういう
    自体を招いているのですね。

  2. 清水先生、こんばんは。

    ゼチーアでLDL-cholを低下させることは、糖質制限下においては本質的な意味はないですね。

    ゼチーアが各種脂肪酸の吸収に影響するのかどうか?例えば、脂溶性ビタミンの吸収には影響しないとされていたと思います。オメガ3、6系脂肪酸に対してはどうなのでしょうか?ゼチーアとロトリガやエパデールを併用している方もいると思うのですが。ゼチーアを飲んでいる時、血清の各種脂肪酸がどう変動するのか気になりました。

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