新しい更年期障害の薬でがんになるかもしれない

今年(2023年)の5月にアステラス製薬が開発していた更年期障害の薬、フェゾリネタントがアメリカで承認されました。顔のほてり、のぼせ感、寝汗などの更年期障害症状を低下させるそうです。いかにも売れそうな薬ですね。

では実際の臨床試験の結果を見てみましょう。第3相試験です。対象は40~65歳で閉経と確認され、中等度~重度のVMS(ほてりなどを特徴とする血管運動神経症状)が1日平均7件以上の女性500人で、プラセボとフェゾリネタント30mg群、45mg群に分けられました。(図は原文より)

上の図はVMSの1日の頻度と重症度の変化を示しています。プラセボは12週までです。それ以降はプラセボ群にもフェゾリネタントが投与されました。まず、興味深いのはプラセボ効果です。VMSの頻度の平均変化率は12週で、プラセボでは45.35%減少でした。フェゾリネタント30mgで58.64%減少、フェゾリネタント45mgで64.27%減少だったので、薬の効果は10数%~20%程度ですね。

グラフを見ると12週以降でさらに低下しているように見えるので、もう少し薬の効果はあるかもしれません。

上の図の下側の図の重症度に関しても、12週でプラセボではおよそ20%減少、フェゾリネタント30mgで26%減少、フェゾリネタント45mgで32%減少ですので、薬の効果はそこまでではなさそうですね。重症度も12週以降低下しているのでもうちょっと効果はあるかもしれません。

睡眠障害のスコアのPROMIS SD SF 8bは8~40点の範囲で数値が大きいほど重症です。その睡眠障害のスコアは30mg群ではプラセボと有意差なく、45mg群では有意差が出ましたが、大きな差には見えません。(詳細省略)

上の図は週ごとの24時間あたりの中等度および重度のVMSの頻度が50%以上および75%以上減少した割合です。12週目までにVMS頻度の少なくとも50%減少を達成した参加者の割合は、フェゾリネタント30mg群で50.6%、45mg群で60.5%であったのに対し、プラセボ群では42.5%でした。プラセボ効果かなりありますね。

まあ、それなりには効果はありそうです。

しかし、アジア人では有効性が示されていません。中国や韓国、台湾での300人規模の治験は、事前に設定した有効性の評価項目を達成できなかったのです。(この記事参照)何が違うかはわかりませんが、私はインスリン抵抗性の程度の違いが大きいと思っています。

そして、この記事では「アステラスは日本人を対象とした第3相臨床試験を実施していない。この状況で、巨額の資金を投じ、日本での治験を進めるのに躊躇しているのだろう。我が国初の世界的な偉業が埋もれる可能性がある。」と書かれています。日本では治験を行っていないようです。でも、アジア人で効果がはっきりしないので、「我が国初の世界的な偉業が埋もれる」っていうのもおかしな話です。

しかし、一番重要なのは安全性です。

次の論文を見たら、みんな躊躇するでしょう。下の表は新生物症例の件数と新生物発症の可能性です。新生物(腫瘍)は良性と悪性があり、悪性はいわゆるがんです。(表は原文より改変)

プラセボフェゾリネタント 30 mgフェゾリネタント 45 mgフェゾリネタントすべて
スカイライト 1 ( NCT04003155 )
12週間0/1750/1743/173 (1·73%)3/347 (0·86%)
52週間1/76 (1·32%)1/76 (1·32%)2/152 (1·32%)
スカイライト 2 ( NCT04003142 )
12週間0/1670/1662/167 (1·20%)2/333 (0·60%)
52週間1/76 (1·32%)1/75 (1·33%)2/151 (1·32%)
スカイライト 4 ( NCT04003389 )
52週間2/610 (0·33%)5/611 (0·82%)9/609 (1·48%)14/1220 (1·15%)
12週間までのメタ分析
症例数 (%)2/952 (0・21%)5/951 (0·53%)14/949 (1·48%)19/1900 (1·00%)
OR (95% CI)2·36 (0·53–10·43)4·55 (1·70–12·15)2·94 (1·18–7·32)
52週間までのメタ分析
症例数 (%)2/952 (0・21%)7/1103 (0·64%)16/1100 (1·46%)23/2203 (1·04%)
OR (95% CI)2·83 (0·76–10·54)4·25 (1·67–10·80)2·94 (1·25–6·93)

上の表は新生物発症の可能性を示しています。新生物症例は12週間でプラセボでは2人でした。フェゾリネタント30mg群で5人、45mg群で14人でした。52週までではフェゾリネタント30mg群7人、45mg群23人でした。新生物発症の可能性は45mg群で有意で12週で4.55倍、52週で4.25倍。フェゾリネタント全体でも2.94倍でした。

試験全体で検索された25例のうち3例 (12.00%) は良性と考えられました。フェゾリネタント群の24人で報告された26件の新生物のうち13件 (50.00%) は、皮膚または粘膜からの新生物に関するものでした。フェゾリネタントで1%もの人が良性か悪性かはわかりませんが、腫瘍ができてしまうのです。

良性はたった12%で、他は悪性とは書かれていませんが、悪性でしょう。およそ3倍ものがんまたは良性腫瘍が増加する可能性を持った薬が簡単に承認される時代です。世の中狂っています。

またもや薬害の匂いがします。

日本では治験も販売も必要ありません。

「Efficacy and Safety of Fezolinetant in Moderate to Severe Vasomotor Symptoms Associated With Menopause: A Phase 3 RCT」

「閉経に伴う中等度から重度の血管運動症状におけるフェゾリネタントの有効性と安全性:第3相RCT」(原文はここ

「Risk of neoplasm with the neurokinin 3 receptor antagonist fezolinetant」

「ニューロキニン 3 受容体拮抗薬フェゾリネタントによる新生物のリスク」(原文はここ

2 thoughts on “新しい更年期障害の薬でがんになるかもしれない

  1. 素人考えですが、更年期障害には漢方薬が良いと思います。
    以前自律神経失調で苦しんだとき、私は漢方薬で治りました。
    たまたまそのタイミングで治っただけかもしれませんけど。

    1. Caesiusさん、コメントありがとうございます。

      私も同じ意見です。もちろん、漢方薬で全ての更年期障害が改善するわけではありませんが、
      こんな訳の分からない薬を使うよりも断然安全でしょう。

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