スタチンによる腱障害および再現性

以前の記事「スタチンは筋肉障害だけでなく腱障害のリスクを高める」で書いたように、スタチンは筋障害だけでなく、腱障害のリスクが高くなります。いくつかの研究で、それが相関関係ではないことを示しています。

1990年から2005年の間にフランスの31のファーマコビジランスセンターのネットワークで報告された腱障害について調べました。(この論文参照)スタチナ関連腱障害の可能性があるのは96人で、スタチン関連副作⽤報告は合計4,597件だったので、腱障害は2.09%でした。

スタチン療法の開始後、腱症状が発現するまでの期間の中央値は243⽇でした。59%は1年以内に発症していました。41.3%で両側性に同時に認めら、腱障害全体の34.4%は断裂でした。52.1%はアキレス腱の障害でした。

そして、スタチン療法の中断後、腱症状が改善するのに要した日数は中央値は23⽇でした。スタチンに起因する腱障害は36⼈の患者 (37.5%) で重篤であると考えられました。実際に17⼈の患者が⼊院し、さらに19 ⼈の患者は、スタチンによる腱断裂に関連した重⼤な機能的後遺症 (歩⾏困難、屈曲低下、痛みなど)を抱えていました。

さて、ここが重要ですが、スタチン関連腱障害の発症後、7⼈の患者でスタチン療法が再開されましたが、その結果、全員100%%腱症状が再発しました。

再現性があるということは非常に重要です。

興味深い症例報告をいくつか見てみましょう。

・47歳理学療法士。彼は過去27年間ロッククライミングに参加し、週に1回、定期的にクライミングウォールでトレーニングを⾏っていました。 12週間前からスタチンを服用し始めました。スリを捕まえた際(!)に両⾜のかかとに急激な痛みが始まり、「パチッ」という⾳が2回聞こえました。その後病院で両側のアキレスけん断裂が確認されました。(ここ参照)

・56歳のアフリカ系アメリカ人男性が「両膝の筋肉の断裂」を訴えて救急外来を訪れました。患者は、フットボールの試合の審判をしていて、走っているときに突然右膝が曲がる感覚を感じ、地面に倒れたとき、左膝にパキパキという音も感じました。両膝に激しい痛みを訴え、歩行が不可能になりました。

スタチンを約3年間服用していました。彼は、ケガの3週間前に薬を中止したと述べました。

超音波検査では両側大腿四頭筋腱自然断裂の診断となりました。患者の両側大腿四頭筋腱断裂の考えられる原因を調査したところ、疑わしい危険因子としてスタチンの経口投与のみが特定されました。(ここ参照)

・40歳の男性。子供の頃から競技会に参加していました。2014年9⽉にスタチンが処方されました。2015年3⽉、室内サッカーの試合に参加中に、患者は左アキレス腱の完全断裂を起こしました。以前、右アキレス腱の労作時および触診時に痛みを感じていました。

2015年12⽉スタチンを再開しました。7週間後、両⽅のアキレス腱、特に修復した側に、⽴ったり歩いたり
するときに重度の圧迫感と痛みを経験し、さらに2週間後、両側の腱の痛みがかなり悪化したため、スタチン治療を中⽌しました。

2016年7⽉に再度スタチンが推奨され、これまでとは別のスタチンを開始しました。5日後に両側のアキレス腱に緊張を経験し、スタチンを中止し、胆汁酸吸収阻害薬のコレスチポールが開始になりました。その後2か⽉間で、両側のアキレス腱、特に筋腱接合部が著しく肥厚しているように⾒え、以前に修復された左側の肥厚の度合いが⼤きくなりました 。(図は原文より)

現在、患者は⻑時間(20 分以上)⽴っていることができないという制限がありますが、歩⾏は最⼩限の不快感で実⾏できます。ランニングやより激しい活動は試みていません。

かわいそうに。特に3例目の人はなぜ何度もスタチンや他の薬でコレステロールを下げようとしてしまったのでしょうか?再現性があったのに、さらに違う薬も試してしまっています。コレステロール悪玉仮説の洗脳は半端ないですね。

LDLコレステロールは質が重要です。数値ばかりに囚われないようにしましょう。

「Statin-Associated Achilles Tendon Rupture and Reproducible Bilateral Tendinopathy on Repeated Exposure」

「スタチン関連アキレス腱断裂および反復曝露による再現性のある両側腱障害」(原文はここ

3 thoughts on “スタチンによる腱障害および再現性

  1. 多くの高血圧治療やコロナワクチンなども同じですが、明らかに不利益が利益を上回る医学的介入は問題ですね。この場合そもそも何が利益なのか分かりません‥ あぁ医療者側の利益と単なる満足感ですか。

  2. runningなどの運動を継続している
    身としては、
    怖いレポート。
    スタチンには近づかないようにします。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      運動をしている人にスタチンを処方するなら、必ずインフォームドコンセントが必要なレベルです。
      もしそうしないのであれば説明義務違反ですね。
      もちろん全員にインフォームドコンセントが必要な薬です。
      コレステロールは下がったけど糖尿病になりました、ではシャレになりません。

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