運動することは体重減少にほとんど役に立ちません。もちろん全くないかと言われれば、ほんの少しはあるでしょう。しかし、予想通りの体重減少を得られる人はごくわずかかもしれません。
今回の研究では一応健康的な過体重および肥満の人171人を3つのグループに分けました。1週間に8kcal/kg体重の運動をするグループ(8KKW)と1週間に20kcal/kg体重の運動をするグループ(20KKW)、および運動をしないコントロールです。6か月間頑張ってもらいました。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図はそれぞれのグループの個人個人の24週間後の体重変化量です。○はこれだけの運動をしたらこれだけエネルギー消費されるんだから、これくらいの体重が減少するだろうという予測値です。8KKWでは予測値1.9kg減少、20KKWでは4.3kg減少が予測されました。しかし、8KKWでは少しでも体重が減ったのは、57.6%であり、予測よりも少なかったのが76.3%でした。20KKWでは少しでも体重が減ったのは、76.5%であり、予測よりも少なかったのが90.2%でした。
変数 | コントロール | 8 KKW | 20 KKW |
---|---|---|---|
予測される減量(kg) | 0.0(-0.1、0.1) | −1.9(−2.1、−1.7) | −4.3(−4.5、−4.1) |
実際の体重変化(kg) | −0.2(−1.0、0.6) | −0.4(−1.2、0.4) | −1.6 (−2.4、−0.8) |
補償(kg) | 0.0(-0.5、0.5) | 1.5(0.9、2.2) | 2.7(2.0、3.5) |
エネルギー摂取量(kcal/d) | −2.3(−58.0、53.5) | 90.7(35.1、146.4) | 123.6(64.5、182.7) |
エネルギー摂取量の変化(%) | 0.0(-2.2、2.3) | 3.9(1.7、6.2) | 5.5(3.1、7.9) |
体脂肪率 | 0.1(-0.4、0.6) | −0.05(-0.6、0.5) | −0.8(−1.4、−0.3) |
体脂肪(kg) | 0.1(-0.6、0.8) | −0.2(-0.9、0.5) | −1.4(−2.1、−0.6) |
除脂肪体重(kg) | −0.4(−0.8、−0.1) | −0.3(−0.6、0.1) | −0.1(−0.5、0.2) |
上の表は24週間後の変化です。実際の体重変化は平均して、8KKWではー0.4kg、20KKWではー1.6kgでしかありませんでした。エネルギー摂取量のところを見てわかるように、運動する群では1日のエネルギー摂取量が増加し、8KKWではおよそ90kcal、20KKWではおよそ124kcal増加してしまっていました。つまり運動すればお腹が減り、食べる量が増えてしまうのです。ただ、20KKW群ではわずかに減った体重のほとんどが体脂肪の減少でした。
変数 | 非補償 | 補償 |
---|---|---|
体重(kg) | −2.69(−3.23、−2.16) | 0.78(-0.25、1.30) |
BMI | −0.73(−0.98、−0.47) | 0.46(0.20、0.72) |
体脂肪率 | −0.99(−1.47、−0.52) | 0.20(-0.27、0.67) |
脂肪量(kg) | −1.90(-2.50、-1.30) | 0.49(-0.10、1.07) |
除脂肪体重(kg) | −0.59(−0.93、−0.24) | 0.17(-0.17、0.51) |
エネルギー摂取量(kcal/d) | 60.4(0.8、120.1) | 149.3(91.1、207.6) |
予想よりも体重減少が少ないときは、代償機能であるweight compensation(体重補償)と呼ばれることが起きていると考えられます。その補償がある人と、ない人では大きな違いがありました。補償があった人では体重や体脂肪が逆に増加する傾向が認められました。そしてエネルギー摂取量の増加も多くなりました。
体重補償低い場合と比較して高い場合の参加者は、食欲の評価が高くなり、甘い食べ物への渇望を増やし、睡眠障害を増やし、体の痛みを悪化させました。つまり、エネルギー消費量を増やしても、それに勝る食欲やスイーツへの欲求が増加し、睡眠さえ悪化させたのです。
6か月間は研究に参加しているということで、強制力がそれなりにあったでしょう。しかし、その後は恐らく反動が来る人も多いでしょう。恐らくBMIが30前後の肥満の人であれば、ちょっとした運動でも、ちょっとした食生活への配慮によっても1kgや2kgの体重減少は得られます。1kgや2kgの減少では健康は得られないでしょう。
