現代では、マイクロプラスチックから逃れることはかなり難しいでしょう。ありとあらゆるものから人間の体に入ってきてしまいます。
今回の研究では、脳の動脈、心臓の冠動脈、下肢の深部静脈という解剖学的に異なる3つの部位で動脈系と静脈系の両方から外科的に採取した人間の血栓中のマイクロプラスチックを分析しました。サンプルは、虚血性脳卒中、心筋梗塞、または深部静脈血栓症のため、動脈または静脈の血栓除去術を受けた患者30人からのもので、虚血性脳卒中が16人、心筋梗塞が5人、深部静脈血栓症が9人でした。年齢の中央値は65.2歳で、16 例 (53.3%) が男性でした。
血栓中のマイクロプラスチックの検出率はそれぞれ虚血性脳卒中81.3%(13/16)、心筋梗塞40%(2/5)、深部静脈血栓症100%(9/9)で、全体の検出率は80%(24/30)でした。
10種類のマイクロプラスチックポリマーのうち、ポリアミド66(PA66)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)の3種類が検出され、サンプル中のポリマーは不均一に分布していました。虚血性脳卒中および心筋梗塞サンプルではPA66、PVC、PEが検出されたのに対し、深部静脈血栓症サンプルではPA66のみが検出されました。具体的には下の表のように、PA66 は虚血性脳卒中血栓の 81.3%、心筋梗塞血栓の 40%、深部静脈血栓症血栓の 100% で検出されました。PVC は虚血性脳卒中血栓の 37.5%、心筋梗塞血栓の 20% で検出された。PE は虚血性脳卒中血栓の 25%、心筋梗塞血栓の 20% で検出されました。PVC と PE は深部静脈血栓症血栓では検出されませんでした。(図は原文より、表は原文より改変)
検出率(%) | |||
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虚血性脳卒中 | 心筋梗塞 | 深部静脈血栓症 | |
いずれかのマイクロプラスチック | 81.3% (13/16) | 40% (2/5) | 100% (9/9) |
PA66 | 81.3% (13/16) | 40% (2/5) | 100% (9/9) |
PVC | 37.5% (6/16) | 20% (1/5) | 0% (0/9) |
PE | 25% (4/16) | 20% (1/5) | 0% (0/9) |
マイクロプラスチックを含む血栓は、虚血性脳卒中群では、10個の血栓(76.1%)が前方循環系(内頸動脈系)に位置していました。3個(23.1%)は後方循環に位置していました。後循環は椎骨動脈から脳幹、小脳、および大脳半球後部に血液を供給しています。前方循環内では、3個の血栓が内頸動脈に限定されていましたが、7個の血栓は内頸動脈の遠位枝である中大脳動脈に関与していました。
心筋梗塞群では、1個の血栓が左冠動脈に、もう1個が右冠動脈に位置していました。
深部静脈血栓症群では、2 個の血栓 (22.2%) が膝窩大腿静脈に位置し、7 個 (77.8%) が腸骨大腿静脈に位置していました。
上の図は、異なる血管部位から採取した血栓中のマイクロプラスチックの濃度です。細かい説明は省略しますが、図のfに示すように、脳卒中のスケール(NIHSS)は、脳卒中の重症度を示しますが、 マイクロプラスチック濃度が高い虚血性脳卒中患者では、NIHSSスコアがマイクロプラスチック濃度の低い患者よりも有意に高くなりました。また、脳動脈でも、深部静脈でも、血栓がより遠位に位置するにつれて濃度は増加しました。
上の図は、虚血性脳卒中の血栓中のマイクロプラスチックの実際の画像です。
マイクロプラスチックは、ペットボトルはもちろんのこと、塩、ビール、日常の飲料水、牛乳、水産物、農作物など、様々な食品から検出されていることや、歯ブラシなどの日用品からも放出される可能性があります。以前の記事「マスクを今すぐ外そう! その2」で書いたように、マスクからもマイクロプラスチックを吸入している可能性もあります。点滴さえも曝露源です。(「点滴をするとマイクロプラスチックが直接血管内に注入される」参照)
つまり、マイクロプラスチック曝露源は多岐にわたり、完全に避けることは不可能でしょう。
でもできる限り避ける努力は必要だと思います。
「Multimodal detection and analysis of microplastics in human thrombi from multiple anatomically distinct sites」
「複数の解剖学的に異なる部位からのヒト血栓中のマイクロプラスチックのマルチモーダル検出および分析」(原文はここ)
「現代では、マイクロプラスチックから逃れることはかなり難しいでしょう。ありとあらゆるものから人間の体に入ってきてしまいます。」
加工し易く、軽くて丈夫なプラスチック、
何でもそうですが、
良い事ばかりではないですね、
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
便利、お手軽、などの裏には何かが隠されています。