LDLコレステロール値を下げるために、専門家はスタチンを投与したがります。しかし、それによって糖尿病発症リスクが増加することには無関心です。
今回の研究では、スタチンのランダム化比較試験から個々の参加者データのメタアナリシスを行いました。19件の試験ではスタチンとプラセボを比較し(参加者123,940人、糖尿病患者25,701人、追跡期間中央値4.3年)、4件の試験ではより強力なスタチン療法とそれほど強力でないスタチン療法を比較しました(参加者30,724人、糖尿病患者5,340人、追跡期間中央値4.9年)。(図は原文より)
上の図はスタチンの強度による新規糖尿病発症に対するスタチンとプラセボの効果を示しています。ベースラインで糖尿病のない参加者を含む、低強度または中強度スタチンとプラセボを比較した14 件の試験では、スタチンへの割り当てにより、新規の糖尿病発症が10%増加が認められました。
ベースラインで糖尿病のない参加者を含む、高強度スタチンとプラセボを比較した2つの試験では、スタチンへの割り当てにより、新規の糖尿病発症が36%増加しました。
上の図のAとBは低強度または中強度スタチンとプラセボ、CとDは高強度スタチンとプラセボ試験における、新規糖尿病発症の絶対過剰率です。オレンジの部分がスタチンによって過剰に糖尿病を発症したと考えられる部分です。AとCは血糖値により4つのグループに分け、BとDは新規糖尿病発症リスクスコアで4つに分けたものです。
当然ですが、ベースラインの血糖値が高いグループおよび新規糖尿病発症リスクスコアの高いグループの方が新規の糖尿病発症率は高く、スタチンはそのリスクの高いグループにとって、更なる発生率上昇を招いています。特に高強度のスタチンは大幅に発症率を増加させています。
ベースラインで糖尿病患者の場合、低強度または中強度のスタチンに割り当てられた人では、プラセボと比較して血糖値の悪化が10%増加、高強度スタチンでは、血糖値の悪化が24%増加でした。HbA1cの上昇は、低強度または中強度スタチンでは0.09%、高強度スタチンでは0.24%でした。
また、スタチンに割り当てられた結果、プラセボと比較して、体重が1年後に0.16 kg、最終測定時に0.30kg増加しました。
もちろん、この研究のもととなる研究は製薬会社がスポンサーの利益相反バリバリです。著者らはこれらの結果の直接的な臨床的影響を考慮すると、スタチンによる血糖値のわずかな変化から生じる糖尿病関連のリスクより、主要な心血管イベントに対するスタチンの利点の方が大幅に上回ると言っています。本当でしょうか?
以前の記事「スタチンはインスリン抵抗性を増加させる」で書いたように、スタチンはインスリン感受性を低下させ、インスリン抵抗性を増加させ、耐糖能を低下させると考えられます。また、「スタチンは糖尿病を進行させる」で書いたように、糖尿病を悪化させる可能性もあります。医療側は糖尿病の治療も加わり、利益になるのでしょうけど、患者側には有害です。
いずれにしても、他の病気を誘発する薬が有益な薬だとは思えません。
心血管疾患も糖尿病も糖質過剰症候群です。薬に頼らず、食事を変えましょう。
「Effects of statin therapy on diagnoses of new-onset diabetes and worsening glycaemia in large-scale randomised blinded statin trials: an individual participant data meta-analysis」
「大規模ランダム化盲検スタチン試験におけるスタチン療法の新規糖尿病発症および血糖値悪化の診断への影響:個々の参加者データのメタ分析」(原文はここ)
いつもブログを拝見して勉強しています。
私も現在ケトジェニック中で、体調はかなり良いのですが、いくつか疑問があります。
[1]ケトジェニック民族がレア
昔のイヌイット等、北方の一部の民族を除き、ケトジェニック民族はほぼ皆無であること。イヌイットも穀物が手に入り難いから仕方なくケトジェニックであったと見るのが自然です。ケトジェニックが健康的で生産性が高まる食生活であれば、世界の覇権を握り、食文化としてそれがスタンダードになるのではないでしょうか。
[2]ケトジェニックを実践している天才がレア
最近では大谷翔平選手などアスリートを中心にケトジェニックを実践する著名人がチラホラと出てきましたが、やはりレアです。ケトジェニックで集中力や体力がバク上がりするのならば、世界のトップアスリートや将棋・囲碁・チェスのトップ、学者たちはケトン人だらけになるはずですよね。
書いといてなんですが、上の素朴な疑問にはパッと思いつく反論がいくつかありますが、先生のお考えを伺いたいです。
佐藤さん、コメントありがとうございます。
ケトジェニック民族がレア
昔は情報が共有しづらく、少数民族は情報発信力が低いですし、彼らは自分たちのケトジェニックな食事が健康的な食事だとすら思っておらず、当たり前の食事だったでしょう。
そして穀物は比較的保存がきいて安定供給が見込めるので、栄養素というよりはお腹を満たす食糧としては、狩猟で食材を求めるよりは楽なのでしょう。
そして何より、糖質は依存性や中毒性が高く、それを食品や医療産業がうまく利用しているので、
糖質制限食が食文化としてスタンダードになることはあり得ません。
ケトジェニックを実践している天才がレア
天才というのが何を指しているのかわかりませんが、子供のころからの食習慣に疑問を持つことが少ないこと、
いわゆる専門家たちやマスコミなどの情報が糖質摂取を推奨していることで、なかなか食事を変えることが難しいのではないでしょうか?
そして、いくら天才といえど、糖質の依存性や中毒性には勝てないのかもしれません。
また、ケトジェニックでも体力は爆上がりしませんし、特に瞬発力は変化ないと思います。
世界のトップレベルの人たちは、恐らく食事とは別のところで、驚異的な集中力を持っているのだと思います。
「他の病気を誘発する薬が有益な薬だとは思えません。」
というわけで、ほとんどの薬は
その場凌ぎの対症療法のようです。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
もちろん、ほとんどの薬は対症療法です。