スラッシュアイスドリンクというのは、日本でどれくらい販売されているのかはよくわかりません。シャーベット状のアイスドリンクで、その中にはグリセロールが入っていて、それにより、シャーベット状態を維持しているようです。似たようなものが販売されていないのか、ネットで調べてみると、以下の2つがヒットしました。
トップバリュの「フローズンドリンクゼリー」シリーズ(3つの味があるようです)
森永の「inゼリー エネルギーフローズン」
今回の研究は、イギリスとアイルランドの症例21人の幼児を対象としたものです。彼らはスラッシュアイスドリンクを飲んだ直後に急激に体調不良を起こしました。子供向けに販売されている鮮やかな色のスラッシュアイスドリンクには、甘味料や凍結防止剤としてグリセロールが使用されていることが多いそうです。
ほぼすべて(93%)の子供はドリンクの摂取後60分以内に体調不良になりました。年齢の中央値は3歳6か月(2歳~6歳9か月)でした。
では、どのようなことが起きたのでしょうか?
受診時の意識レベルに関する情報は17人の患者について入手でき、そのうち16人(94%)は急性の意識低下を示し、1人の患者は全身性強直間代性発作を起こしました。12人の患者のうち4人(33%)で緊急の神経画像検査が実施されましたが、どの患者にも意識低下の他の原因は見つかりませんでした。
20人(95%)は診察時に低血糖(血糖値は約47mg/dL以下)が記録されており、そのうち13人(65%)の血糖値は27mg/dL未満と重度の低血糖を示していました。恐ろしい!血糖値の中央値はおよそ22mg/dL(範囲0~59mg/dL) でした。
代謝性アシドーシスは、この情報が入手可能な17人の患者のうち16人(94%)に認められました。診察時のpHの中央値(pHが記録された13人の患者)は 7.21(範囲 7.16~7.26)でした。19人の患者の初期の乳酸値が記録されており、18人の患者(95%)で 3.0mmol/L を超える上昇が見られました。乳酸値の中央値は4.3mmol/L(範囲 2.5~7.5 mmol/L)でした。
血中のカリウム濃度は16人の患者で測定され、そのうち12人(75% )は診察時に低カリウム血症でした。カリウム濃度の中央値は 2.7 mmol/L(範囲 2.2~3.9 mmol/L)でした。
診察時に血中の中性脂肪値を測定した9人の患者のうち8人(89%)が一過性の偽性高中性脂肪血症でした。中性脂肪の中央値は1,727mg/dL(範囲961~2,267mg/dL)でした。凄い値ですね!
8人の患者で遊離脂肪酸(FFA)と 3-ヒドロキシ酪酸(3-OHB)を測定した結果、そのうち6人(75%)で FFA:3-OHB 比が2以上に上昇していました。FFAレベルの中央値は2668µmol/L (範囲 1239~3361 µmol/L)、3-OHBレベルの中央値は564µmol/L (範囲 291~1051 µmolL) でした。
17人の患者では、診察時に尿を採取し、すべてのサンプルが異常で、グリセロールのピークが大きく、グリセロール尿症を示しました。その他の一貫した変化には、乳酸値の上昇(15人、88%)とケトン尿症(10人、59%)がありました。
低血糖の管理と監視のために入院した後、患者はスラッシュアイスドリンクを避けるようアドバイスされて退院しましたが、しかし、1人の患者が別のスラッシュアイスドリンクを飲んだところ(7歳3か月のとき)、1時間以内に症状が現れ、嘔吐と眠気へと急速に進行しました。症状とスラッシュアイスドリンクとの関連性を認識した両親は、初回受診後にクリニックで提供された緊急用の糖質を含んだドリンクを飲ませ、救急車を呼びました。救急隊員が到着したとき、血糖値は正常で症状は改善していたため、子供はさらなる評価や検査のために転送されませんでした。
イギリスとアイルランドで入手できるものの大半は、「砂糖不使用」または「無糖」として販売されています。中には、果汁やコーンシロップの形で果糖を含むものもあります。無糖または無添加の品種には、スラッシュ効果を維持するためにグリセロール(グリセリン)が含まれており、ステビアやスクラロースなどの甘味料も含まれています。
どれほどのグリセロールを含んでいるのかはよくわかりません。食品添加物として認可されていて、安全と考えられてきました。
どれほどの量、どれほどのスピードで摂取したら危険なのかはわかりません。
イギリスとアイルランド両国の食品安全機関はすでに、4歳以下の子供にはグリセロールを含むスラッシュを与えないよう勧告していますが、それ以上の年齢でも起きていて、この論文の著者は、8歳未満の幼児はグリセロールを含むスラッシュアイスドリンクを避けるべきである、と言っています。
上で示した日本の製品が危険なほどの量のグリセロールが含まれているかどうかはわかりません。また、アイスクリームには乳化剤としてグリセロールが使用されている場合もあるでしょうが、その量が危険かどうかもわかりません。
一応、日本でも小さな子供にグリセロールを含むものを与える場合は注意が必要でしょう。また、海外の国へ旅行に行った場合、口にする飲食物に何が含まれているかはわかりません。小さな子供に与えるものには十分な注意が必要でしょう。
「Glycerol intoxication syndrome in young children, following the consumption of slush ice drinks」
「スラッシュアイスドリンクの摂取後の幼児のグリセロール中毒症候群」(原文はここ)
成分表示を見る習慣も大事ね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
成分表示を見ずに食品を買うのは恐ろしいです。
糖質制限用の食品や飲料が多いですが、糖質をゼロにするため様々な添加物のようなものが使われているように思います。例えば、ビールでも多少の糖質はあるものの普通のビールの方がいいということもあるのかもしれないですね。グリセリンもそうかもしれませんが、安全と考えられていたものでも、どうかわからないかもしれないですね。