糖質制限には程遠い低炭水化物食と冠動脈石灰化

冠動脈の石灰化は冠動脈疾患の発症やその死亡率、全原因死亡などのリスクを増加させると考えられています。

今回の研究では低炭水化物食が冠動脈石灰化の進行のリスクを増加させると言っています。これは大変だ!と思う前に、中身を見てみましょう。対象は平均年齢40.4歳の2,226人です。

まずはこの研究の肝である低炭水化物食スコアというものです。(図は原文より)

ポイントを0~9まで付けていきますが、炭水化物の最大量が56.3%で最低量が39.9%と完全に糖質制限とはかけ離れています。もちろん、多少の糖質を制限することで、利点は少しあるかもしれませんが、中途半端というよりも全く糖質制限とはなっていない食事を評価しても、これで糖質制限の良し悪しを語ることはできません。

しかも、今回も食事内容はアンケートによる非常に質の低いデータをもとにしています。でも見てみましょう。

炭水化物の割合で3つのグループ(43%未満を低炭水化物食グループ、53%以上を高炭水化物食グループ)に分けていますが、最低グループは平均の炭水化物が39.5%で、最大グループは57.5%です。グループ間で様々な違いがあり過ぎます。

上の図は炭水化物摂取量に対する冠動脈石灰化の進行のリスクです。高炭水化物の方がリスクが低くなっています。

炭水化物摂取量による冠動脈石灰化進行の累積発生率です。低炭水化物では高くなっています。

上の巣は炭水化物%とリスクの関係のグラフです。グレーのバーを見ればわかるように我々の糖質制限食の糖質割合である10%前後はデータさえありません。

さらに、この研究では植物ベースの食事の方が動物ベースの食事より冠動脈石灰化の進行が少ないと言っています。

動脈硬化は糖質過剰症候群ですから、糖質制限は冠動脈疾患のリスクを低下すると考えられます。しかし、このような研究の結果だけで、中身も読まずに(または敢えて中身を語らずに)糖質制限は危険であるという情報を流す方もいるでしょう。

矛盾した結果になる場合、そのほとんどは糖質制限が糖質制限となっていません。ご注意を。

 

「Low-Carbohydrate Diet Score and Coronary Artery Calcium Progression: Results From the CARDIA Study」

「低炭水化物ダイエットスコアと冠状動脈カルシウムの進行」(原文はここ

9 thoughts on “糖質制限には程遠い低炭水化物食と冠動脈石灰化

  1. どれくらいなら「糖質制限」と言えるかという事になりますが、やはり代謝が変わっているか変わっていないかで大きく違うと思います。
    要するにメインのエネルギーを糖代謝によって得ているのか脂肪酸代謝によるのかでは、全く別物だと実際に感じることができます。
    その指標となるのがケトン体値であり、ケトン体高値を維持していると持久力が向上します。
    ここで言う持久力とは、いわゆる「運動」が長時間持続できると言う事に限らず、頭脳労働においても感じられます。長時間のデスクワークでも疲労感も少なく、集中力も持続します。
    そして、免疫力の向上も感じられます。ケトン体高値を維持していると例えば、水虫なども薬なしで治ります。
    したがって、糖質制限を評価する上で、脂肪酸代謝になっているかどうかは大きなファクターだと思います。

    ところで糖質制限でショートスリーパーになるという事をよく聞きますが、私の経験上、ケトン体が高値になると睡眠時間が短くなるように感じています。
    一例を挙げると前日の夕食前にβヒドロキシ酪酸値で2700μmol/L、翌朝になっても1600μmol/Lと言うような高値の時は4時間足らずの睡眠で目が覚めます。
    これは、私の経験上の感覚であり、根拠があるわけではありませんが、睡眠時間とケトン体値についての論文などはあるのでしょうか。
    江部先生にもお聞きしたのですが、分からないとの事でした。

    1. 西村様
      突然のこと、すみません。
      ケトン体値に興味があり、伺いたく思います。
      測定は病院等の機関で行われているのでしょうか?
      Amazonなどでも測定器が販売されていますが、ご使用されたことはありますか?
      もし、あるようでしたら精度や使用感など簡単で結構ですのでコメントいただけると幸いです。
      よろしくお願いします。

    2. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      仰るとおり、代謝の変化が一番重要だと思います。研究ではせめてケトン体を測定してほしいですね。

      睡眠に関しては私はショートスリーパーではありません。しかし糖質制限をしてから寝付きは良く、目覚めも良いです。
      ケトン体値を非常に高くして眠ったことがないので、何とも言えません。
      また、睡眠は非常に複雑だと思います。いまだに全てが解明されていません。
      ただ、私なりの推測などを一度記事にしたいと思います。

  2. トヨタ自動車もEVシフトを発表しましたが、我々も糖質エネルギーからケトン体エネルギー、
    そしてその先へ?シフトして健康的な生活を続けたいものです。

  3. 宝田様、
    ケトン体は、アボット社のフリースタイルリブレ用のリーダーでケトン体電極を使用してSMBGと同様に穿刺にて測定できます。測定しているのはケトン体のうちのβヒドロキシ酪酸です。
    Amazonなどでも測定器が販売されていますが、呼気で測定するもので、ケトン体のうちのアセトンを測定しています。使用したことがないので何とも言えませんが、いろんなブログ記事などから推測すると精度はそれほど良いものではなさそうですが、消耗品が少ないのでランニングコストは安いと思います。因みに私が使用している電極は、10枚で2700円で購入しています。あまり気軽に測定できる値段ではないですね。

    1. 匿名さん、コメントありがとうございます。

      データが示されていないので、全く内容がわかりません。
      通常肥満の方がコルチゾールレベルが高いと思われます。
      糖質制限では本来の生理的なコルチゾール分泌の日内変動に戻っただけかもしれません。
      コルチゾールは食事をしただけでも増加しますが、単一の栄養素では炭水化物に反応すると思います。
      まあ、単一の栄養素を摂ることは通常ありませんが。

  4. 匿名様コメント、そうなのか!?と読み進めても「暖簾に腕押し」「論拠曖昧」
    いわゆる「かもしれない」糖質制限否定説、と私には感じられます。

    匿名様ご紹介記事の、イカは炭水化物ほぼ0だと私は認識しておりました。

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