ウェイトリフティングでさえ糖質制限!

スポーツの世界でもどんどん糖質制限が広まっています。持久系のアスリートをはじめ、水泳、バスケットボール、ボクシング、サッカーなど糖質制限を取り入れているというニュースをよく見るようになりました。持久系では強いと思われていた糖質制限ですが、パワー系でも糖質制限の効果が認められてきています。

体重により階級のある競技では、パフォーマンスを落とさずに減量することが求められます。カロリー制限では筋肉が減ったり、エネルギー不足を感じてしまうこともあるでしょう。

今回の研究ではパワーリフティングやオリンピックのウェイトリフティングのアスリートで、パフォーマンスの変化なしに、体重を落とすことができたという結果を示しています。

 

「A Low-Carbohydrate Ketogenic Diet Reduces Body Weight Without Compromising Performance in Powerlifting and Olympic Weightlifting Athletes」

「低炭水化物ケトジェニックダイエットは、パワーリフティングやオリンピックウェイトリフティングアスリートのパフォーマンスを損なうことなく体重を減らす」(原文はここ

 

体重の階級のあるアスリートは、特定の階級と最適なパワー対ウェイト比で競争するために体重管理をしなければなりません。低炭水化物ケトジェニックダイエットによりパフォーマンスに悪影響を及ぼさずに、パワーリフティングおよびオリンピックウェイトリフティングの選手の体重減少ができるかを調べました。

1日の炭水化物摂取量250g以上と、糖質制限で炭水化物量50g以下または10%以下の炭水化物の摂取を交互に3ヶ月間ランダムに投与しました。糖質制限ではベースラインと比較して有意に体重が-3.26kg減少し、除脂肪体重も-2.26kgになりましたがパフォーマンスには影響を与えず、通常の食事と変化は認めませんでした。

残寝ながらまだこの研究の原文全文は手に入っていないので詳細がわかりませんが、昨年にも同じような研究がニュージーランドから発表されています。対象は少数ですが、同様にパワーリフティングおよびオリンピックウェイトリフティングの選手です。この研究では面白いことに参加者にインタビューをしており、その生の感想が記載されています。(会話文で私の英語力ではさっぱりわからない文もありますが)精神的な変化についても良くわかります。さらに、8週間の介入の後4週間元に戻ってどうなるかも調査しています。

アスリートたちの炭水化物の摂取量は1g/kg/日で、8週間の糖質制限を行いました。アスリートのストレスを評価するためにDALDAというアンケートを使用しました。(図は原文より)

 

上の図はそれぞれのPFCバランスです。一番上がベースライン、次が糖質制限中、一番下が糖質制限後です。糖質制限中は炭水化物が減った分脂質が増加し、タンパク質はほとんど変化していません。

 

上の図は体重、皮下脂肪の変化です。参加者の1番の人以外では 2.1~3.6kg体重が減少しています。皮下脂肪も1番の人以外11~27.3mm減少です。脂肪の摂取量が増えたにもかかわらず、体重や皮下脂肪は減少しているのです。

パフォーマンスは5人中4人で、体重を減らしながら絶対的な強さを維持または増加させることによって相対的な強さを増加させることができました。

「疲れ」と「休息の必要性」は、DALDAアンケートで分析しました。参加者1および参加者5の「疲れ」は、糖質制限の第1週から第2週の間に増加し、続いてベースラインレベルに戻りました。参加者2、3、4は、16週間の研究の期間にわたって「疲れ」の傾向を示しませんでした。「休息の必要性」については参加者によりばらつきがありました。

次にインタビューの結果です。

それまでよりも多くの脂肪を摂取しなければならないだけでなく、トレーニングが制限されてしまうのではと感じていました。しかし、そのような恐怖は沈静化し、快適に適応して驚きを感じていました。否定的な考えはありませんでした。

最初の適応までの期間は疲労が伴います。いくつかの時点ですべての参加者は、衰弱または低エネルギーを経験しました。一部の参加者は、大量のトレーニングの週に、より長い回復時間が必要であると報告しました。疲労に加えて、食事の満腹感は、消費された脂肪の量が多いことに関連していました。参加者は、いつも食べているものでは問題になることはないのに、糖質制限では食事を終わらせるのが難しいと答えていました。ダイエットにもっと慣れたころの参加者では、満腹になるためにそこまで食べる必要がないことに驚いていました。さらに、糖質制限をしていると疲労した参加者は、エネルギーレベルがより速く安定することができることが分かりました。

気分の変化としては、特定の食品に制限されているいることが社会的障壁であると感じていました。食事が継続するにつれて、参加者が食べることができる種類の食べ物への不満と、食べ物が中心的な社会での外出中の不満が増加し始めました。例えば、1人の参加者は、糖質制限は社会生活の障害であり、利用可能な食べ物の種類に制限があると感じました。さらに、何人かの参加者は、怒りをより早く感じるようになりました。

最後に、それぞれの参加者は、このダイエットが最適に機能するように修正する方法を知っていました。ある参加者は、低エネルギー日数を避けるために、炭水化物摂取量を伴う循環パターンを作成することを提案した。自分のエネルギー需要に基づいて自分自身で食事を論理的に行う方法を行いました。糖質制限中に発生した疲労に対処するために、より大きなトレーニング期間中に炭水化物摂取量増やしました。さらに別の参加者は、より多くの体重減少を引き起こすために炭水化物をさらに減らすことを提案しました。また、他の参加者は、最適なパフォーマンスのために炭水化物と脂肪の両方を調整し、1年中体重を低く抑えると述べました。

