LDLコレステロールが低いと心血管疾患および全原因死亡リスクが上がる

医師を含めて、ほとんどの人は、LDLコレステロールは「悪玉」と思い込まされています。だから、一般の人はLDLコレステロールが上がると不健康であると思い、医師は高コレステロールの患者を診ると、このままだと死ぬよ、と脅します。でも、多くの研究は違った結果を出しています。

今回の研究では、アメリカの国民健康栄養調査(NHANES)データベースを使用して、ApoB(LDLの構成成分)およびLDLコレステロールと死亡率との関連を分析しています。

15,380人が対象で、年齢の中央値は46.0歳です。追跡期間の中央値は8.4年(101.0か月)で、その間に1771人(8.8%)の死亡が記録されました。

ベースラインのLDLコレステロール値(<70、70~99、100~129、≥130 mg/dL)およびApoB値の中央値(<90および≥90 mg/dL)に基づいて8つのグループに分類されました。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図の上がApoB、下がLDLコレステロールの全原因死亡リスク(A)および心血管疾患死亡リスク(B)です。一目瞭然、ApoBもLDLコレステロールも低値の方が死亡リスクは高くなっています。

70mg/dL未満の低LDLコレステロールは、全原因死亡リスクが1.66倍、心血管疾患死亡リスクが1.65倍、脳血管疾患死亡リスクが2.13倍でした。

ApoBが90mg/dL以上だと、全原因死亡リスクは0.79倍でした。下の表は、ApoB中央値ごとに分類したLDLコレステロールと死亡率との関連性です。

 
LDL-Cモデル2
全原因死亡(mg/dL)HR
 ApoB < 90 (mg/dL)100~1291
70未満2.07
70~991.37
≥1301.32
 ApoB ≥ 90 (mg/dL)100~1291
70未満0.27
70~990.87
≥1300.95
心血管疾患による死亡率
 ApoB < 90 (mg/dL)100~1291
70未満2.42
70~991.59
≥1300.34
 ApoB ≥ 90 (mg/dL)100~1291
70未満0.11
70~991.04
≥1300.94

LDLコレステロール100~129mg/dLを1としたとき、ApoBが90mg/dL未満の人では、全原因死亡リスクはLDLコレステロール70mg/dL未満のグループでは2.07倍、70~99mg/dLのグループでは1.59倍でした。心血管疾患死亡率もLDLコレステロール70mg/dL未満のグループでは2.42倍でした。

ApoBが90mg/dL以上の人では、有意な死亡率の増加はありませんでした。

LDLコレステロール値が低いと、感染症やがんの死亡率が高まります。さらにご存じのように、LDLコレステロール値が高いと脳内出血のリスクが低下しますし、ApoBの上昇も脳内出血のリスクが低下します。(ここ参照)(「LDLコレステロールが高いとがんのリスクは低下する」「コレステロールとがん発生率」「低コレステロールは出血性脳卒中、心不全、がんによる死亡率を上げる」など参照)

相変わらずLDLコレステロールが高いと、スタチンを飲め、飲まないと死ぬぞ、と脅されている人も多いでしょう。LDLコレステロールが低いと死亡率が上がるなんて認めたら、プライドが許さないのでしょうか?これまでウソをついていたことがばれるのが怖いのでしょうか?でも、実際には、ほとんどの医師は本気でLDLコレステロールは悪玉だと思っています。だから困るのです。しっかりと洗脳されてしまっているので、考えは変わりません。

ただし、LDLコレステロールを気にしなくていいのは、食事をちゃんとしている前提です。糖質過剰摂取ではインスリン抵抗性が上がり、LDLコレステロールが上昇するでしょう。糖化、酸化したLDL、小さな危険なsdLDLはやはり問題です。

「Low apolipoprotein B and LDL-cholesterol are associated with the risk of cardiovascular and all-cause mortality: a prospective cohort」

「アポリポタンパク質BとLDLコレステロールの低値は、心血管疾患および全死亡リスクと関連している:前向きコホート研究」(原文はここ

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