前回の記事「逆流性食道炎と大量の糖質摂取」にランファンさんからうれしいコメントをいただきました。
私はおそらくランニングや筋トレでGERDになった34歳男、ランニング歴18年です。
15歳ころから、逆流性食道炎に苦しみ日によってジョグすら出来ないことがありました。28歳時に逆流性食道炎の不安から胃カメラをするとパレット上皮Bと診断されパリエット、ネキシウムを処方され対症療法で競技を続けていました。逆流性食道炎の原因に糖質過多があることを、書籍やブログから得て試しに主食抜き[米、パン、麺類)実践すると、不思議と症状が全く無くなり、ランニングに集中出来るようなりました。パレット上皮も毎年の胃カメラで改善が認められ、4年後には正常に戻りました。
私と同じように苦しんでいる方がおりましたら、騙されたと思ってぜひ試していただきたいです。
ランファンさん、完治良かったですね!
バレット上皮Bというのは内視鏡的なグレード分類で、食道炎の程度の分類方法にロサンゼルス分類というものがあり、グレード N、M、A、B、C、Dの6段階に分かれています。グレードNは正常です。(このサイトに写真があります。)ランファンさんはBなので、軽症ですが少し進んだ状態です。バレット食道は放置しておけば、食道がんに進行する場合もあると考えられています。
それが糖質制限(主食抜きだけ?)で改善し、4年でバレット食道も完治しています。逆に考えると、完治するのに4年間もかかるというのを聞くと、糖質過剰摂取の恐ろしさを感じます。逆に言えば、糖質の悪さを知らずに、そのまま糖質過剰摂取し続けていけば、食道がんになってしまう可能性が高まってしまいます。
ランニングや筋トレそのものは逆流性食道炎と全く関係ないと思います。しかし、多くの人はランナーのカーボローディングをはじめ、筋トレする人も筋肉を増加させるのには糖質をいっぱい摂取する必要があると思い込んでします。以前の記事「筋トレでインスリンを分泌するための糖質(炭水化物)は必要ない その1」「その2」に書いたように、筋トレには糖質は必要ありません。もちろん、カーボローディングなんて、危険極まりない行為です。血糖値の急上昇が起こる人が多いでしょうし、AGEたっぷりになってしまいます。
逆流性食道炎は世界中で問題になっています。
アメリカでは成人の20~30%が胃食道逆流症(GERD)に苦しんでいるようです。そしてお決まりのPPI(プロトンポンプ阻害薬)またはH2ブロッカーなどの胃酸を抑える薬を処方されます。しかし、30~40%は治療が失敗し、60%程度は症状が残存しているそうです。
GERDは肥満との関連も認めており、正常体重の人と比較すると3~4倍になるそうです。しかし、単純に肥満だからGERDになる、と決めつけるのは危険です。実際にはやせた人であってもGERDは起こります。糖質制限をすると逆流性食道炎がほとんどの人で改善することを考えると、逆流は糖質過剰摂取によるものと思われます。肥満の人も通常は糖質過剰摂取です。
よく、脂肪を摂りすぎだと言う人がいて、脂肪の摂取量を抑えるように指導する医師や栄養士もいますが、研究では低脂肪で逆流は抑えられないという結果が出ています。(この研究参照)
前回の記事「逆流性食道炎と大量の糖質摂取」では、ものすごい大量の糖質を摂取している状態のデータで、糖質制限の効果はわかりませんでした。今回は糖質摂取量をかなり減らすとどうなるかを示しています。(図は原文より、表は原文を改変)
上の図はベースラインでの糖類(単糖類と二糖類)の総量と肥満の人の逆流の確率を示しています。糖類が増加するとGERDが増加することが明らかにわかります。ティースプーン1杯(4.2g)糖類が増えるごとにGERDの確率が13%増加します。
16週間中等度の糖質制限をしました。炭水化物がエネルギー量の30%程度なので、まだまだですが、1日の糖質量として100g程度なので、頑張ったのではないでしょうか?
