高尿酸血症の治療による腎保護効果については、以前の小規模で、多くの場合は非ランダム化単施設試験に限られた研究を根拠としてきました。
しかし、その後行われた、大規模の研究の結果は散々です。以前の記事「尿酸値を下げる薬のダークサイド その2 腎機能低下軽減効果なし」で書いたように、尿酸値を下げる薬である、フェブリク(フェブキソスタット)はプラセボと比較して、慢性腎臓病(CKD)の進行を遅らせるような、腎機能保護効果は認められませんでした。
また、アロプリノールによる血中の尿酸値の低下が慢性腎臓病の進行に及ぼす影響を検討した2件の大規模プラセボ対照試験(PERLおよびCKD-FIX)では、どちらもeGFRで示された、腎機能の低下について、プラセボと有意差が示せませんでした。つまり、尿酸値低下療法の腎機能保護効果に対する大規模な研究では3連敗です。
しかも、「尿酸値を下げる薬のダークサイド その1」で書いたように、PERLおよびCKD-FIX試験では、心血管イベントのリスク、クレアチニンが2倍になるか末期腎不全になるリスクもアロプリノール群の方が多い傾向でした。有意差はないとはいえ、尿酸値の低下は腎臓になんら良い影響は与えないというよりは、むしろ悪い方に影響しているようにも見えます。
日本人患者2,797人を対象とした研究も見てみましょう。(ここ参照、図もここより)腎転帰を末期腎疾患(ESRD)と定義した場合、下の図のように、尿酸値ははESRDの独立したリスク因子ではありませんでした。
ただ男性だけ、わずかに有意にESRDリスクが高くなりました。
下の図は、アロプリノールによる腎臓への有効性です。
図のようにアロプリノールは全く腎臓への有効性が確認できませんでした。惨敗ですね。
さらに、日本ではアロプリノールよりもフェブキソスタットの方が処方が多いのですが、この2つの薬の比較では、フェブキソスタットのeGFRの年間低下は、アロプリノールよりも速いという研究もあります。(ここ参照、図もここより)
上の図は、Aが推定糸球体濾過率 (eGFR) の30%低下と、Bが末期腎疾患 (ESRD) を起こさない確率です。アロプリノールよりもフェブキソスタットの方がeGFRやESRDを起こす確率が多いのがわかります。eGFRの30%低下は1.26倍、ESRDは1.91倍です。
4,277人のCKD患者を含む11の研究のメタアナリシスを見てみましょう。(ここ参照)尿酸低下療法(ULT)が慢性腎臓病(CKD)患者の腎機能障害の進行を抑えるのに有効かどうか?使用された薬は、アロプリノール、フェブキソスタット、またはトピロキソスタットです。
分析の結果、ULTを行った患者はULTを行っていない患者と比較してeGFRの維持に優れている「傾向」があったのですが、「有意差」は確認されませんでした。サブグループ解析では、アロプリノールの使用はeGFRの維持に優れていましたが、より新しい薬であるフェブキソスタットとトピロキソスタットはeGFRの変化に有意な影響を示せませんでした。末期腎疾患の発生率も治療中に発生した有害事象もグループ間で有意差はありませんでした。
別のメタアナリシスを見てみましょう。(ここ参照、図もここより)6458人の参加者、506件の主要な心血管イベントおよび 266件の腎不全イベントを含む28件の試験のメタアナリシスです。尿酸値低下療法が心血管疾患および CKD進行に及ぼす影響を分析しています。下の図はその結果のまとめです。
尿酸値低下療法を行っても、主要な心血管イベントのリスクは0.93倍、全原因死亡率リスクは1.04倍、腎不全リスクは 0.97倍と、治療の利点は示されませんでした。しかしながら、尿酸値低下療法により、GFRの傾きの低下がちょっと緩和され、平均血圧も低下しました。たったそれだけです。
薬の研究のほとんどで、製薬会社がスポンサーについていることを考えると、尿酸値を下げる薬の腎機能に対する効果はほとんどゼロと考える方が良いでしょう。
それでも医師は、尿酸値を下げると腎機能保護効果があると信じて止まないのか、それとも知っていて利益のために薬を処方しているのか?
それでも薬にわずかな望みを託すのか、自分で改善するのか?自分自身でよく考えましょう。
昨年度の健診で高値だった尿酸値7.5
を放置していたら、今年度は
正常値6.6に。
その他の採血検査や血圧、視力等も
問題無し(総コレステロール:224/
HDL:103/LDL:118/中性脂肪:54/
空腹時血糖値:91)
でした。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
なかなか素晴らしい検査結果ですね。