尿路結石の要因の一つで重要なのが、尿のpHの低下、つまり尿が酸性化することであると言われています。
では、糖質過剰摂取だと尿は酸性化するのでしょうか?糖質過剰症候群の代表である肥満との関連を見てみましょう。
今回の研究では、腎臓結石患者4,883人を対象に、尿のpHを変える可能性のある薬剤を避けながら、外来で24時間尿サンプルを採取しました。(図は原文より)
上の図は体重(横軸)と尿pH(縦軸)の関係です。体重が増加すると右肩下がりで尿のpHが下がっています。
上の図は年齢と尿中クレアチニンで調整したときの体重と尿pHの関連です。調整してもやはり体重が増加すると尿pHは低下しますね。
肥満はインスリン抵抗性が高くなります。インスリンの効きが悪くなると、アンモニウム生成や排泄の低下を起こすようです。アンモニアはアルカリ性なのでpHを高くします。
興味深いことに、高血糖による代償性の高インスリン血症では、尿のpHは逆に増加します。尿路結石の無い肥満ではない人が実験的に高インスリン血症になった場合、尿のpH、アンモニウム、およびクエン酸塩は全て増加しました。(ここ参照、下図はこの論文より)
上の図は尿中pH ( A )、尿中アンモニウム ( B )、尿中クエン酸塩 ( C )です。グラフの左側がベースラインで、右側が高インスリン血症時です。どれも増加しているのがわかります。インスリンの急激な上昇は、近位腎尿細管のアンモニア生成を刺激し、尿のpHを上昇させるようですが、私は現在のところなぜインスリンがアンモニア生成を増加させるのかはよく知りません。動物実験上ではインスリンは、近位尿細管におけるアンモニア合成を増加させるようです。
もちろん糖質過剰摂取でインスリン抵抗性を起こすのですが、高血糖や高インスリン血症が尿のpHを低下させているようではないようです。
尿酸塩 + H+ ↔ 尿酸という反応があるのですが、尿酸塩は尿酸の20倍水に溶解します。そしてこれはpHに依存して尿酸塩か尿酸がどちらが多くなるかが決まります。37度のpH5.5の1Lの水溶液に200mgの尿酸塩を入れると、100mgが尿酸になり、残り100mgは尿酸塩のままになります。対照的に、pH 6.5の1Lの水溶液に1200mgの尿酸塩を入れても、1100 mg が尿酸塩のままで残ります。そうすると尿酸排泄が多くなくても、pHが低ければ尿酸結晶ができてしまう可能性が高くなります。(ここ参照)
恐らく尿酸結石だけでなく、シュウ酸カルシウム結石にも尿酸が大きな影響を与えているのではないかと思われます。尿中クエン酸塩の排泄量が多いと、⼀般に結晶形成、特にシュウ酸カルシウムの結晶化が阻害されると言われています。上の図でインスリンが適切に効果があれば、pHは上昇し、尿中のアンモニウムもクエン酸塩も増加します。
インスリン抵抗性の改善が最も重要でしょう。
「Association of urinary pH with body weight in nephrolithiasis」
「腎臓結石における尿のpHと体重の関連性」(原文はここ)