我々はずっと長い間、脂質、特に飽和脂肪酸をたくさん摂ると体の脂肪になり体重が増加したり、血管が詰まって心筋梗塞を起こすと思わされてきました。

しかし、以前にアメリカで行われた低脂肪食介入試験では全く違う結果が得られています。

この研究は、閉経後の女性に対する長期的な食事介入のランダム化比較試験で、恐らく最大のものでしょう。50〜79歳の閉経後の女性48,835人が対象です。アメリカ人の食事ガイドライン(DGA)と一致する、いわゆる「心臓に良い」低脂質の食事を摂るように指示されたグループと普通に食事をしたグループで比較しています。

介入食の目標は、特に飽和脂肪の摂取量を、穀物、果物、野菜からの炭水化物の摂取量の増加に置き換えることでした。介入群では特別な訓練を受け認定された栄養士が主導する集中的な行動修正プログラムが行われて、何度も個別のフィードバックによって補足されました。

8年間で介入群の体重減少はたった0.4kgでした。しかもベースラインで空腹時血糖が高い女性では、1年目の血糖値は介入群の方が比較群よりも大きく、7.9mg/dL上昇しました。

さらに、スタチンを処方された閉経後の女性が2型糖尿病を発症するリスクが49%増加しました。

そして、心臓の方はどうだったかというと、ベースラインですでに冠動脈疾患を有していた女性では、通常の食事をしている人と比較して、低脂質の介入食群で冠動脈疾患リスクが26%増加しました。

さらに5年間延長して研究が行われました。そうしたところ、ベースラインですでに冠動脈疾患を有していた女性では、通常の食事をしている人と比較して、低脂質の介入食群で冠動脈疾患リスクがさらに47%〜61%に増加してしまいました。つまり、冠動脈疾患のある人に低脂質食は冠動脈の狭窄を悪化させる食事である可能性があるのです。

もちろん、ベースラインで冠動脈疾患も高血圧もなかった最も健康な人にはわずかな利益を示しています。

食事介入がどこまで上手く行ったかはわかりません。しかし、このような介入試験は非常に難しく、このような大規模なものはこれからもほとんどないでしょう。

別の研究では、冠動脈性疾患がすでにある235人の閉経後女性の2,243か所の冠動脈セグメントで平均3.1年のフォローアップ後に冠動脈のアテローム性動脈硬化症の進行と栄養素の関連を分析しています。

 

上の図は横軸が各栄養素の摂取量に応じて4つのグループに分類したもので、右に行くほどその栄養素を多く摂っているグループになります。縦軸は平均最小冠動脈の直径です。下に行くほどマイナスなので狭窄が進行しているということです。左図のオレンジ色は飽和脂肪酸、青が一価不飽和脂肪酸、緑が多価不飽和脂肪酸です。右図の紺色が総脂質、青がタンパク質、グレーが炭水化物です。

図の①の矢印は飽和脂肪酸の摂取量が多くなるにつれて平均最小冠動脈の直径のマイナスが少なくなる、つまり狭窄が少なくなることを示しています。逆に②の矢印のように、多価不飽和脂肪酸が増加すると平均最小冠動脈の直径は減少してしまっています。多価不飽和脂肪酸の摂取量が5%多いごとに、平均最小冠動脈径が0.17mm大きく減少し、平均狭窄率は5.8%進行しました。

また、③の矢印のように炭水化物の摂取量の増加は平均最小冠動脈の直径の減少を促進させています。炭水化物の摂取量はアテローム性動脈硬化の進行と強く正の相関があり、摂取量の最も少ないグループと比較して最も多いグループでは、平均最小冠動脈径が0.19mm大きく減少しました。炭水化物の摂取量が10%多いごとに、平均最小冠動脈径が0.07mm大きく減少し、平均狭窄率は2.8%進行しました。

脂質、特に飽和脂肪酸はずっと悪玉扱いが続いています。しかし、エビデンスは逆のことを語っています。しかし、医師も栄養士もマスコミも、一部の人はそれを知りながら、我々に脂質摂取量、飽和脂肪酸摂取量、コレステロール摂取量を減らすように言い続けています。

