IgA腎症は、検尿で血尿やたんぱく尿を認め、腎臓の糸球体にIgAというタンパクが沈着する自己免疫疾患で、多くは慢性に経過します。
そのIgA腎症は新型コロナウイルスのワクチン接種後に非常に多く発生したり、悪化したりしています。以前に記事「新型コロナワクチンは腎障害をもたらす 他のワクチンもご注意を」で書いたように、日本腎臓学会は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて」という文書を出して、その中で、ある意味推奨という立場を示しながら、「実際にワクチンを接種するかどうかは主治医とご相談下さい」と言って、現場に丸投げして、学会としては責任を負わないような姿勢にも見えました。
しかし、一方で「COVID-19ワクチン接種と肉眼的血尿出現の関連性に関する調査研究」「COVID-19ワクチン接種とネフローゼ症候群新規発症・再発の関連性に関する調査研究」という調査をしています。本当であれば、調査だけでなく、ワクチン接種を止めることが先ではなかったのでしょうか?被害が広がらないように、それ以上の接種はまずは止めて、というべきではないでしょうか?
日本人はワクチンの実験台のようにされ、IgA腎症が起きていても接種は続行され、研究や論文のネタにされてしまいました。
日本からの論文だけでも少なくとも次のようなものがあります。(探せばもっとあるかもしれません)
・「An adolescent presenting with IgA nephropathy and persistent decreased kidney function after COVID-19 vaccination during follow-up for asymptomatic hematuria: a clinicopathological study」
「COVID-19ワクチン接種後に無症候性血尿の追跡調査中にIgA腎症と持続性腎機能低下を呈した青年:臨床病理学的研究」(原文はここ)
・「Adverse reactions and effects on renal function of COVID-19 vaccines in patients with IgA nephropathy」
「IgA腎症患者におけるCOVID-19ワクチンの副作用と腎機能への影響」(原文はここ)
・「Secondary immunoglobulin A nephropathy with gross hematuria leading to rapidly progressive glomerulonephritis following severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 vaccination: a case report」
「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2ワクチン接種後に肉眼的血尿を伴う二次性免疫グロブリンA腎症が急速進行性糸球体腎炎を発症した症例報告」(原文はここ)
・「Comparison of renal histopathology in three patients with gross hematuria after SARS-CoV-2 vaccination」
「SARS-CoV-2ワクチン接種後に肉眼的血尿を呈した3名の患者における腎臓組織病理学的比較」(原文はここ)
・「Rapidly progressive IgA nephropathy with membranoproliferative glomerulonephritis-like lesions in an elderly man following the third dose of an mRNA COVID-19 vaccine: a case report」
「高齢男性におけるmRNA COVID-19ワクチンの3回目の接種後に膜性増殖性糸球体腎炎様病変を伴う急速進行性IgA腎症を発症した症例報告」(原文はここ)
・「Association between COVID-19 vaccination and relapse of glomerulonephritis」
「COVID-19ワクチン接種と糸球体腎炎の再発との関連」(原文はここ)
・「Development of IgA vasculitis with severe glomerulonephritis after COVID-19 vaccination: a case report and literature review」
「COVID-19ワクチン接種後に重症糸球体腎炎を伴うIgA血管炎を発症した症例報告と文献レビュー」(原文はここ)
・「Sibling cases of gross hematuria and newly diagnosed IgA nephropathy following SARS-CoV-2 vaccination」
「SARS-CoV-2ワクチン接種後に肉眼的血尿と新たにIgA腎症と診断された兄弟の症例」(原文はここ)
・「IgA nephropathy with glomerular capillary IgA deposition following SARS-CoV-2 mRNA vaccination: a report of three cases」
「SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後に糸球体毛細血管IgA沈着を伴うIgA腎症:3症例の報告」(原文はここ)
・「Gross hematuria can be an impact of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 vaccination on immunoglobulin A nephropathy: a case report」
「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2ワクチン接種が免疫グロブリンA腎症に及ぼす影響として肉眼的血尿がみられる可能性がある:症例報告」(原文はここ)
・「IgA Nephropathy with Gross Hematuria Following COVID-19 mRNA Vaccination」
「COVID-19 mRNAワクチン接種後の肉眼的血尿を伴うIgA腎症」(原文はここ)
・「An adolescent girl diagnosed with IgA nephropathy following the first dose of the COVID-19 vaccine」
「COVID-19ワクチンの初回接種後にIgA腎症と診断された10代の少女」(原文はここ)
学会の存在意義は、患者側に利益があってこそであるはずでしょう。今の医療の世界は異常です。
さて今回は、新型コロナワクチン接種によるものとは限りませんが、IgA腎症と糖質過剰摂取の関連についての記事です。
私は、慢性腎臓病には以前の記事「慢性腎臓病に対する糖質制限」で書いたように、糖質制限が有効、必要だと考えていますが、このIgA腎症と糖質過剰摂取の関連はどうなのでしょうか?
