糖質制限をするとLDLコレステロールが上昇することが珍しくはありません。LDLコレステロールが高くても私は問題ないと思っていますが、スタチン医者は大騒ぎでしょう。彼らはLDLコレステロールが下がれば何も言わなくなると思います。
今回の研究では、糖質制限によるLDLコレステロール上昇に対して、スタチン内服とクッキーのオレオ12枚摂取を比較しています。非常に興味深いです。ただし、n=1です。
対象は、この研究の開始の1520日前に潰瘍性大腸炎の治療のためにケトン食を採用した27歳の男性です。研究開始時のBMIは20.8、ケトン食を開始する前のLDLコレステロールは95mg/dLでしたが、ケトン食を行っている間のピークのLDLコレステロール545mg/dLまで増加しました。ベースラインの食事の3大栄養素は、脂質、タンパク質、炭水化物からの80%、18%、2%でした。 下の図のようにケトン食にオレオ12枚を加えた食事を16日間行い、3カ月ウォッシュアウトして、ケトン食+スタチン(ロスバスタチン20mg)を6週間行いました。オレオ期では、LDLコレステロール上昇の主な原因が循環ケトン体にある可能性を排除するため、外因性ケトン体を約20g/日を4回に分けて投与し、内因性ケトーシス(1.2~2.2mM)によるベースライン食と同様のレベルを維持しました。(図は原文より、表は原文より改変)
ベースライン | オレオ (12枚入り) | スタチン | |
---|---|---|---|
カロリー | 2616 | 3350 | 2616 |
総脂肪(g) | 235 | 263 | 235 |
飽和脂肪酸g) | 55 | 63 | 55 |
一価不飽和脂肪酸(g) | 154 | 170 | 154 |
多価不飽和脂肪酸(g) | 25 | 29 | 25 |
タンパク質(g) | 118 | 122 | 118 |
炭水化物 (g) | 20 | 120 | 20 |
食物繊維(g) | 9 | 11 | 9 |
オレオだけで炭水化物100gもあります。
上の図はLDLコレステロールの推移です。オレオ期ではLDLコレステロールが384から16日間で、なんと111mg/dL(71%)まで減少しました。一方スタチン期では421から284mg/dL(32%)までしか低下しませんでした。なんとオレオはスタチンの2倍のLDLコレステロール低下効果があったのです。
ベースライン | オレオ(12枚入り) | ロスバスタチン、20 mg | |||||||||
0日目 | 7日目 | 16日目 | 0週目 | 1週目 | 2週目 | 3週目 | 第4週 | 第5週 | 第6週 | ||
総コレステロール | 494 | 421 | 232 | 539 | 478 | 458 | 406 | 393 | 407 | 468 | |
LDLコレステロール | 384 | 308 | 111 | 421 | 354 | 340 | 294 | 284 * | 295 | 346 | |
HDLコレステロール | 99 | 102 | 113 | 107 | 116 | 107 | 102 | 102 | 102 | 112 | |
中性脂肪 | 57 | 56 | 39 | 54 | 38 | 54 | 50 | 34 | 49 | 48 | |
LDL-C 減少、相対 (絶対): -71% (-273 mg/dL) | LDL-C 減少 *、相対 (絶対): -32.5% (-137 mg/dL) |
上の表は脂質の状態です。オレオはLDLだけでなく、総コレステロールも当然増加させました。オレオ期で体重は1.5kg増加しました。興味深いことに、HDLコレステロールも増加傾向、中性脂肪は低下傾向でした。
一方、スタチンは4週目にLDLコレステロールが最も低下し、その後第6週では346mg/dLまで戻ってしまいました。スタチン期の6週目は毎日の歩数を約 10,000 歩/日から約 20,000 歩/日まで増加しました。そのことがLDLコレステロールを上昇させたのかもしれません。健康的であるはずの運動がLDLコレステロールを50mg/dLも増加させたのです。運動は健康的だと私も考えますので、LDLコレステロール増加が悪いという考えが間違っていると考えた方が良いでしょう。
スタチン期に唯一の顕著な副作用は、3週目からクレアチンキナーゼが300U/L台半ばまで軽度に上昇する筋肉痛がありましたが、これを我慢しました。
ほとんどの医師は患者に食事について質問しません。だから患者が医師に言わずに糖質制限をしていて、オレオを食べてLDLコレステロールを下げれば、何のコメントもしないでしょう。もし、糖質制限をしていることを知れば、これほどのLDLコレステロール上昇があれば止めるように勧めるでしょう、またはスタチンを処方するでしょう。しかし、スタチンよりオレオの方がはるかに効果的です。ジャンクフードのクッキーの方がスタチンよりも効果が2倍もあるのです。
オレオを摂取すると、食後のインスリン分泌が増加する可能性があります。インスリンはLDL受容体を活性化するので、それがLDLコレステロール低下効果の一つでしょう。
いずれにしても、短絡的なスタチン医者が思っているほど代謝は単純ではないと思われます。糖質過剰摂取でLDLコレステロール増加と糖質制限でのLDLコレステロール増加は大きく異なります。しかし、数値しか見ていない、特にLDLコレステロール値しか見ていない医師にはわからないでしょう。
糖質制限でLDLコレステロール増加する人でスタチン医者とのやり取りが面倒で、LDLコレステロール値を正常に戻したいのであれば、糖質摂取量を120~130gを2週間ほど摂取すれば良いと思いますが、下げる必要は全くありません。
「Oreo Cookie Treatment Lowers LDL Cholesterol More Than High-Intensity Statin therapy in a Lean Mass Hyper-Responder on a Ketogenic Diet: A Curious Crossover Experiment」
「オレオクッキー治療は、ケトン食中のリーンマスハイパーレスポンダーにおいて高強度スタチン療法よりもLDLコレステロールを低下させる:興味深いクロスオーバー実験」(原文はここ)