次は具体的な参加者の声です。

糖質制限食に伴う恐怖
「私は少し苦手に感じて、少しだけ体重を減らすことを期待して食事に入ったと思う。」(参加者1)

「私の最初の考えは、私が全力を尽くすために十分なエネルギーを持っているかどうかということでした。なぜなら、私は過剰な炭水化物に慣れていたので。」(参加者3)

「私は食べ物が元々良いものになると思っていました。なぜなら、私はそれについて多くのことを聞いてきました。特にここ数年は、もっと明らかになってきました …」(参加者5)

「正直言ってそれはかなり太ると思いました。私は脂肪が悪いというかなり古い学校の考え方を持っているので…」(参加者4)

糖質制限の経験に対する驚き
「私の皮下脂肪が低下したのでうまくいったけど、この食事計画を間違いなくお勧めします」(参加者2)

「この食事を経た後、思ったよりも持続可能でした。かつての私の(糖質への)渇望は約5週間後に消えてしまいました。」(参加者3)

「私のトレーニングのエネルギーレベルは、私がこの食事に慣れていないときと同じで、長期間休む必要もなくなりました。」(参加者4)

「最初の4週間は、何かクールで違ったことをしていたと言えるでしょう」(参加者5)

「私は、低炭水化物の食事を行うことで、ほとんど何も影響を受けなかったことに驚いきました。トレーニングの面では、パフォーマンスに悪影響を及ぼすことなく、主要な栄養素を自分に取り入れる方法において、より柔軟性があることがわかりました。」(参加者5)

初期トレーニング疲労
「最初の1〜2週間で少し低迷していると感じましたが、その後はかなり良くなりました」(参加者1)

「最初の1週間でふらふらした感じを覚え、意識を失うのではと思いましたが、その後安定すると普通には起きませんでした。私は奇妙な頭痛を抱えていましたが、一旦解決してしまえば、無くなりました。」(参加者3)

「最初に始めたとき、私はエネルギーがずっと少なく、トレーニングでいつも疲れていると感じました。そして、毎回ほとんど意識を失うほどふらふらでした。」(参加者4)

「私は多くのセットを行えませんでした。 私は行わなければならなかったし、私ができることをしなければならなかったし、それを押し切った。そうでなければ私はもっと衰えてしまったでしょう」(参加者1)

初期の満腹感
「はい、私の空腹感は変化しました。まあ、最初はタンパク質とそのすべてのために空腹ではありませんでしたが、今は戻りました。」(参加者2)

「前半は、食事を終えられないことを覚えています。私たちはカレーにココナッツミルクを入れていました。私はそれを終わらせることができず、お腹いっぱいに感じていました。そして今、私はずっと多くの空腹感を感じています。すごく早く食べているのがわかりました」 (参加者4)

「最初の3〜4週間で私は非常に満腹感を感じていました。私が通常通りに食べようとしていたときに、自分のカロリーをどれくらい落としていたのかを知って、驚いていました」(参加者5 )

「…4週目ぐらいになって、今は私が以前よりももっと食べ物を集中しているので、ある時点で空腹になり、食べ物に気付き、食べようとしているものを考えようとしています」(参加者5)

気分の変化
「これは、私がこの食事法でもっと苛立つようになっていることに気がついたことです」(参加者5)

「…それは心理的制約のほうが大きかったので、社会的制約がそれを行う最良の方法でしょう」(参加者5)

「…私は多くのように、怒りが高まるほど敏感でした。私を悩まされたことのない小さなものは、私を端に押しつけたのと同じです。私はもっ​​と壊れやすいと思います」(参加者4)

(意味の分からない翻訳もあり申し訳ありません。私の限界です)

この研究でも最初の研究と結果は同じで、パフォーマンスを落とさずに体重が減少するというものです。

 

このように、糖質制限を行うと、最初は多くのアスリートがパフォーマンスの低下、エネルギーの低下を感じてしまいます。しかし、ケトン体質になると、パフォーマンスは蘇り、さらに向上すると考えています。少なくとも1か月前後は適応にかかるのではと思います。(私の拙著「運動するときスポーツドリンクを飲んではいけない」にも書きました。)

そして上の研究にあるように、エリートのアスリートは様々なアレンジを行うことで、糖質制限の良さと、さらにパフォーマンスアップの両方を手に入れることが可能だと思います。絶対に糖質量を減らすことに固執するのではなく、トレーニングに合わせて調節すると非常に良い結果になるのでは?と考えています。しかし、最初にしっかりとケトン体質を作り上げ、その後もベースはやはり糖質制限が望ましいのではないでしょうか?

社会的な障壁は日本で実際にやってみても、たいして大きなものではないと感じています。その国やその人の周りの環境に左右されるものでしょう。もちろん、食べることができる種類は減少します。逆に言えばそれだけ多くのものに余計な糖質が含まれているということです。

気分の変化で苛立ちや怒りが増えたことが書かれていますが、糖質過剰摂取の状態がずっと続いた人が、糖質依存から抜け出るまでには苛立ちがあることは否定できないと思います。しかし、それを抜けると最高の気分になるでしょう。

スポーツをしている方も糖質制限をしてみてはいかがでしょうか?

 

「The effect of an 8-week low carbohydrate high fat (LCHF) diet in sub-elite Olympic weightlifters and powerlifters on strength, body composition, mental state and adherence: a pilot case-study」

「8週間の低炭水化物高脂肪(LCHF)食事が、強度、体組成、精神状態、および遵守に関するサブエリートのオリンピックのウェイトリフターおよびパワーリフターに及ぼす影響:パイロットケーススタディ」(原文はここ

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