以前の記事「内服薬の併用による腎臓へのトリプルパンチの大ダメージ「トリプルワーミー」」で書いたように、レニン-アンジオテンシン系阻害薬、利尿薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の3つからからなる薬物療法に関連する急性腎障害(AKI)を「トリプルワーミー」と呼んでいるのです。どれも腎臓に影響をもたらす薬ですが、この3つを併用すると、腎臓が大きなダメージを受ける可能性があります。
さらに、NSAIDsの副作用として有名である、上部消化管出血を予防するためにプロトンポンプ阻害薬(PPI)が処方されることも多いでしょう。副作用予防でなくても、逆流性食道炎などで長期にPPIが処方されていることも珍しくありません。
そして、トリプルワーミーの3剤にPPIを加えると、さらに腎臓にダメージを与え、クアドラプル(quadruple)ワーミーとなる可能性があります。
PPIは、急性腎障害、急性間質性腎炎、慢性腎臓病の発症、腎臓病の進行、腎不全、全死亡リスクおよび慢性腎臓病による死亡リスクの上昇など、多くの腎臓の有害事象と関連しています。
PPIの有害性に関する研究を色々見ていきましょう。
急性腎障害を発症した93,335人、慢性腎臓病84,600人の患者を対象にしたある研究(ここ参照)では、PPI曝露は急性腎障害発症の可能性が4.35倍、慢性腎臓病発症の可能性が1.20倍でした。
PPIを開始した66歳以上を対象にした研究(ここ参照)では、PPIを開始した290,592人と、同数の対照群を比較すると、PPI投与群の方が急性腎障害発症率は2.52倍、急性間質性腎炎は3.00倍でした。
また、7件の観察研究のメタアナリシス(ここ参照)では、PPI使用患者における急性腎障害のリスクは1.61倍でした。
さらに、11件のPPI使用の有無およびH2ブロッカーとを比較した研究のメタアナリシス(ここ参照)では、PPI使用者は非使用者と比較して、慢性腎臓病発症リスクが1.26倍、PPI使用者はH2ブロッカー使用者と比較して慢性腎臓病発症リスクが1.34倍でした。
他の研究も見てみましょう。(ここ参照、表はここより改変)PPIの使用を新たに開始した、腎疾患の病歴のない患者572,661人を対象に、急性間質性腎炎(腎組織学的検査で確定した46人、記録のみで可能性あり26人)と初めて診断された72人と、生年および性別が一致する対照とを比較した研究です。PPIの使用については、使用終了後 31~90日を最近の使用、終了後91日以上を過去の使用としています。
下の表のように、PPIの過去の使用と比較すると、現在の使用は、確定したケースでは、急性間質性腎炎の可能性が5.16倍でした。
事例 | コントロール | マッチングオッズ比(95% CI) | |
---|---|---|---|
確定したケース | 46人 | n=460 | |
現在の使用 | 35 | 207 | 5.16 (2.21–12.05) |
最近の使用 | 4 | 56 | 2.38 (0.65–8.67) |
過去の使用 | 7 | 197 | 1.0 |
すべてのケース | n=72 | n=719 | |
現在の使用 | 55 | 332 | 4.82 (2.43–9.58) |
最近の使用 | 5 | 89 | 1.72 (0.57–5.22) |
過去の使用 | 12 | 298 | 1.0 |
すべてのケースを含めてもPPIの現在使用h過去の使用と比較して、急性間質性腎炎の可能性が4.82倍でした。
10万人年あたりの発生率(95%信頼区間) | |
---|---|
研究コホート全体 | |
現在の使用 | 11.98 (9.11–15.47) |
最近の使用 | 4.28 (1.57–9.49) |
過去の使用 | 1.68 (0.91–2.86) |
年齢(歳)別の現在の使用 | |
15~49歳 | 2.22 (0.56–6.03) |
50~59歳 | 8.89 (4.33–16.31) |
60~69歳 | 19.08 (11.83–29.25) |
70~79歳 | 20.41 (11.86–32.92) |
80歳以上 | 22.23 (10.84–40.79) |
年齢別にみると、60歳以上の現在使用者の絶対リスクは、若い現在使用者よりもかなり高く、例えば、60歳以上のPPI使用者10万人あたりでは年間19.08人が急性間質性腎炎を発症したのに対し、15~49歳のPPI使用者では年間2.22人でした。
PPIと併用薬による急性腎障害の可能性についての研究(ここ参照)では、腎疾患の既往歴のない患者219,082人(平均年齢は45歳)が対象でした。PPIの過去の使用と比較して、PPIを現在使用している場合の急性腎障害の可能性は2.79倍でした。現在のPPI使用者におけるNSAIDs、抗生物質のセファロスポリン、フルオロキノロンの併用による急性腎障害の可能性はNSAIDsで3.12倍、セファロスポリン1.88倍、フルオロキノロン2.35倍でした。
いずれにしても、PPIによる腎障害の研究は非常に多く存在します。PPIがどのように腎臓に有害な作用を起こすのかの完全なメカニズムはわかっていません。しかし、いくつか考えられているメカニズムとして、長期のPPIの使用は内皮機能を損ない、内皮老化を促進し、その結果として酸化ストレス、内皮機能不全、血管老化が増加し、腎臓病の進行の病因に寄与する可能性があることが実証されています。さらに、PPIの使用によるマグネシウム欠乏は、内皮細胞機能不全、炎症、酸化ストレスを通じて腎臓病の進行リスクを高める可能性があります。(ここ参照)また、尿細管間質におけるPPIまたはその代謝物の蓄積が細胞性免疫応答を誘発し、炎症性浸潤および急性腎障害、間質線維化、または尿細管萎縮を引き起こし、これらが慢性腎臓病および末期腎不全につながる可能性があるという仮説が立てられています。
簡単に言えば、PPIは腎毒性があるということでしょう。このPPIがトリプルワーミーの3つの薬の一つのNSAIDsと頻繁に併用されることは、非常に問題です。
死なないように患者を弱らせるためには、腎臓にダメージを与えることは、最も効果的なのかもしれません。重要臓器で特に代謝を担っている肝臓と腎臓では、肝臓は非常に再生能力が高く、腎臓は再生能力がありません。腎臓を少しずつ弱らせれば、様々な健康の問題が出てくるでしょう。腎保護効果という名のもとに新たな薬を処方することもできますし、腎臓の機能が非常に低下すれば、透析にも移行できます。患者を医療に依存させるためには、腎臓は非常に良い標的なのでしょう。
現代医療では、専門性が重視されるあまり、いくつもの症状があれば、複数の診療科に受診することになります。そして、それぞれの科が好きなように自分の処方を出します。他の科の薬との併用の問題なんて意識していない医師もいるでしょう。どの薬の併用がどんな問題を起こすか、というのはほとんどわかっていないのが現状です。
自分の腎臓や命を守るために必要なことは、正しい食事をして、できる限り薬を飲まないことです。ダメージを受けないうちに、できる限り自分でできることをすべきです。高血圧も逆流性食道炎もすべて糖質過剰摂取の食事が根本原因です。痛みにも糖質過剰摂取が大きく関係しています。
「自分の腎臓や命を守るために必要なことは、正しい食事をして、できる限り薬を飲まないことです。ダメージを受けないうちに、できる限り自分でできることをすべきです。高血圧も逆流性食道炎もすべて糖質過剰摂取の食事が根本原因です。痛みにも糖質過剰摂取が大きく関係しています。」
必要十分の健康法、だと思います。
それでも病気になったり、加齢による
衰えは防げないかもしれませんが、
それはそれで、まず自分でできることを
続けたい、と感じます