食用油の反復加熱によるトランス脂肪酸の増加

先日、テレビの番組で紹介されたあるお店で、数十年に渡って揚げ油を継ぎ足し、継ぎ足しで使っているから、うま味が油にしみ出て、揚げたものが非常に美味しい、という主旨のことをやっていました。その油は数十年も継ぎ足されて使っているので、真っ黒でした。

美味しいかどうかは別として、ものすごく不健康そうな油に見えて仕方がありませんでした。ただでさえサラダ油等は工業的な製造過程でヒドロキシノネナールという毒性の物質が増加している可能性が高いと思われます。人間が食べて良いレベルなのかどうか、成分を是非分析してほしいですね。

今回の研究では、食用油を反復して加熱したときの、そこに含まれるトランス脂肪酸を分析しています。トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングなどに含まれている、非常に健康に有害と考えられている脂質です。もちろん、天然に生成されるトランス脂肪酸は肉や乳製品に含まれています。しかし、恐らく天然由来は危険ではなく、工業的に作られた食用油のトランス脂肪酸の方は危険なのではないかと思います。(ここ参照)

実験の方法は次のようです。(図は原文より)

切りたてのジャガイモを180°Cで5分間揚げた後、ジャガイモのスライスを取り除き、油を70°Cまで冷ます。この手順を10回繰り返し、各新鮮な非加熱油状態から、加熱1回目、5回目、10回目の揚げた後に油を分析しています。

上の図はトランス脂肪酸の含有率です。横軸は様々な油で左からパーム油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、エクストラバージンオリーブオイルです。棒グラフは左から非加熱時、1回目、5回目、10回目です。どの油を見ても回数を重ねるごとにトランス脂肪酸がおよそ増加して、10回目には非加熱時の2~3倍になっています。ただ、大豆油は1回目増加した後ほとんど変化していません。

もちろん、10回50分の加熱でもトランス脂肪酸の割合は非常に少ないです。恐らく時間や温度、油の種類、油の製造過程などにより元のトランス脂肪酸の含有量は異なるでしょう。もしかしたら揚げる素材によっても違うのかもしれませんね。しかし、数日、月単位や年単位で加熱した場合にどれほどトランス脂肪酸が増加しているか考えると恐ろしくなります。

デパートの食品売り場で、お客さんに見えるようにして揚げ物を揚げている店もありますが、その揚げ油が真っ黒なのを見て、よくもお客さんに見せられるな、と思ったことがあります。外食やお惣菜には要注意でしょう。

 

「Effects of Repeated Heating on Fatty Acid Composition of Plant-Based Cooking Oils」

「植物ベースの食用油の脂肪酸組成に及ぼす反復加熱の影響」(原文はここ

2 thoughts on “食用油の反復加熱によるトランス脂肪酸の増加

  1. トランス脂肪酸って天然油脂にも含まれているのですね(しかも使用回数につれ増加)。
    有害物質には違いないので古い油には気を付けた方が良いのですね。

    油とは直接関係有りませんが、肉類の原産地表示、
    調理済食品では原料肉類の原産地表示義務はないそうです。

    余りに易い惣菜などは注意した方が良いようです。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      以前、それほど糖質が入っていないように見えるお惣菜を食べたときに、血糖値が急上昇したことがあります。
      お惣菜は何が入っているか全く表示がありません。値段の問題ではなく要注意です。

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