PPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面 その3 胃酸が逆流する本当の原因(仮説)

これまでにPPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面 その1 薬を止められなくする仕組み」「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面 その2 PPIは多くの病気を引き起こす可能性がある」を書いてきました。

糖質制限をすると、逆流性食道炎や胃酸逆流の症状が劇的に改善することがほとんどですが、それはなぜでしょう。胃酸の逆流があることは間違いではなく、PPIによって胃酸をほとんどゼロにすれば、症状が改善する可能性はもちろんあります。しかし、長期に使うと非常にデメリットが大きい薬です。

通常は下部食道括約筋が閉まって、胃酸の食道への逆流を防いでいますが、この括約筋が開いてしまうと逆流するわけです。(図はこのページよりお借りして、改変)

 

では、なぜ下部食道括約筋が開いてしまうのでしょうか?もちろん、年齢的な筋肉の衰えは否定できませんが、それだけでは説明ができません。前回の記事で胃酸が低下した時に何が起きるかを思い出してみてください。胃酸が低下すると酸による防御機能が弱くなり、小腸の細菌の増殖が非常に増加してしまいます。これはSIBO(小腸内細菌異常増殖)と呼ばれるものです。

このSIBOが糖質制限と逆流性食道炎の改善のカギだと考えています。

以前は、炭水化物は消化が悪く、それを頑張って消化するために胃酸の分泌が多いと考えていました。(「炭水化物(糖質)は非常に消化に悪い!」参照)しかし、現在は消化が悪いことは確かだと思いますが、一部の糖質は吸収も悪く、さらに高血糖が胃酸の分泌を減少させていることが関係していると考えています。

正常な状態と異なり、小腸の中で異常に増殖した細菌は糖質を喜んで引き受けます。そして、細菌たちは糖質を発酵させて、ガスを発生させます。そうすると腸の中の圧力が増加し、それが胃の方に伝わり、下部食道括約筋を押し広げて食道内へ胃酸を逆流させるのです。糖質がわずかであれば発生したガスを受け入れるだけの余裕はあるのですが、大量に糖質を摂ると、非常に大量のガスとなり、我慢できずに括約筋が広がってしまうのです。

だから、糖質制限をすれば胃酸逆流症状がリアルタイムで改善するのです。胃酸は非常に重要であり、必要なものです。それが逆流するメカニズムが問題なのです。逆流しないように気をつけて、ちゃんと胃酸は十分に分泌されるべきなのです。

そう考えると、PPIは胃酸の分泌をほとんど停止させてしまうので、このSIBOは悪化してしまいます。そうすると逆に胃酸の逆流を招く原因を増やしていることになります。PPIはその薬を飲むことの理由となった症状の原因を悪化させるという暗黒面が存在しているのです。もう何をやっているのかわからないですよね。SIBOが悪化すれば、増殖した細菌が逆流して、それが肺に達すると肺炎を引き起こします。最近の報告では、SIBOが冠動脈疾患と強く関連しているという研究があります。なんとSIBOのある人の冠動脈疾患のリスクは7倍以上です。そしてSIBOのない人よりも明らかに多枝病変が多いのです。

「Association Between Small Intestinal Bacterial Overgrowth by Glucose Breath Test and Coronary Artery Disease」

「冠動脈疾患とグルコース呼気検査による小腸内細菌異常増殖との関連」(原文はここ

 

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