真実は飽和脂肪酸ではなく、糖質過剰摂取がアテローム性動脈硬化の原因でしょう。食事だけで病気がコントロールされては困る人がいっぱいいるのだと思います。新型コロナウイルスが弱毒化した今になっても危険性を叫び続けているいわゆる専門家やマスコミも同じ構図ですね。

心血管疾患は糖質過剰症候群です。観察研究よりも介入研究の方がエビデンスが高いのではなかったでしょうか?まあ、エビデンスなんてどうにでも操作ができるので、全てが信用できるわけではありませんが。

私は今日もいっぱい脂のある肉を食べます。

 

「Hiding unhealthy heart outcomes in a low-fat diet trial: the Women’s Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial finds that postmenopausal women with established coronary heart disease were at increased risk of an adverse outcome if they consumed a low-fat ‘heart-healthy’ diet」

「低脂肪食試験における不健康な心臓の結果を隠す:女性の健康イニシアチブのランダムコントロール食事変更試験は、すでにある冠動脈性心臓病の閉経後の女性が低脂肪の「心臓の健康」食を摂取した場合、有害な結果のリスクが高いことを発見した」(原文はここ

4 thoughts on “飽和脂肪酸は心臓に悪くない”
  1. 「飽和脂肪の摂取量を、穀物、果物、野菜からの炭水化物の摂取量の増加に置き換える」
    研究をされた方、更に情報提供して下さった清水先生に感謝いたします。

    イメージとしては穀物、果物、野菜のほうが飽和脂肪より健康的ですもんね
    でもイメージで健康にはなれませんね。。

  2. これ、知ってます。『The Women’s Health Initiative』(『女性の健康構想』)と題した大規模な人体実験ですね。1993年から8年間に亘って続けられたものです。
    脂肪の摂取量については、摂取カロリーのうちの38%から20%に減らすように、とし、被験者の女性たちの体重の増減、コレステロールの数値、脳卒中、心臓発作、乳癌、直腸癌、その他の心血管疾患を発症するかどうかについても調べました。
    毎日の食事の摂取カロリーは360kcal分減らしました。被験者の女性たちは「少なく食べるように」「脂肪が少ないものを食べるように」「運動するように」という指示も与えられ、「食べる量を減らして運動量を増やす」を忠実にこなし続けたのです。

    で、その結果どうなったか?

    女性たちは(実験開始前と比べて)1人あたり平均で約1kg体重が減ったが、その腰回りは膨らんでしまいました。「女性たちの身体から減ったのは脂肪ではなく、筋肉である」ということです。さらに、この実験を担当した研究者たちは「脂肪の少ない食事は、心疾患、癌、その他の病気を予防できなかった」とも報告したのです。

    「食べる量を減らして運動量を増やす」「脂肪の摂取量を減らし、炭水化物の摂取を増やす」、その食生活を8年間続けたところ、被験者の女性たちはこのような無惨な結果を迎えたのです。運動・身体活動は、何の効果も無かった模様です。

    私は今日も、肉、黄身を含む全卵、(牛乳以外の)乳製品(バター、チーズ、生クリーム、サワークリーム)を食べたいだけ食べます。最近はアボカドも食事に加えるようにしました。とても体調が良い日々を迎えています。アボカドの脂肪にも、ほんのわずかではありますが飽和脂肪が含まれていますね。コレステロールは含まれていないのが少々残念ではありますが・・・。
    動物性脂肪(飽和脂肪)とコレステロールは人体の味方である、と確信しています。

  3. 清水先生、こんばんは。
    非常に重要な報告だと思います。バターなども安心して食べることができますね。その際、糖質は制限することが条件ですね。
    多価不飽和脂肪酸については、n-3、n-6に関わらず問題なのでしょうか?

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      多価不飽和脂肪酸については、この論文ではわかりません。

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