多くの研究は相対リスクを示して、過大評価をしてしまいます。実際には目くそ鼻くそレベルの効果しかないのに、大きな効果があるように見せ、それを真に受けてしまう人も多いでしょう。
LDLコレステロールが悪玉で、コレステロールが少なければ少ないほど良いのであれば、スタチンや他の薬でガッツリとコレステロールを下げれば、さぞかし多くの人が助かるでしょう。
今回の研究では、強化脂質低下療法と標準的な薬物療法の違いを分析しています。
対象となった11件の試験において、介入群はそれぞれ異なる強化脂質低下療法を受けてました。4件の試験ではより強力または高用量のスタチン、1件の試験ではエゼチミブ、6件の試験ではPCSK9阻害薬が投与されました。(表は原文より改変)
成果 | 標準的な脂質低下療法による1000人あたりの想定リスク | 1000人あたりの強化脂質低下療法によるリスク(95% CI) | 時間の経過に伴うリスク比(HR; 95% CI) | イベント発生者の割合の減少 (95% CI) | イベントまでの平均遅延日数(95%CI) |
---|---|---|---|---|---|
2年間の追跡調査 | |||||
MACE | 104 | 91(86から95) | 0.87 (0.82から0.91) | 1.1(0.7~1.5) | 4.1(2.6から5.6) |
心筋梗塞 | 55 | 48(44から51) | 0.86(0.80から0.93) | 0.7(0.4から0.9) | 2.5(1.6~3.3) |
脳卒中 | 14 | 12(11~13) | 0.83 (0.76から0.90) | 0.2(0.1~0.3) | 0.9(0.5~1.2) |
全死亡率 | 42 | 40(38~42) | 0.97(0.92から1.02) | 0.2 (-0.1 ~ 0.4) | 0.6(−0.4~1.5) |
5年間の追跡調査 | |||||
MACE | 236 | 208(198から218) | 0.87 (0.82から0.91) | 2.4(1.5~3.3) | 23.5(14.9から32.0) |
心筋梗塞 | 132 | 115(107から123) | 0.86(0.80から0.93) | 1.5(1.0から2.1) | 14.6(9.3から20.0) |
脳卒中 | 36 | 30(28~32) | 0.83 (0.76から0.90) | 0.6(0.4から0.8) | 5.3(3.3から7.4) |
全死亡率 | 102 | 99(95から104) | 0.97(0.92から1.02) | 0.4(-0.2~1.0) | 3.6 (-2.1から9.2) |
上の表のように、2年間の強化脂質低下療法の経過中に標準的な脂質低下療法と比較して、主要心血管イベント(MACE)を発症した患者数が1.1%少なく、MACEが起きるまでの期間が4.1日遅れました。相対リスクを見ると13%の低下です。相対的には絶対的なリスクより10倍以上過大評価されます。
心筋梗塞では0.7%少なく、2.5日遅れ、、脳卒中では0.2%少なく、0.9日遅れ、全原因死亡は0.2%少なく、0.6日遅れるだけでした。私には誤差範囲にしか見えません。死亡する割合は1000人中2人しか違いがないのですから。
平均5年間の強化脂質低下療法では、標準的な脂質低下療法と比較してMACEを発症した患者が2.4%減少し、MACE発症までの期間は23.5日遅延しました。心筋梗塞では1.5%少なく、14.6日遅れ、脳卒中では0.6%少なく、5.3日遅れ、全原因死亡では0.4%少なく、3.6日遅れでした。まさに目くそ鼻くそですね。
強力な脂質低下療法を行っても、死亡数の減少や生存期間の延長にはつながらず、心筋梗塞および脳卒中への影響は無視できるほど小さいのです。このことをちゃんと患者に伝えれば、このような治療を選択する患者はかなり少なくなるでしょう。
まあ、もともとLDLコレステロールが原因ではないですからね。
強力な脂質低下療法を行えば、その分副作用リスクも大きくなります。医療側がそれが狙いなのかもしれません。
「Time Gained to Cardiovascular Disease by Intensive Lipid-Lowering Therapy: Results of Individual Placebo-Controlled Trials and Pooled Effects」
「強化脂質低下療法による心血管疾患発症までの期間の短縮:プラセボ対照試験と統合効果の結果」(原文はここ)