コリンは神経伝達物質の合成、細胞膜シグナル伝達、脂質輸送などに必要な必須の栄養素です。卵は1個当たり約125mgのコリンを含んでいるので、重要な供給源です。卵はコレステロールが豊富なので、一部の人はまだ1日1個などと思っているかもしれません。
今回の研究では、1日3個の卵またはコリンサプリメントを4週間朝食に摂ってもらいました。1日あたり約400mgのコリン摂取です。対象はメタボリックシンドロームの35~70歳の男女23人です。(図は原文より、表は原文より改変)
パラメータ | |
---|---|
年齢(歳) | 55.2±8.9 |
性別 女性 (%) | 65 |
腹囲(cm) | 113.3±12.4 |
収縮期血圧 (mmHg) | 129.3±7.3 |
拡張期血圧 (mmHg) | 87.5±4.8 |
HDL コレステロール (mg/dL) | 47.7±17.4 |
中性脂肪 (mg/dL) | 129.5±57.6 |
血糖値 (mg/dL) | 102.6±10.5 |
上の表はベースラインの特徴です。
上の図はコリン摂取量です。予想通り、卵期間(左)とサプリメント期間(右)の両方で、コリン摂取量はベースラインから介入終了時まで大幅に増加しました。
パラメータ | 卵ベースライン | 卵介入後 | コリンサプリベースライン | コリンサプリ介入後 |
---|---|---|---|---|
体重(kg) 2 | 94.1±19.0 | 94.0±19.2 | 94.1±18.6 | 93.9±18.9 |
BMI (kg/m 2 ) | 32.4±4.7 | 32.3±4.8 | 32.4±4.6 | 32.3±4.7 |
腹囲(cm) | 112.3±12.0 | 112.9±11.9 | 112.7±12.1 | 112.1±12.3 |
収縮期血圧 (mmHg) | 127.6±8.2 | 127.8±11.7 | 128.2±7.6 | 129.5±7.7 |
拡張期血圧 (mmHg) | 85.6±16.3 | 85.4±7.5 | 81.8±16.8 | 85.9±7.0 |
CRP (mg/dL) | 0.48± 0.57 | 0.32± 0.31 | 0.36 ± 0.31 | 0.36 ± 0.34 |
ALT (U/L) | 27.3±13.2 | 27.3±13.3 | 26.8±12.9 | 24.8±10.2 |
AST (U/L) | 22.9±6.1 | 23.9±9.1 | 23.4±7.4 | 23.9±6.3 |
上の表は卵およびコリンサプリ前後の様々なパラメータです。ほとんどのパラメータは変化なしでしたが、炎症のCRPは卵介入で減少しました。
パラメータ | 卵ベースライン | 卵介入後 | コリンサプリベースライン | コリンサプリ介入後 |
---|---|---|---|---|
総コレステロール (mg/dL) | 177.7±27.3 | 185.9±25.5 | 177.9±19.1 | 185.3±24.8 |
LDLコレステロール(mg/dL) | 105.4±23.2 | 111.4±20.5 | 103.2±16.5 | 110.8±21.4 |
HDL コレステロール (mg/dL) | 48.5±16.9 | 50.2±16.7 | 48.4±14.3 | 48.5±14.8 |
中性脂肪 (mg/dL) | 122.0±46.9 | 122.4±46.9 | 137.3±56.6 | 129.3±42.2 |
血糖値 (mg/dL) | 100.6±10.8 | 101.9±10.9 | 99.8±12.5 | 101.8±11.3 |
LDL/HDL比 | 2.43±0.92 | 2.47±0.97 | 2.33±0.78 | 2.50±0.99 |
上の表も卵およびコリンサプリ前後の様々なパラメータです。どれも変化なしです。当然、LDLコレステロールの変化も有意差なしです。
上の図は血中のコリン濃度です。どちらもベースラインよりも増加しています。
パラメータ | ベースライン | 卵介入後 | コリンサプリ介入後 |
---|---|---|---|
IL-6 (pg/mL) 2 | 5.6± 0.9 | 4.6± 1.7 | 4.4± 1.3 |
TNF-α (pg/mL) | 5.1±1.1 | 5.9±1.6 | 5.9±1.5 |
MCP-1 (pg/mL) | 107.4±46.1 | 110.9±31.6 | 116.0±31.8 |
インスリン (pg/mL) | 152.4± 87.2 | 97.7± 66.5 | 111.3±100 |
インスリン抵抗性 (HOMA) | 5.43± 0.38 | 3.16± 0.26 | 4.01 ± 0.40 |
上の表は炎症マーカーとインスリンです。どちらの食事介入でも、IL-6 はベースラインから減少しました。TNF-αやMCP-1 に変化はありませんでした。インスリンは、卵でベースラインと比較して低くなりました。HOMA-IR(インスリン抵抗性)は、ベースラインと比較して卵で減少しました。
つまり、1日3個の卵は重要な栄養素のコリンが増加し、LDLコレステロールを増加させることなく、炎症やインスリンおよびインスリン抵抗性を低下させます。
以前の記事「卵が2型糖尿病のリスクを上げる?」で書いたように、質の低い食事アンケートを使用した研究では、卵が2型糖尿病のリスクを上げるとしているものもあります。しかし、食事介入で1日3個の卵を摂ると炎症もインスリン値もインスリン抵抗性も低下します。
たっぷりと卵を毎日摂取しましょう。
「Choline Intake as Supplement or as a Component of Eggs Increases Plasma Choline and Reduces Interleukin-6 without Modifying Plasma Cholesterol in Participants with Metabolic Syndrome」
「サプリメントまたは卵の成分としてコリンを摂取すると、メタボリックシンドロームの参加者の血漿コレステロールを変化させることなく血漿コリンを増加させ、インターロイキン6を減少させる」(原文はここ)
これはまた、単純でわかりやすい研究ですね。ありがとうございます。糖尿病患者みんなに読んでもらいたいですね。
三世 敏彦さん、コメントありがとうございます。
卵をまだまだ悪者扱いにする人がいますからね。