尋常ではない量のフルーツジュースを摂取するとどうなるか?

果物はヘルシーな食べ物と考えられており、その延長線上でフルーツジュースもヘルシーな飲み物と一般的には考えられています。しかし、現代の果物は非常に甘く、糖質、果糖がたっぷり入っており、さらにフルーツジュースは食物繊維が取り除かれた状態のものがほとんどであるので、全くヘルシーではありません。

そのフルーツジュースを健康的だと思い込んでしまった人が長期にわたり尋常でないほど大量に飲んだ症例報告があります。

この患者は、58歳の白人男性で、数週間にわたって毎日15Lのフルーツジュースを摂取したそうです。1日15Lですよ!過去4週間で約14kgの意図的な体重減少をしたようです。その食事療法が1日あたり約15 Lの市販のフルーツジュース摂取であり、固形の食品はほとんど食べていませんでした。かすみ目とつま先のうずきを経験した後、かかりつけ医を受診し検査で異常が見つかり、救急に紹介されました。最初のかかりつけ医での検査値では、中性脂肪は9182mg/dL!コレステロール1327mg/dL!見たことない数値です。血糖値は572mg/dLでした。

救急では血糖値は450mg/dLをオーバーし、ナトリウムは軽度低下し130mmol/Lでしたが、AST30、ALT42、γGT51と基準値に収まっていました。下の写真は採血した血液を遠心分離したものです。(図は原文より。表は原文より改変)

上部に脂肪血症層がはっきりとわかります。恐ろしい。結局2回の血漿交換をしたようです。

上の図は中性脂肪値の推移です。血漿交換でやっと1000台になっています。

入院日数基準範囲
1234562週間のフォローアップ
コレステロール(mg/dL)1327334238221247221<200
中性脂肪(mg/dL)91821603770633698419<200
HDLコレステロール(mg/dL)*23171922> 35
LDLコレステロール(mg/dL)******133<150
HbA1c17.315.512.74.8〜6.0

上の表は様々な検査値の推移です。中性脂肪は22日してもまだ419です。そして中性脂肪が高いのでHDLコレステロールものすごい低値です。もともと2型糖尿病の病歴はないようですが、2週間後のフォローアップ時でさえ、HbA1cは12.7です。

脂質画分基準範囲
中性脂肪(mg/dL)851<150
コレステロール(mg/dL)267<200
カイロミクロン(mg/dL)ネガティブ
VLDL(mg/dL)169<30
HDL(mg/dL)17> 40
LDL(mg/dL)79<115
Lp(a)(mg/dL)ネガティブ

2回目の血漿交換2日後のリポタンパク質電気泳動の結果です。VLDL高値、HDL低値ですね。

1日15Lですから、平均的な市販のフルーツジュースには100mLあたり8〜11gの糖質が含まれていることを考えると、1日の推定砂糖摂取量は1.2kgを超えています。市販のジュースの果糖とブドウ糖の比率は約60:40で、1日あたり720 gを超える果糖を摂取していたことになります。糖質制限をしている人のほぼ1か月分を1日で何日も摂っていたことになります。通常の糖質過剰摂取の人の3日分でしょうか?

よくもここまでフルーツジュースばかりを飲んだものです。どんどん血糖値が上がり、それにより喉が渇き、さらに飲むという悪循環だったのか、本当に痩せるための計画だったのか?それとも一種の摂食障害だったのか?これだけのフルーツジュースのエネルギー量は相当なものです。100ml当たり40kcalと考えても6,000kcalです。それでも体重減少しているのです。体重はカロリーと関係ないことがわかります。

いずれにしても人間、中性脂肪値を9,000以上に上げることは可能なんですね。ただ、この患者はフルーツジュースばかりを飲んでいました。ほぼ脂質摂取ゼロに近いのです。中性脂肪もコレステロールも脂質摂取で上昇するわけではありません。大量の糖質、果糖がここまで中性脂肪、コレステロールを激増させたのです。恐ろしいです。

 

「Fructose-induced severe hypertriglyceridemia and diabetes mellitus: a cautionary tale」

「フラクトースによる重篤な高中性脂肪血症および糖尿病:注意喚起のために」(原文はここ

7 thoughts on “尋常ではない量のフルーツジュースを摂取するとどうなるか?

  1. 果物多量摂取。異論反論あるでしょうが、いわゆるヴィーガン食とも矛盾しないですよね。
    やはり健康的ではないのかもですね、ヴィーガン食。

  2. 血糖値と中性脂肪の数値を見て、思わずぞっとしました・・・。
    この人の全身の細胞は悲鳴を上げていたんではないでしょうか。

    この手のジュースは砂糖・果糖を含んでいるはずですが、この人は虫歯にはならなかったのでしょうか?
    映画『あまくない砂糖の話』で身体を張って砂糖を摂取し続けたデイモン・ガモーさんは虫歯にはならなかったのでしょうか?他人事ながら気になっています。

  3. 確かに常識/通説とは異なり、
    摂取カロリーと体重の関係、糖質摂取が脂肪を増やすことが分かりました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です