ベースライン | 糖質制限後の変化量 | |
---|---|---|
体組成 | ||
身長 (cm) | 164.4 ± 6.3 | |
体重 (kg) | 92.3 ± 10.4 | −5.6 ± 3.3 |
BMI (kg/m2) | 34.1 ± 2.9 | −2.8 ± 1.2 |
腹囲(cm) | 102.8 ± 7.6 | −5.4 ± 4.5 |
内臓脂肪 (%) | 57.2 ± 4.4 | −3.8 ± 2.7 |
皮下脂肪 (%) | 54.3 ± 3.7 | −2.6 ± 1.6 |
総体脂肪 (%) | 47.1 ± 3.3 | −2.8 ± 1.5 |
栄養摂取量 | ||
食事総量 (g) | 2675.7 ± 610.1 | −141.8 ± 573.7 |
エネルギー量 (kcal) | 2103.1 ± 435.1 | −372.7 ± 400.1 |
タンパク質 (% kcal) | 15.6 ± 3.0 | 2.7 ± 3.6 |
総脂肪(% kcal) | 37.2 ± 6.0 | 14.5 ± 6.3 |
飽和脂肪酸 (g) | 31.0 ± 10.3 | −2.4 ± 7.9 |
一価不飽和脂肪酸 (g) | 32.1 ± 8.4 | 3.1 ± 10.0 |
多価不飽和脂肪酸 (g) | 19.8 ± 9.3 | 3.2 ± 8.4 |
総炭水化物 (% kcal) | 46.5 ± 6.1 | −15.5 ± 6.2 |
利用可能炭水化物(デンプン+糖類)(g) | 224.9 ± 55.7 | −123.6 ± 46.3 |
食物繊維 (g) | 16.8 ± 6.5 | 3.3 ± 8.4 |
デンプン類 (g) | 117.7 ± 30.9 | −56.5 ± 31.7 |
糖類 (g) | 99.5 ± 49.5 | −63.1 ± 43.9 |
添加糖 (g) | 73.7 ± 47.8 | −59.9 ± 40.4 |
ショ糖 (g) | 48.9 ± 37.0 | −36.7 ± 27.2 |
果糖 (g) | 16.3 ± 12.6 | −9.6 ± 10.7 |
ブドウ糖(g) | 18.3 ± 11.2 | −10.5 ± 11.4 |
乳糖 (g) | 10.3 ± 8.6 | −3.0 ± 7.5 |
麦芽糖 (g) | 3.2 ± 2.9 | −1.4 ± 3.1 |
グリセミックロード | 193.6 ± 51.4 | −82.5 ± 30.0 |
カフェイン (mg) | 160.1 ± 112.6 | −13.3 ± 8.9 |
アルコール(oz) | 2.2 ± 4.2 | −1.0 ± 2.0 |
代謝・炎症 | ||
HOMA-IR | 2.9 ± 2.3 | −1.1 ± 1.7 |
CRP (mg/dl) | 6.7 ± 8.3 | −1.9 ± 8.0 |
体重、BMI、体脂肪全てが減少しました。HOMA-IRが示すインスリン抵抗性も改善、炎症を表すCRPも低下しています。その結果がGERDはどうなったのでしょうか?下の図です。
上の図は薬の使用割合を示しています。3週目にはかなりの人が改善し、10週目までに全員が症状の改善を示して、薬が中止できているのです。そして、それはずっと16週目まで持続しています。
PPIは対症療法であるばかりか、様々な病気を引き起こす可能性があり、ずっと続けていると止めるのが難しくなる場合があります。(「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面 その1」「その2」など参照)
胃酸が分泌しているのが悪いのではありません。胃酸は非常に重要な役割を持っているので、止めてはダメです。糖質過剰摂取で逆流性食道炎が起きていると考えられます。原因を根本から絶てば、病気は治ります。
糖質制限に勝る治療法はないでしょう。
「Dietary Carbohydrate Intake, Insulin Resistance, and Gastroesophageal Reflux Disease (GERD): A Pilot Study in European- and African-American Obese Women」
「食事の炭水化物摂取量、インスリン抵抗性、胃食道逆流症(GERD):ヨーロッパおよびアフリカ系アメリカ人の肥満女性のパイロット研究」(原文はここ)