減量後のリバウンドでは筋肉が減り、脂肪が増える

安易な体重減少目的のダイエット法が蔓延っているために、ヨーヨーダイエットとも言われる体重サイクリング（体重の増減を繰り返すこと）が起きています。

それは医療の中でも起きています。医療では体重減少のため、いまだカロリー制限を推奨します。しかし、永遠にカロリー制限はできないため、いずれ体重は戻ります。最近流行りのGLP-1受容体作動薬は使用している限りは恐らく体重減少を維持できますが、止めればリバウンドします。

体重サイクリングが起きるとどうなるのでしょうか？

今回の研究では、2型糖尿病のリスクのある人を募集した「2型糖尿病からの脱却」試験のデータを用いました。平均年齢は63.6歳、BMIは32.0の622人です。2年間の間の体重変化を次の表のように分類しました。（図は原文より、表は原文より改変）

24カ月で体脂肪量と除脂肪体重はどうなったでしょう？下の図を見てみましょう。

図の一番上の体重減量の維持では、体脂肪量も除脂肪量も減少していました。体重維持、減量でもやはり、体脂肪量も除脂肪量も減少していました。さらに注目すべきは、体重減少、体重回復のグループです。体重が減少したのに、その後リバウンドした場合、ベースラインで94.28kgだったのが、12か月で−7.37kg減少し、24カ月までで5.62kg戻りました。除脂肪量はベースラインから12か月で−1.88kg減少し、24カ月で0.66kgしか戻っていません。一方体脂肪量は12カ月で−5.23kg減少したものが、24カ月で4.62kgも戻ってしまっています。

減量では通常だと体脂肪だけでなく除脂肪量、つまり筋肉も減ってしまうのですが、減量した後に体重が戻った時、その多くは脂肪が回復し、筋肉はほとんど戻らないのです。

「2型糖尿病からの脱却」試験は実際には歩行活動の増加がメインです。12か月の時点で411歩/日増加した程度です。飽和脂肪酸を減らす食事の指導もあるようですが、この程度の運動では筋肉減少は補えないようです。（こことここ参照）

タンパク質摂取をしっかりとして、運動し、筋肉を落とさないように体重減少を行えば、筋肉量はそれほど減少しないでしょう。糖質制限でもタンパク質摂取が非常に多いので、通常は筋肉は減少しません。しかし、安易に長期に持続できないエネルギー制限（カロリー制限）で体重を減らしてしまうと、その後やめた後にリバウンドしてしまい、減量する前よりももっと悪い状態になってしまいます。

減量目的の短期のダイエットは意味がないばかりか有害なのです。すべての安易なダイエットは食事を戻せば体重が戻ります。リバウンドというのはその食事法を止めて元の食事に戻せば当たり前に起きることなのです。薬も同様です。

GLP-1受容体作動薬による体重減少も多くの筋肉を失います。（「糖尿病においてGLP-1受容体作動薬やSGLT-2阻害薬で起こる筋肉量の減少」参照）

体重を減少させたいのであれば、糖質制限であり、そしてその食事は短期のものではなく、一生のものです。

「Impact of weight loss and weight gain trajectories on body composition in a population at high risk of type 2 diabetes: A prospective cohort analysis」

「2型糖尿病のリスクが高い集団における体重減少と体重増加の軌跡が体組成に及ぼす影響：前向きコホート分析」（原文はここ）