sdLDLと冠動脈疾患と糖尿病

LDLコレステロールが低くても心血管疾患を回避できるわけではありません。小さな密度の高いLDLであるsdLDLは非常に危険で、冠動脈疾患などアテローム性動脈硬化症との関連を認めると考えられています。では、糖尿病とsdLDLと心血管イベントとの関連はどうでしょうか?

今回の研究では、耐糖能障害のない人、糖尿病予備軍(前糖尿病)、糖尿病の人のsdLDLと主要な心血管イベントの発生との関連を分析しています。対象は少なくとも1つの主要な冠動脈で50%以上の冠動脈狭窄と診断された4,000人以上の患者です。

LDLコレステロール値と非HDLコレステロール値は心血管イベントと関連は認められませんでした。(図は原文より)

上の図のaは全ての人、bは糖尿病の人です。sdLDLの値によって4つのグループに分けています。(Q1:sdLDL <18.30mg/dL、Q2:18.30≤sdLDL<26.70mg/dL、Q3:26.70≤sdLDL<38.58mg/dL、Q4:sdLDL≥38.58mg/dL)そして、Q1と比較するとQ4では1.38倍心血管イベントの発生リスクが高くなりました。

そして図のようにLDLコレステロールが高いグループと、低いグループに分けて分析しています。ただ、LDLコレステロール値をいくつで2つのグループに分けているのか、不明です。(恐らくは中央値で分けていると思われます。)

そうすると、全体のaの図ではLDLコレステロールが高かろうと低かろうと、sdLDLが最も高いグループのみ有意に心血管イベントの発生リスクと関連し、低LDLコレステロール群で1.85倍、高LDLコレステロール群で1.41倍となっていました。

糖尿病のbの図で、sdLDLが最も低い群と比較して、低LDLコレステロール群のQ4と高LDLコレステロール群のQ3、Q4でリスクが高く、最もリスクの高いのは低LDLコレステロール群のQ4で2.42倍でした。

面白いことに、最もsdLDLが高い群の心血管イベントの発生リスクは、低LDLコレステロール群の方が高くなっていたのです。

 

上の図は、縦軸が心血管イベントの発生を起こさなかった人の割合です。横軸はその期間です。aはsdLDLの中央値でそれよりも高い群と低い群で差は認めませんでした。bは正常耐糖能(青い線)、前糖尿病(赤い線)、糖尿病(緑の線)で分けたものです。正常と比較して糖尿病でのみ心血管イベントの発生が高くなりました。

cはさらに耐糖能とsdLDLの高低でグループ分けして分析しています。糖尿病+高sdLDLは最も高率に心血管イベントの発生を示しました。

糖尿病+高sdLDLの心血管イベントの発生リスクは正常+低sdLDLの1.83倍でした。

 

上の図はさらに細かくsdLDLのグループ分けをしています。aは未調整、bは様々な因子で調整したものです。糖尿病でsdLDLがQ3およびQ4は心血管イベントの発生リスクが有意に高くなりました。

糖尿病など糖質過剰摂取では通常、HDLコレステロールが低く、中性脂肪が高くなります。そうすると一般的にsdLDLが増加します。もちろん、糖質制限をして十分にHDLコレステロールが高く、十分に中性脂肪が低かったとしても、sdLDLがゼロになるわけではないでしょう。LDLの粒子は大きいか小さいかの2択ではなく、グラデーションになっているので、どんな人でも恐らく少量はsdLDLは存在すると思います。

また、今回の研究のようにsdLDLの量を測定する方法(沈殿法)では、もしかしたらsdLDLの中に通常のLDLもある程度含まれているのかもしれません。そうだとすればLDLが高値になればなるほどその誤差は広がる可能性もあるでしょう。

ちなみに以前私が別の方法(ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法)で測定したsdLDLは12mg/dL、4%でした。

sdLDLが小さいから血管の内皮細胞を通り抜けて血管の内膜に入り込んでアテロームを作るわけではないと思います。LDLとsdLDLの大きさの差はせいぜい数nmというレベルです。sdLDLはマーカーであり、恐らくそのものが危険ではなく、それが高い値または高い割合の状態を作り出す体の異常がアテロームを作り出すと考えています。

糖質過剰摂取、インスリン抵抗性では大きなVLDL1が肝臓から分泌され、それがsdLDLになります。心血管疾患予防にまずは糖質制限でしょう。

糖質過剰症候群

「Association of small dense low-density lipoprotein with cardiovascular outcome in patients with coronary artery disease and diabetes: a prospective, observational cohort study」

「冠動脈疾患および糖尿病患者における小さな高密度低密度リポタンパク質と心血管転帰との関連:前向き観察コホート研究」(原文はここ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です