乳がん患者の術前抗がん剤治療のときはあまり食べない方が良い

抗がん剤治療のときに、食欲が低下したり、体重減少が起きたりしますが、医師や看護師は食べられるものなら、できる限り何でも食べて、というようなアドバイスをします。根拠なしです。

今回の研究では、HER2 陰性の乳がん患者44人(平均年齢約50歳、BMI約21)を対象として、断食模倣食 (FMD) または通常食のいずれかを摂取する2つのグループに分けました。

術前の抗がん剤治療は3週間ごとに8サイクル繰り返されましたが、その治療前3日間と治療当日にFMD群はエネルギー制限食を摂取します。エネルギー内容は1日目(約1,100 kcal)から2~4日目(約500 kcal)に減らされました。さらに、総エネルギーに占める炭水化物/タンパク質/脂肪の割合は、初日は約53、13、34%で、その後の3日間はそれぞれ53、9、38%でした。糖質(炭水化物)量で見ると、1日目が約146g、2~4日目が約66gです。

https://www.frontiersin.org/journals/nutrition/articles/10.3389/fnut.2024.1483707/full

目的:前臨床的証拠によると、断食は化学療法の副作用と毒性を軽減できる一方で、癌細胞が化学療法に対してより感受性になる可能性があることが示唆されています。この研究は、乳癌 (BC) 患者の術前化学療法中の断食模倣食事 (FMD) の効果を調べることを目的としました。

方法:新たに診断されたヒト上皮成長因子受容体 2 陰性 (HER2 陰性) 乳がん患者 44 名を 2 つのグループ (各 22 名) に均等に分け、術前化学療法の前と最中の 3 日間、断食模倣食 (FMD) または通常食(コントロール群)のいずれかを摂取させました。この FMD は 3 週間ごとに 8 サイクル繰り返されました。(図は原文より)

上の図は副作用(毒性)についてです。上から下痢、嘔吐、吐き気、便秘、好中球減少症、血小板増多症、口内炎です。症状のグレードはⅠが軽度、Ⅲが重度です。

コントロール群におけるグレード III の嘔吐と好中球減少症の発生は、FMD群よりも有意に高くなりました。下痢、吐き気、便秘、血小板増多症、または口内炎の発生については、2つの患者グループ間で有意差は認められませんでした。

上の図は血液の検査所見です。両グループともベースラインと比較して8サイクル後に赤血球、ヘモグロビン、白血球、好中球が減少し、血小板が増加しました。赤血球数と好中球数は、8サイクル後、コントロール群と比較して FMD群で有意に高くなりました。

上の図のように、ベースラインと8サイクル後の間で、コントロール群の血糖値とインスリン値の中央値は有意に増加しましたが、FMD群では血糖値とインスリン値に有意差はありません。一方、FMD群ではベースラインと8サイクル後の間で、IGF-1とhs-CRPの中央値が有意に減少しました。研究終了時には、コントロール群の血糖値の中央値はFMD群と比較して有意に高くなりましたが、hs-CRP値の中央値はFMD群でコントロール群と比較して有意に低くなりました。

上の図は抗がん剤の有効性です。これが恐らく最も重要なことでしょう。放射線学的および病理学的反応に基づく化学療法の有効性を示しています。この表によると、ミラーとペインの病理学的反応 4/5(腫瘍細胞の90~100%消失)はFMD群で72.7%とコントロール群の41%を大きく上回りました。また手術前に MRI または超音波で測定した完全奏効(CR)または部分奏効(PR)は、コントロール群35.3%と比較して、FMD群で68.1%と抗がん剤の有効性が大きくなりました。

もちろん、全員に有効ではありませんが、少なくとも抗がん剤治療時にはできる限りエネルギー摂取量または糖質摂取量を少なくすることが重要でしょう。

今回の研究のように、断食のような食事をするだけで、インスリン増加防止やIGF-1低下効果が得られる可能性があります。そうするとmTORを抑制し、がんの増殖を抑えることができます。また、消化器系の副作用も減少したり、白血球の減少も最小限になるかもしれません。

恐らく、エネルギー摂取量を非常に制限しなくても、糖質制限をしっかりすると同様に有益な効果が得られると考えられます。

いずれにしても、何らかの疾患になった場合、食べられるものなら何でも食べて、という医療者のアドバイスは有益にならないどころか、有害にすらなる可能性があります。

「Fasting mimicking diet during neo-adjuvant chemotherapy in breast cancer patients: a randomized controlled trial study」

「乳がん患者の術前化学療法中の断食を模倣した食事:ランダム化比較試験研究」(原文はここ

2 thoughts on “乳がん患者の術前抗がん剤治療のときはあまり食べない方が良い

  1. 糖尿病インスリン治療の高齢者が、
    低血糖になるとブドウ糖など
    服用させられ、血糖値上がったところでインスリン注射。

    この数値合わせ治療?
    ってなんとかならないのでしょうか?

    「標準治療」だからやむを得ない
    のでしょうか?

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      数値合わせは、治療している方も根本的に治さずに治療した気になるし、
      治療されている患者も何となく治療が上手くいっている気になって自分を納得させられるので、
      ある意味Win-Winなのかもしれません。
      しかし、患者側は全くWinではありません。
      治療ではなく、誤魔化しですね。

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