まずはIgA腎症と糖質過剰症候群の代表、メタボリックシンドロームとの関連です。
IgA腎症患者698人(平均年齢35.83歳、男性51.86%)を対象とした研究を見てみましょう。(ここ参照、下の表もここより改変)メタボリックシンドロームの構成要素の数により、グループA(構成要素なし)、グループB(構成要素1つ)、グループC(構成要素2つ)、グループD(構成要素3つ)、グループE(構成要素4つ以上)の5つのグループに分けました。
下の表は、代謝異常のないグループAと比較した、その他のグループのエンドポイントイベントを経験するリスクです。
単変量 | 多変量 | |
---|---|---|
HR (95%CI) | HR (95%CI) | |
グループB(対グループA) | 2.475 (1.127–5.433) | |
グループC(対グループA) | 3.185 (1.467–6.915) | |
グループD(対グループA) | 4.093 (1.852–9.044) | |
グループE(対グループA) | 6.814 (2.914–15.934) | 4.030 (1.675–9.693) |
124人の患者がエンドポイントを経験し、そのうち12人が死亡、93人が複合腎エンドポイント(末期腎疾患またはクレアチニン倍増)、19人が心血管イベントを経験しました。代謝異常のないIgA腎症患者と比較して、メタボの構成要素の数が増加するにつれ、リスクが高くなり、4つ以上の代謝成分の組み合わせを持つ患者は、エンドポイントイベントを経験するリスクが4.030倍高くなりました。
つまり、糖質過剰症候群が進むにつれて、IgA腎症の予後が悪くなると考えられます。
別の研究を見てみましょう。(ここ参照。図もここより)IgA腎症と診断された慢性腎臓病(CKD)ステージ 1~4 の患者145 人 (男性 92 人、女性 53 人、年齢 54.7歳) を検査し、平均190 か月にわたりモニタリングしました。
主要複合エンドポイントは、全原因死亡と、脳卒中、心筋梗塞、血行再建術などのあらゆる心血管イベントでした。二次心血管エンドポイントは、脳卒中、心筋梗塞、あらゆる血行再建術などのあらゆる心血管イベントでした。二次腎エンドポイントは、末期腎疾患への到達と腎代替療法の開始でした。
上の図は、左から主要複合エンドポイント、心血管エンドポイント、腎エンドポイントで青い線がメタボリックシンドロームなし、赤い線がメタボ(+)です。明らかにメタボを伴うIgA腎症患者と伴わないIgA腎症患者を比較したところ、主要複合エンドポイント、心血管エンドポイント、腎臓エンドポイントに有意差がありました。
次はインスリン抵抗性の指標、TyGインデックスとの関連を見てみましょう。(ここ参照。図もここより)IgA腎症と診断された1210人(平均年齢32歳)が対象です。腎機能アウトカムの複合エンドポイントは、eGFRのベースライン値からの50%以上の低下、末期腎不全(ESKD)、腎移植および/または死亡とし、ESKDは、eGFRが15 mL/分/1.73 m 2以下または維持腎代替療法と定義しました。
上の図はTyG > 8.72で分けたときの腎生存率です。TyGインデックスが高い群では複合エンドポイントの発生リスクが高くなりました。高いTyGインデックスはIgA腎症の複合エンドポイントへの進行リスクが2.654倍になりました。
インスリン抵抗性がIgA腎症の悪化と関連していると考えられます。
もう一つ、インスリン抵抗性との関連を見てみましょう。(ここ参照。図もここより)IgA腎症の174人の患者が対象で、腎生検でIgA腎症と診断されてから11年後と16年後に検査を行いました。進行性IgA腎症は、シスタチンCが正常範囲を超え、最初の受診と 2 回目の受診の間に20%を超える上昇を示す場合、または腎移植または透析の開始と定義されました。
2回目の診察時に患者の19.5%でIgA腎症が進行していました。
上の図は初回診察時のインスリンレベルとHOMA-IRはIgA腎症の進行との関連です。Aはインスリン値、BはHOMA-IRです。左側が安定したIgA腎症、右側が進行性IgA腎症です。インスリンレベルとHOMA-IRはどちらもIgA腎症の進行と有意な関連を示しました。
IgA腎症の正確な病因は依然として不明です。IgA腎症では内皮細胞の損失が発生し、それがIgA腎症の進行に寄与し、血管内皮障害は糸球体障害の主要な原因であると考えられています。
IgA腎症患者において、血管内皮細胞障害の特異的マーカーである血漿フォン・ヴィレブランド因子(vWF)および血管収縮性エンドセリン-1(ET-1)の上昇が認められます。さらに、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニストである可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)は、妊娠高血圧症候群における内皮機能障害のマーカーとして示唆されています。多くの研究で、過剰なsFlt-1は慢性腎臓病(CKD)患者の内皮機能障害と関連していることが実証されています。以前の研究では、IgA腎症患者においてsFlt-1値が上昇しており、タンパク尿、高血圧、vWF値とも相関していることが報告されています。(ここ参照)
そして、高血糖はsFlt-1、ET-1、vWFをすべて増加させます。(こことこことこことこことここなど参照)糖質過剰摂取は酸化ストレスを増やし、血管内皮障害を起こします。
つまり、糖質過剰摂取により、高血糖やインスリン抵抗性が増加し、IgA腎症の予後を悪化させる可能性が十分にあります。そして、私は拙著でも書いたように、自己免疫疾患も糖質過剰摂取で起きていると考えています。そうであるならば、IgA腎症の食事は糖質制限でしょう。
いつも勉強になります。子供と同い年の子(当時高校3年)がワクチン3回後に血尿が出たと話していたそうで因果関係は分かりませんがなんだか心配です。
糖質制限に関して、私は漫画家ですが商業漫画ではなかなか踏み込んだ描き方が許されませんから出版社を通さずに自分で配信することにいたしました。多くの方が関心を持つきっかけになればなと思います。これからも勉強させて下さい。
よっしーさん、コメントありがとうございます。
ワクチン接種と何らかの症状が結びついていない人もいるのでしょうね。
出版社はいろいろなしがらみがあるでしょうからね。
今後も活躍を楽しみにしております。