糖質制限VS脂質制限 その2

以前の記事「糖質制限VS脂質制限 その1」の続きです。14日間糖質制限をした場合と脂質制限をした場合でどのように違うか分析した研究です。(図は原文より)

上の図は様々なパラメーターの変化です。空腹時血糖やインスリンは糖質制限でも脂質制限でも低下しています。ケトン体は当然糖質制限で大きく増加です。遊離脂肪酸も糖質制限で大きく増加しています。面白いのは中性脂肪です。糖質制限では低下しているのは当然でしょうが、脂質制限では大きく増加しています。一般的には中性脂肪が高い時に脂質摂取量を減らすようにアドバイスされるのではないでしょうか?逆ですね。

VLDLが糖質制限で減少です。総コレステロール、LDLコレステロールは脂質制限で大きく低下しています。

しかし、これまでの認識とは違い、LDLコレステロールの大きさについては、糖質制限で大きいLDLが減少しています。逆に小さなLDLは増加しています。初期の変化なのでしょうか?ん~、わかりません。

BCAAは糖質制限で増加し、脂質制限で減少です。

尿酸は糖質制限で増加になっています。これは糖質制限の初期に良く認められますね。(「糖質制限と尿酸値上昇」参照)甲状腺のT3も糖質制限で減少しています。これも良く認められることですね。(「糖質制限のときの甲状腺ホルモン低下(低T3症候群)」参照)

上の図は血糖値やケトン体の推移です。赤が糖質制限、青が脂質制限です。aはCGM(フリースタイルリブレのような間質液のフルコース値を持続的に測定する機器での測定値)の結果です。左が平均のグルコース値、右がグルコース値の変動です。平均のグルコース値も変動も当然糖質制限の方が低くなっています。

bはそれぞれの食事の後のグルコース値の推移です。糖質制限では大きな変動はありません。脂質制限ではそれほど大きくはないですが、スパイクしています。

cは空腹時のケトン体のβヒドロキシ酪酸の推移です。糖質制限では日に日にケトン体が増加しているのがわかります。

上の図はそれぞれの調理した食事ではなく、テストミール(それぞれの食事の主要栄養素含有量と一致し、推定1日カロリー必要量の30%に相当する流動食)摂取後の様々なパラメーターの推移です。流動食なので脂質制限では非常に早い時間に血糖値スパイクが起きています。それに合わせて脂質制限ではインスリンも大量に分泌されていますが、180分後でもベースラインまで戻っておらず、結構な分泌量です。一方糖質制限では血糖値とインスリンの分泌の推移は穏やかです。遊離脂肪酸は高いままで、食事によりあまり減少していません。さらに空腹時に中性脂肪は非常に低いですが、食後の中性脂肪はやはり高脂肪を反映して、高中性脂肪になっています。しかしピークでも170くらいです。私自身の卵によるデータではもっと中性脂肪は低かったですが、流動食との差である可能性があります。(「大量のコレステロールを摂るとどうなるか? その1」参照)または、糖質制限にちゃんと適応すると、もっと食後TGスパイクが少なくなるかもしれません。

上の図は75gの経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の結果です。 糖質制限では、脂質制限よりもOGTTによる血糖値が高くピークの1時間値は170を超えています。2時間値は糖質制限で平均で142.6、脂質制限で108.5でした。

インスリン分泌も有意差はありませんが、ちょっとピークが遅くなっています。食後のインスリン追加分泌の初期分泌能の指標であるインスリンインデックスは脂質制限の方が高くなる傾向がありました。

乳酸値は脂質制限の方が高く、遊離脂肪酸は糖質制限の方が高くなりました。乳酸が高いということは、やはり脂質制限では解糖系が亢進していると考えられます。

このように、糖質制限をするとOGTTによる血糖値の上昇、つまり耐糖能が低下しているように見えます。これは周知の事実で、「長期に糖質摂取が少ないと、インスリン分泌能が低下し、負荷後血糖が高値となるため検査実施前の3日間炭水化物を150g以上含む食事を摂ることが必要だ」と説明されています。これは決して耐糖能障害が増加しているのではなく、一時的な生理的なインスリン抵抗性です。(「糖質制限はインスリン抵抗性を増加させる? その1」「その2」参照)

だから、糖質制限をしながら、そのままOGTTを行って、その結果血糖値が上昇して、「糖質制限は耐糖能障害を起こす」と言っても無意味なのです。

糖質制限に十分に適応するまでには4週間程度が必要だと思いますが、生理的インスリン抵抗性は2週間でも十分に起きています。ただ、糖質制限は一生行えば良いわけです。週に1回、月に1回糖質を食べる「チートデイ」を設けている人は、十分に注意が必要です。糖質制限前よりも血糖値が大きく上昇する可能性があります。

「Effect of a plant-based, low-fat diet versus an animal-based, ketogenic diet on ad libitum energy intake」

「植物ベースの低脂肪食と動物ベースのケトン食の自由なエネルギー摂取量への影響」(原文はここ

コメント

  1. 鈴木武彦 より:

    おはようございます。
    いつも詳細なデータ分析、何とか理解できる頑張って読んでました。

    清原さん、YouTubeでチートデイと称して
    豪快にスィーツ爆食いされてました。
    清原さんは清原のままなのですね。
    (確か、先生と同学年ですか)

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      清原さんは糖質制限をしているのですか?
      私は個人的にはチートデイに反対です。いつまでも依存から抜け出れないからです。
      違法薬物の治療でもチートデイは無いはずです。

  2. じょん より:

    清水先生、こんばんは。

    糖質制限、脂質制限にしても14日間程度では、生体がそれらに適応しているのかどうかわからないですね。LDL粒子の大きさごとの変化もそうですね。
    テストミールの中性脂肪の変動も?でした。

    可能な限り、糖質制限で生活したいと思います。

    • Dr.Shimizu より:

      じょんさん、コメントありがとうございます。

      研究の方法の問題もあるのかもしれませんが、やはり短期間では変わるものと変わらないものがあるのかもしれません。