運動は減量のためではありません。健康のためです。糖質制限をすれば、これくらいの体重がある人では運動しなくても、6か月もかからずに10kg程度減少することは難しくありません。糖質制限はお腹いっぱいの食べられるので、空腹感も少なくなるでしょう。甘いものへの欲求も減少すると思われます。
肥満は糖質過剰症候群です。
運動は大切ですが糖質摂取の誘惑に惑わされると、
運動の健康効果が相殺、どころか糖質過剰摂取症候群の
危険をはらんでいるのですね。
運動のレベルが低すぎ
1時間程度の軽い散歩を毎日してます。時々速歩も交えるので運動量計で300kcalは超えます。この程度の量で2100kcal/週(運動時には心拍で計測)
これに週3のプラストレーニングをすると2000kcal/週あたり上乗せ。アスリートに比べれば少し運動する一般人です。
下記で比較対象研究ならまだ納得出来る。
70kg×20=1400kcal←レベル運動しない人
70kg×50=3500kcaj←運動するひと
BMI26読者さん、コメントありがとうございます。
BMI30前後の運動を普段しないような人の最初の運動はこんなもんじゃないといろんなところに過負荷がかかりそうですよね。
この研究の意図は、運動により予測されたような減量は得られないということです。運動強度を変えても同様でしょう。
フルマラソンを目標にトレーニングを1.5年した他の研究でもほとんど減量は得られていませんでした。
食事の変更+運動では減量できますが、運動だけではあまり効果が得られないと思います。
逆に運動せずに食事変更だけでも減量が得られます。
運動や食事を減量のために使うのはもったいない気がします。
春場所を見ながら、強くなるために稽古して食べて太る力士もいれば、減量のために食事と運動にはげむ人もいる。
ただ食事を美味しく頂くこと、身体を動かす喜び感じることを目的にしたい。
トマス・ホークス・タナー(Thomas Hawkes Tanner)というイングランドの医師は、1869年に出した『The Practice of Medicine』の中で、「肥満を治療するにあたっての『バカげた治療法』(“ridiculous” treatments)の1つとして、「毎日多くの時間を散歩と乗馬に費やす」を挙げています。
ケトン食の考案者でもあったラッセル・ワイルダー(Russell Wilder)医師は、1932年に肥満についての講演を行った際、以下のように断言しました。
「肥満患者は、ベッドの上で安静にしていることで、より早く体重を減らせる。一方で、激しい身体活動は減量の速度を低下させる」
「運動を続ければ続けるほどより多くの脂肪が消費されるはずであり、減量もそれに比例するはずだ、という患者の理屈は一見正しいように見えるが、体重計が何の進歩も示していないのを見て、患者は落胆する」
肥満、糖尿病、内分泌学の専門家でもあったワイルダー医師がこう断言するほどですから、「運動すれば肥満を解消できる」というのは稚拙で無知な考えである、ということになります。
アンセル・キースが実施した「ミネソタ飢餓実験」もそうでした。カロリー制限食と運動で体重を減らすと、被験者はずっと食べ物のことしか考えられなくなったのです。
アメリカで放送されている減量番組『The Biggest Loser』に出場した肥満体の人たちも、いったん体重が減っても、その減ったはずの体重がどんどん増えて、元に戻っているのです。
清水先生の言うとおり、運動は痩せるために行うものではありません。
体重を減らすには、炭水化物が多いものを避けるしかありません。
清水先生、こんにちは。
糖質制限を始める前、毎日、ビールを飲んでいたこともあり、体重が増えました。
その頃は糖質制限の情報もまだなかったです。
毎晩、6km程度のジョギングをしました。雨でない限り、仕事で遅くなって23時頃になっても、続けました。その結果、食事でコントロールしなくても体重は減少して、それを維持できていました。そういう経験もあり、運動である程度の体重コントロールはできると思っていました。
今では糖質制限をしていれば、運動の有無に関わらず、体重の維持はできる印象です。ただ、運動はストレッチ発散などのために続けています。
じょんさん、コメントありがとうございます。
運動でエネルギーの消費量が増加した分痩せるのであれば、体重維持というのも変ですよね?
体重が維持されるということは、運動での消費分を、無意識に食事で補っているのか、
安静時代謝が減少したか、どちらかですね。
もちろん、1~2kg程度の体重減少は運動でも得られるでしょう。しかし体重減少の9割は食事だと思います。