多くの高齢者は非常にたくさんの薬を飲んでいます。もちろん、医師が処方していて、患者も良かれと思い飲み続けています。その中で最も代表的な薬の一つが血圧を下げる降圧薬でしょう。
血圧が高いことは心血管疾患のリスクになりますが、高齢者にとってどこまでの血圧を許容すべきかはわかっていないのが現状でしょう。動脈硬化が進めば、それなりの血圧を維持しないと、体中に血液を運べないのではないかと思います。若い世代と同様の血圧を求める必要はないと思いますが、多くの高齢者は薬により年齢の割に非常に低い血圧にされています。
高齢者のフレイル(加齢に伴う予備能力低下のため,ストレスに対する回復力が低下し、体力や気力が弱まっている、要介護の前段階の状態)は非常に問題になっています。
今回の研究では、フレイル外来に受診した高齢者(年齢中央値77.0歳)78人を降圧薬中止群と継続群に分けました。
1年後、どちらのグループでも骨格筋指数に変化はありませんでした。要介護リスク把握のための、基本チェックリスト(KCL)の総合スコアは中止群と継続群の両方で有意に改善していました。KCLの体力に関するサブスコアは、中止群のみで改善が認められました。
簡易身体機能評価指標(SPPB)の合計スコアは、中止群のみ有意な改善が認められ、継続群は有意な変化がありませんでした。
ただし、転倒リスクスコアに関しては、継続群で有意に改善し、中止群では有意な変化がありませんでした。
パイロットスタディなのでサンプル数が少なく、これではっきりしたわけではありませんが、高齢者の降圧薬の中止は、身体能力にプラスの影響を与える可能性があります。
起立性低血圧は降圧薬を服用している高齢者の50~65%で認められるという報告もあります。(ここ参照)動脈硬化が進んだ高齢者では、脳や筋肉などへの血流が少なくなる可能性もあるでしょう。
高齢者の中には100を切る血圧で維持されている人もいます。トンデモ無いレベルの血圧です。医師の方にダラダラと薬を処方し、止めようという気が無いのでしょう。
以前の記事「処方薬が減ると高齢者の摂食量が増加」「多剤併用をやめよう」で書いたように、多剤併用をやめると摂食量が増加したり死亡率が半減する可能性もあります。
高齢者はもしかしたら、薬で弱らせられている可能性があります。病気に必要と思わされ薬を飲み、逆に弱くなっている人も多いでしょう。
多剤併用は止めるべきです。食事を改善することの方が重要です。
「Effects of discontinuation of antihypertensive drugs on frailty syndrome in outpatients: a 1-year prospectively designed retrospective chart-review pilot study」
「外来患者のフレイルに対する降圧薬の中止の効果:1年間の前向きにデザインされたレトロスペクティブチャートレビューパイロット研究」(原文はここ)
「多剤併用」はよく聞かれるようになり、
薬を減らそうと努めていらっしゃる医師も多い
と感じます。
食事に関しては「何でも食べられるものを」レベル
に留まっている印象。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
多剤併用、まだまだです。結局、高齢者は様々な科に受診し、その科ごとに薬が処方されます。
受診すればするほど薬は増えます。
全部が全部ては勿論ないでしょうが、
無職状態になると、患者という「役割」
が貴重なします。
デイサービス的な医療の無駄遣いも
多いのでは?
私の母親は今年89歳になります。
薬は4、5種類飲んでいます。(これでも少ないようなのですが・・)
母の知人は医師の処方でワーファリンを1日(1回?)6錠のんでるそうです(私には生きてるのが不思議としか)
「いつ死んでもいい」とよく言うのですが・・・、じゃあ、薬全部やめたら?(一気にではなく徐々に)といっても
止める気配はありません(笑)
伯母さんとか私の知る限りの高齢者はほぼ全員いうことがおなじです。
自分の健康を他人任せ(医者)、薬任せ(サプリを含めた)
添加物はまったく気にしないのに「○○は体にいい」とか・・
このような思考が私には全く理解できないので真剣に話をしないことにしています。
みまさん、コメントありがとうございます。
4~5種類なんて少ない方ですね。
今の医療は足し算しかしていません。引き算をすると、健康的になることも多いのに、
どんどん薬を足していきます。
黒い絵の具にどんな綺麗な色を混ぜても良い色は出ません。まずは黒い絵の具を洗い流さないと。
薬を足し算で出すことについて。以前、風邪を引いたわけでもないのに咳が止まらなくなり、医者に薬を処方してもらいました。それでも治らず、その医院へ行くと今度はさらに前のものにプラスして抗生物質や抗炎症剤が出てきました。山盛りです。その時はさすがに怖くなって色々考え、部屋の中を徹底的に掃除したところ、しばらく経って咳は治まりました。カビであった可能性があります。医療にかかることばかり考えていては治るものも治らないと痛感しました。薬を出したがらない医師にかかりたいですね。
nshinnchannさん、コメントありがとうございます。
効果が無ければ薬を変更すればいいのに、プラスするところが今の医療ですね。
この医師は細菌性の風邪を疑ったのでしょうか?
病院にかかった患者に薬を出さないと医師は仕事になりませんので、薬の処方は仕方がないところではあります。
私の母は92歳で認知症が進み、要介護3ですが、食事は起きて食卓で自分で食べられます。以前睡眠導入剤を含め、多種の薬を言われた通りに飲んでいた時は、ベッドから起き上がれず、食欲もなく、骸骨みたいになって、あとどれだけ持つか、という状態でした。薬を全てやめたら、認知症と足腰の衰え以外はすっかり良くなりました。父も、便秘、血圧、血糖値を下げる薬を飲まされ、さまざまな症状に苦しんでいましたが、それぞれの薬の副作用にその症状があることを知らせて説得し、実験的に減らしたら、便秘はなくなったと喜んでいます。
血圧に関しては、先生の記事なども見せて納得したようですが、やはり気になるようで、毎日血圧を測っています。
とにかく薬をやめたら嘘のように元気になった母のことは折に触れて話していますが、お医者信仰は根強いですね。
川瀬さん、コメントありがとうございます。
おっしゃる通りで、薬をできる限り止めると元気になる人が多いと思います。
時に眠剤は高齢者では次の日まで残り、活動性が落ちるでしょう。
そもそも高齢になれば睡眠時間は短縮しますし、昼寝でもすれば、夜の眠りに影響しますし、
日中の活動が少なければ体が疲れていないので、寝れないのは仕方がないのです。
多くの高齢者は薬漬けです。多くの医師は症状や検査数値が改善しさえすればそれでよく、患者が元気になるかどうかは関係ないのでしょう。
老化現象は薬ではどうにもならないのでは?