肉よりも魚や野菜は健康的か?

久しぶりのブログ更新となってしまいました。週末私用で東京に一時的にいたのですが、帰りの飛行機が台風15号の影響で欠航となり、その次の日も台風の影響でなかなか帰ることができず、さらに仕事の調整など大変な数日でした。

それにしても、東京という街は本当に災害に弱いということと、日本人は台風で交通網が完全に麻痺しているのに、必死に仕事に向かおうとすることが良くわかりました。こんな台風で大変な日は仕事に行かなくても良いようになってほしいものです。

コンピュータを持参していないので、なかなかブログの更新もままならなかったのです。でも台風真っただ中にいる経験は久しぶりであり、恐らくこれほどまともに直撃した台風は初めてでした。夜中は窓が割れるのでは?と思うくらいのひどい風がずっと続き、ほとんど眠れませんでした。

さあ、話は変わって、いまだに高齢者は野菜が健康的だと思っている人も多いと思います。そして高齢者ではなくても一部の人もベジタリアン(ビーガン)となり、肉を食べない人もいます。肉を食べるよりも魚や野菜を食べる方が健康的なのでしょうか?

今回の研究ではイギリスの20歳以上の男女48,188人を対象に、肉食群24,428人、魚食群7,506人、菜食群16,254人の3群に分け、虚血性心疾患および脳卒中の発症について18.1年以上追跡しました。参加者を肉を食べた人(魚、乳製品、卵を食べたかどうかに関係なく肉を食べたことを報告した人)、魚を食べた人(肉を食べなかったが魚を食べた人)、ベジタリアン(参加者肉や魚は食べなかったが、乳製品と卵の一方または両方を食べた人)、ビーガン(肉、魚、乳製品、または卵を食べなかった人)に分け、ベジタリアンとビーガンは菜食群にまとめられました。(図は原文より)

上の図はそれぞれの疾患のリスク比(ハザード比:HR)です。図の上から急性心筋梗塞、虚血性心疾患、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、総脳卒中です。そして、肉食、魚食、菜食の順に並んでいます。肉食群を1として、それぞれのリスクを示しています。そうすると2番目の虚血性心疾患に関しては、魚食群が0.87、菜食群が0.78と有意にリスクが低下していました。しかし、4番目の出血性脳卒中では菜食群が1.43と有意にリスクが増加していました。そして5番目の総脳卒中では菜食群が1.20とリスクが増加していました。

どうやら、肉食と比較すると菜食は心臓疾患に関しては保護的に、脳卒中に関して、特に出血性にはリスク増加に働くようです。魚は肉とベジタリアンの間となっています。

ということは、どっちが健康的かとも言えません。(表は原文より改変)

栄養素
 肉食群魚食群菜食群
 炭水化物(%エネルギー)48.051.052.8
 タンパク質(%エネルギー)16.914.613.6
 総脂肪(%エネルギー)31.630.830.2
 飽和脂肪酸(%エネルギー)11.510.610.2
 一価不飽和脂肪(%エネルギー)10.79.99.7
 多価不飽和脂肪(%エネルギー)6.37.07.1
 食物繊維(g /日)18.821.222.1
 ナトリウム(mg /日)277326842664
総エネルギー(kJ /日)829879397813

上の表はそれぞれの栄養素の摂取量です。もちろん食事のアンケートなのでちょっといい加減なところがあるでしょう。しかし、どの群もそれほどPFCバランスや脂肪酸の割合が大きく違っているわけではありません。そしてどの群も糖質過剰摂取です。ですから糖質制限をしている人ではこの結果は当てはまるかどうかもわかりません。

ただ、ここの表の中にないコレステロールは特に出血性脳卒中と関係していることはよく知られています。(図はこの論文データより作成)

上の図は日本人(茨城)のデータです。LDLコレステロール値が80未満を1としてLDLコレステロール値による心血管疾患の相対的なリスク比を示しています。そうすると冠動脈疾患以外ではほとんどが右肩下がり、つまりLDLコレステロール値が高い方がリスクが低くなることを示しているのです。特に出血性のものは最もLDLコレステロール値が高い群では最も低い群の半分以下になっているものもあるのです。そして、全原因死亡もLDLコレステロール値が高い方がリスクが低いのです。

最初の研究では血中のコレステロール値が示されていますが、どの群も大きな違いがあるわけではありません。(図は原文より改変)

 肉食群魚食群菜食群
総コレステロール(mg/dL)213205193
HDLコレステロール(mg/dL)515250
非HDLコレステロール(mg/dL)162153142

やや肉食でコレステロール高めで菜食群で低めです。このことが関係しているかもしれません。また、食事に含まれるコレステロールは恐らく肉食群が圧倒的に多く、菜食群が圧倒的に少ないでしょう。もしかしたら血中のコレステロール値だけでは現れない何かがあるのかもしれません。

人類は進化の過程で、ベジタリアンやビーガンではありませんでした。雑食ですが肉食の動物です。そして、肉を食べるかどうかというよりも、糖質過剰摂取が大きくかかわっていると考えられます。糖質過剰摂取+肉食が冠動脈疾患に関連していると考えられます。しかし糖質過剰摂取+肉食は脳卒中から保護しているのです。私は糖質制限+肉食は冠動脈疾患からも脳卒中からも保護されると思っています。

また、LDLコレステロール値が高いことは決して有害ではありません。糖質過剰摂取+LDLコレステロール高値でさえ脳には有益なのです。しかも全原因死亡に対してもリスク低下が認められるのです。(「LDLコレステロール値は役に立たない」「非常に低いLDLコレステロールは死亡率や心疾患リスク低下に関連していない」など参照)

コレステロールは細胞膜の重要な構成成分です。それをしっかり摂取することは恐らく血管の健康にとっては必須のことなのでしょう。そこに糖質過剰摂取さえ加わらなければ疾患に発展することは非常に少ないと考えられます。

私は糖質制限をしながら今日も肉をたくさん食べました。

「Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up: results from the prospective EPIC-Oxford study」

「18年間の追跡調査における肉食者、魚食者、菜食者の虚血性心疾患と脳卒中のリスク:前向きEPIC-Oxford研究の結果」(原文はここ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です