カナダ糖尿病学会も糖質制限へ

以前の記事「アメリカ糖尿病学会が出した歴史的なコンセンサスレポート 糖質制限を推進!」で書いたように、アメリカ糖尿病学会の栄養療法のコンセンサスレポートで、糖質制限の方向へ大きく舵を切りました。

糖尿病カナダ(Diabetes Canada カナダ糖尿病学会)も糖質制限に向かうようです。

2018年のカナダの糖尿病の予防と管理のための糖尿病診療ガイドラインは、健康的な体重を達成および維持するための栄養バランスのとれた低カロリー食の重要性を強調していて、個人の好みに基づいていくつかの食事パターンによって達成することができる、としていました。そして、日本と同様に主要栄養素の摂取割合に関する具体的な証拠がないため、糖尿病カナダの推奨事項は、一般国民に対するカナダ保健省の推奨事項と合わせています。つまり、炭水化物を総エネルギーの45%〜60%で推奨していました。

今回、糖尿病カナダは見解を発表しました。1型および2型糖尿病と診断された人々の管理における低炭水化物食(51~130g未満/日)または超低炭水化物食(50g未満/日)の食事の役割の証拠を要約し、糖質制限食の食事パターンの利用に関して、患者と開業医に実際的な推奨事項を提供することを目的としています。

1型糖尿病のエビデンスでは、低炭水化物食でインスリン量が減少し、HbA1cも低下することが示されています。超低炭水化物食でも、HbA1cが低下し、血糖変動も低下し、低血糖の発生も低下するなどのことが示されています。

2型糖尿病のエビデンスでは、非常に良いことに炭水化物量が130~225g/日である中程度の糖質制限を別として、低炭水化物食や超低炭水化物食のエビデンスを示しています。どこかの糖質制限と言って全く糖質制限ではない研究を持ち出して、否定する人とは違いますね。

低炭水化物食は、最大6か月の試験期間で、対照食よりもHbA1cと体重の減少が大きく、中程度炭水化物の食事療法は、HbA1cまたは体重のいずれかで対照食と統計的に有意な差がなかったことが示されています。他の低炭水化物食の10週間のプログラムでも、完了者はHbA1cと体重の減少、糖尿病薬の減少が示されています。

超低炭水化物食は、HbA1cと体重の大幅な減少を示した研究や、非ランダム化された短期研究では、糖尿病薬を減らすことを認めながら、10週間後にHbA1c、体重、中性脂肪の大幅な減少が示されましたが参加者の半数が途中で中止していること、などが示されています。

ただ、これらの食事療法で見られる血糖コントロールと体重の改善が長期的に維持されるか、糖尿病の合併症、心血管疾患または死亡率の低下につながるかは不明であるとか、持続性の欠如が報告されているため、持続可能性は別の問題だとしています。

ただ、残念なことに、「炭水化物制限食で適切な食物繊維を達成することは難しいかもしれません。」という間違った認識であることです。栄養学では炭水化物に食物繊維を含んでいることは確かですが、糖質と食物繊維は全くの別物です。糖質量が低くても十分に食物繊維を摂取できます。しかし、その後で「炭水化物に代わる脂肪とタンパク質の品質に注意を払うことで、食物繊維と微量栄養素に関する懸念を軽減することができます。」とも書かれています。

結論として、

1型糖尿病の場合:
・信頼できるデータがほとんどなく、自信を持って一般的な推奨を行うことは困難
・糖尿病患者にとって重要な転帰の大幅な改善(HbA1cの低下、インスリン必要量の減少、血糖値変動の減少、体重減少)は、低炭水化物食や超低炭水化物食の食事療法を選択した人によって報告されている
・1型糖尿病の人に対する低炭水化物食の長期的有効性を調査する研究はほとんどなく、さらに、少数の小規模な研究は方法論の質が低く、1型糖尿病のすべての人に低炭水化物食に関する一般的な推奨を行うには証拠が不十分である

2型糖尿病の場合:

・低炭水化物食が減量に効果的であり、血糖コントロールが改善され、糖尿病薬での治療の必要性が減少することを示してる。他の比較する食事療法も減量と血糖コントロールの改善に有効かもしれないが、他の食事療法では意味のある結果である糖尿病薬治療の必要性を減らしながら、これを達成していない。
・血糖コントロール、体重を改善するために、超低炭水化物食が高炭水化物の食事よりも優れている可能性があり、短期(最大12か月)の投薬の必要性を減らすことができるが、長期的な利益に関する証拠は限られている。

・現在のデータでは、超低炭水化物食の食事療法の減量とHbA1cに関する利点が、主要栄養素の組成、またはカロリー摂取量の関連する違いに固有のものであるかどうかを判断できない。
・これまでに発表された文献には、観察研究における交絡因子の非調整、小規模RCTの短期フォローアップ、割り当てられた食事療法への持続性が比較的高い不良率など、いくつかの方法論上の制限が存在する。

つまり、医療提供者は、糖尿病と肥満の複雑な課題に対処するには多様なアプローチが必要であることを認識する必要があり、共有の意思決定を尊重する支持的な関係で患者と関わり合うよう努めるべきで、もっと研究すべきとの立場です。

