コレステロールは神経にとって非常に重要です。以前の記事「コレステロールの低下は2型糖尿病の末梢神経障害を悪化させる」で書いたように、コレステロールの低下は、糖尿病の末梢神経障害を助長、悪化させる可能性があります。そして、これコレステロール低下と言えば、スタチンですね。
ある研究では、スタチンで多発性神経障害が起きる可能性が大きく増加していました。(ここ参照)原因不明の多発神経障害はスタチンの使用により、全症例で3.7倍、確定症例で14.2倍起こる可能性が高くなったのです。現在スタチンを使っている場合、全症例で4.6、確定症例で16.1倍も起こる可能性が高くなりました。2年以上スタチンで治療された人では、確定した特発性多発神経障害はなんと26.4倍も起こる可能性が高くなったのです。
またある症例報告(ここ参照)では、5 年間1型糖尿病を患っている18歳の白人女性の症例について、数カ月にわたってむずむず脚を発症し、その後、感覚異常、夜間下痢、便失禁、早期満腹感、体重減少が起こりました。検査の結果、上腕と大腿部の針刺し感覚の喪失、それに伴う反射神経の消失と振動感覚の喪失、頻脈、起立性低血圧が判明しました。自己免疫性脱髄性多発ニューロパチーが疑われましたが、脱髄の基準は満たしていませんでした。様々な薬が投与されました。
この患者は、脂質レベルが非常に低いにもかかわらずアトルバスタチンを服用していたことが判明し、中止されました。1週間以内に彼女の症状は劇的に改善しました。 6 か月以内に、起立性低血圧、下痢、胃不全麻痺の症状は治まり、インスリン以外の薬はすべて中止されました。
完全に医原病ですね。
もう一つ見てみましょう。(ここ参照)1年以上スタチン治療を受けている50人の患者と、年齢と性別が一致し、スタチンを服用したことがない健康な対照50人が対象です。これらの人の多発性神経障害を、神経学的検査と筋電図検査 (ENMG) で評価しました。
そうしたところ、対照群では多発性神経障害は検出されませんでしたが、スタチン群ではなんと33人 (66%) で多発性神経障害が見られたのです。ロスバスタチン使用者の50%、アトルバスタチン使用者の18%で、1年以内に行われた神経学的検査で神経障害が観察され、アトルバスタチン群では、多発性神経障害の重症度は治療期間とともに増加しました。
末梢神経障害の症状は多彩です。手足のチクチク感、しびれ、痛み、震え、歩行時のふらつきなどの神経症状の評価は、スタチン治療を受ている人には必須かもしれません。しかし、スタチンで筋肉の障害が来ることは知っていても、神経障害が来ることを知らない(もしかしたら知っていても重要視していない?)医師もいるので、内科医にスタチンを止めるように私が言っても聞いてもらえない場合もあります。
スタチン誘発性神経障害を診断する鍵は、スタチンを中止し、改善の可能性を観察することです。
何か症状があれば、まずはスタチンを止めてみましょう。どうせ必要のない薬であるばかりか、人間に毒の薬ですから。スタチンはマッチポンプ薬なので、副作用のために薬がどんどん増える可能性があります。もちろん、最初からスタチンを飲まない方が良いですが。
内服していない状態での低LDLコレステロールもリスクとなりますでしょうか?
IgA腎症患者さん、コメントありがとうございます。
神経にとってコレステロールは重要ですから、単なる低LDLコレステロールで可能性が無いわけではないと思いますが、
スタチンの神経障害のメインはCoQ10の低下だと考えられます。
「スタチンの副作用は心臓にまで起こる」で書いたように、
スタチンを止めてCoQ10を補給すると、末梢神経障害が10%から2%に減少しています。
また、「スタチンの心毒性」の研究でも同様に末梢神経障害なし63%→85%、と大きく改善しています。
この研究でもスタチンによるCoQ10低下が末梢神経障害と関連していることを示唆しています。