そして、最終的な推奨事項は次の通りです。

1.糖尿病患者は、個人の価値観、目標、好みと一致する健康的な食事パターンを選択できるようにサポートされるべきである。
2.健康的な低炭水化物食または超低炭水化物食は、1型および2型糖尿病患者の減量、血糖コントロールの改善、および/または糖尿病薬治療の必要性の低減のための健康的な食事パターンと見なすことができる。それぞれの人は、医療提供者に相談して目標を定義し、悪影響の可能性を減らす必要がある。
3.医療提供者は、強化された血糖値のモニタリングを推奨したり、低血糖を引き起こす可能性のある薬物療法(スルホニル尿素薬やインスリン)、糖尿病ケトアシドーシス(SGLT2阻害剤、インスリン欠乏の人のインスリン)のリスクを高める薬物療法を調整したり、食物繊維と栄養素の適切な摂取を確実にするために、低炭水化物食を希望する糖尿病患者をサポートできる。

4.個人とその医療提供者は、SGLT2阻害剤と低炭水化物食を使用しながら、正常血糖糖尿病ケトアシドーシスのリスクについて教育を受け、さらにこのリスクを軽減するための戦略について教育を受けるべきである。
5.低炭水化物食を開始する糖尿病患者は、文化的に適切で楽しく持続可能な計画の作成を支援できる栄養士からの支援を求める必要がある。栄養士は、人々が低炭水化物食の食事パターンに移行したり、低炭水化物食の食事パターンから移行したりするときに、個人の価値観、好み、ニーズ、治療目標に最もよく適合する炭水化物摂取量を変更する方法を提案しなければならない

糖尿病カナダ(カナダ糖尿病学会)は、完全とは言えないまでも、かなり糖質制限容認の方向に向いたと言えます。特に最後の推奨事項の2では、「健康的な低炭水化物食または超低炭水化物食は、1型および2型糖尿病患者の減量、血糖コントロールの改善、および/または糖尿病薬治療の必要性の低減のための健康的な食事パターンと見なすことができる。」とまで言っています。日本の糖尿病学会の消極的な姿勢とは全く異なります。

新型コロナウイルスで糖尿病、高血糖、肥満の重症化リスクが判明しています。そのリスク因子のほとんどすべてが糖質過剰摂取に結びついています。しかし、日本は死者数が少ないから、日本糖尿病学会は糖質制限の重要性にまだまだ気が付かないでしょうね?それとも気が付いていても気が付いていないふりでしょうかね?

「Diabetes Canada Position Statement on Low Carbohydrate Diets for Adults with Diabetes: A Rapid Review」

「糖尿病の成人のための低炭水化物食に関する糖尿病カナダの見解:迅速なレビュー」(原文はここ

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コメント

  1. 鈴木武彦 より:

    糖質制限バイアスのかかった思い込みかもしれない、とは思いますが、
    アメリカ、ロシア、スペイン、イタリア、ブラジルなど、
    人口あたりの新型コロナウィルスによる死亡者数の割合が高い国、国民メタボ率高そうですね。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      データの信ぴょう性はどうかわかりませんが、ロシアの死亡率はイタリアの20分の1以下です。

  2. 太田 より:

    糖質制限を始めてから7年目になりました。
    糖尿病薬(インスリン注射)離脱にはこれしかないと思いつつ、不安も同居していました。

    糖質制限1年で糖尿病薬全て離脱、肥満解消、体調良好、快眠、花粉症ほぼ完治、その他諸々です。

    高齢者(69歳)の強みです。体に関してはエビデンスとは言っても、数学的帰納法で証明できる訳ではないので n=1 で十分です。年数は私が生きた年数で了解です。

    親しい人達は糖尿病だから糖質制限をしていると思っていますが、糖質制限が当たり前になった今では、免疫力アップ、病気予防の為です。

    日本糖尿病学会は趨勢には抗えず、糖質制限を認める最初の文言を、どのようにオブラートに包んで発表するか苦慮しているのが目に浮かびます。

    • Dr.Shimizu より:

      太田さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限1年で糖尿病薬全て離脱、素晴らしいです。
      普通に考えられれば、糖質制限が糖尿病に有効な方法だとわかると思うのですがね。
      日本糖尿病学会はどうしても薬を処方したいのでしょうね。

  3. 江渕 武彦 より:

    ドクターシミズ先生
    こんにちは、いすも興味深く先生の記事を拝読しています。BCGにおける日本株の自然免疫ブースト効果はとてもよいものらしいですね。
    そこで、質問させてください。私は、1953年生まれの男です。BCG接種は1951年より義務化されたとのことですが、私はこのBCG接種を受けた記憶がありません。ただし、左右両肩に何らかの痣があります。左がBCGの跡痣との記事をどこかで読みました。左肩のものは、2か所、1センチ大の丸くて浅いクレーター様の痣です。BCG接種の記憶は無いにしても、ツベリクリン検査の注射を受けた記憶はあります。すべて陽性であったため、その後のBCG接種は受けていません。
    ツベリクリン注射は、つねにBCG接種の効果を確認するためのものなのでしょうか。それとも、BCG接種無しに結核抗体の存否を調べる検査なのでしょうか。前者だと安心できますが、後者だと不安が残ります。よろしくご教示ください。

    • Dr.Shimizu より:

      江渕 武彦さん、コメントありがとうございます。

      肩のクレーター様のものは種痘では?
      ツベルクリンについて、私なんかよりグーグルさんの方が詳しいですよ。