プラーク内出血によるアテローム性動脈硬化性プラークの進行と破裂 その3

プラークの成長や不安定性にはプラーク内出血が大きく関係していることを「その1」では書きました。今回の研究では、頸動脈のプラークの脆弱性のマーカーとしてのプラーク内出血と頸動脈の狭窄の程度との関連を調べています。

今回の研究では、頸動脈内膜剥離術という手術を施行した患者を対象としたものですが、手術の前に脳卒中、一過性脳虚血発作などの同側脳血管虚血イベントを経験した人137人が対象です。137人のうち、狭窄の程度が軽度(<50%)が32人、中等度(50%~69%)が47人、重度(≥70%)58人です。いずれの患者にも心房細動はありませんし、他の脳卒中機序を有する患者はいません。

ある検査では、プラーク内出血は軽度狭窄群で12件、中等度群で4件、重度群では3件でした。

手術に至った最後の脳血管イベント発生時に、高強度スタチン管理がされていたのは、軽度狭窄群では13人(59.0%)、中等度7人(22.5%)、重度8人(26.6%)でした。軽度群は、中等度群や重度群と比較して、一般的な医療の中では良く行われる、より最適な薬物療法を受けていたにも関わらず、イベントが起きてしまいました。スタチンは予防にならないのでしょうね。

137人の患者から107個の頸動脈プラークの組織が得られました。(IPH=プラーク内出血)(図は原文より、表は原文より改変)

染色した頸動脈プラーク 軽度(<50%)狭窄(n=19) 中等度(50%~69%)狭窄(n=34) 重度(70%以上)狭窄(n=54)
組織面積、µm 2 17.8 (12.1–26.7) 19.8 (11.3–29.8) 21.4 (13.2–33.5)
IPH面積、µm 2 1.9 (1.3–8.3) 4.7 (0.0–2.2) 5.4 (0.0–2.6)
IPHの割合(IPH面積/組織面積、%) 15.7 (7.8–26.7) 3.9 (0.0–9.2) 2.5 (0.0–11.2)

注目すべきは、上の表の頸動脈のプラーク中のプラーク内出血の割合です。軽度群では15.7%、中等度群では3.9%、重度群では、2.5%でした。つまり、上の表及び下の図に示すように、狭窄の程度が軽い方ほど、プラーク内出血の程度が高いことになります。

上の図のAは3つの群の頸動脈のプラーク中のプラーク内出血の割合です。Bは横軸が頸動脈の狭窄率、縦軸がプラーク中のプラーク内出血の割合です。個人差は大きいので、一概には言えないですが、プラーク内出血の割合は狭窄が進むにつれて低下します。

さて、一番問題だと思うのは次です。手術に至った最後の脳血管イベント発生時に、80人(58.3%)の患者が、関連する心血管疾患または再発性脳血管イベントのため、臨床医の指示に基づきアスピリン治療を受けていました。軽度狭窄群では、26人(81.2%)、中等度群では31人(65.9%)、重度群で23人(39.6%)でした。

上の図は、左がアスピリンなし、右がアスピリンあり。アスピリンを服用していた患者は、アスピリンを服用していなかった患者と比較して、同側頸動脈プラーク内のプラーク内出血範囲の割合が、有意差はありませんが高くなり、アスピリン内服群で7.7%、アスピリンなし群で1.8%でした。上の図のように、しかし、プラーク内のプラーク内出血範囲の割合の中央値で患者をグループ分けしたところ、アスピリンを服用していた患者は、プラーク内出血の割合の中央値を超える傾向が強く、アスピリン群で37人(61.6%)、アスピリンなし群で23人(38.3%)が中央値を超えました。

これをアスピリンが効果を示していないどころか、プラークな出血を助長している可能性があるように見えます。予防的な薬物治療で予防できないのか、もしかしたら、予防的な薬物治療によりイベントが起きているのか?恐ろしい。

他の研究では、頸動脈のもっと軽度の狭窄でも、プラーク内出血が起きていることを示しています。この研究では、症状がある225人と無症状の224人、合計449人の頸動脈を調べています。

プラーク内出血は合計71本(15.8 %) の動脈 で確認され、狭窄が30%未満という軽度の狭窄を伴う症状のある動脈の8.7% にプラーク内出血がみられました。軽度の狭窄を伴う無症候性の動脈では1.7% でした。頸動脈のプラーク内出血は、30%未満の狭窄を有する動脈において、同側の脳虚血イベントの可能性を5.68倍にしました。

さらに、別の研究(ここ参照)で、脆弱プラークを、画像におけるプラーク内出血、潰瘍、脂質壊死核、および炎症の存在と定義したときに、軽度から中等度 (<70%) の頸動脈狭窄の症状のある患者と高度 (≥70%) の 頸動脈狭窄で症状のある患者と無症状の患者両方とを比較した場合を見てみましょう。

軽度から中等度の狭窄で症状のある群における脆弱性特徴を呈するプラークがある可能性は、無症候性の高度狭窄患者と比較して5.85倍、症候性の高度狭窄患者と比較して7.52倍でした。さらに、症状のある70%未満の狭窄群では、無症状の70%以上の群と比較して、プラーク内出血の可能性は4.91倍、潰瘍性プラークは8.93倍、症状のある70%以上の群と比較しても、プラーク内出血は 4.14倍、潰瘍性プラークは5.16倍でした。狭窄の程度が低い方が、プラークは脆弱ですね。

プラーク内出血が起きた際に、破裂まで行かず、何も血管を詰まらせるものが飛ばなければ、脳血管イベントは起きませんが、プラークは成長するでしょう。狭窄が増加すると、相対的にプラーク内出血の割合が減少しているのは、そのためかもしれません。逆に、軽度狭窄でイベントが起きるということは、プラーク内出血で破裂してしまったのでしょう。アスピリンは抗血小板作用があるので、血栓はできにくくしますが、出血は助長されます。プラーク内出血も同様に、アスピリンで出血が多くなってしまう可能性は高いでしょう。プラーク破裂で血管が詰まるとき、決して血栓が最初にできるわけではありません。様々な成分が飛び、そこに血小板などが集まって血栓化するだけです。

軽度の血管の狭窄の人ほど、脅されて、予防的だと考えて、アスピリンを内服している可能性も高いでしょう。でも、それによりプラークが成長してしまったり、破裂してしまったりすることもあるのかもしれません。根本的な原因に対処しない現代の医学は、一見すると患者の健康のために見えてしまいますが、人間の体のメカニズムが無視され、それによる弊害が起きてしまいます。

心血管疾患は糖質過剰症候群です。

「Carotid Plaques From Symptomatic Patients With Mild Stenosis Is Associated With Intraplaque Hemorrhage」

「軽度狭窄を伴う症状のある患者の頸動脈プラークはプラーク内出血と関連している」(原文はここ

「Carotid Intraplaque Hemorrhage and Stenosis: At What Stage of Plaque Progression Does Intraplaque Hemorrhage Occur, and When is It Most Likely to Be Associated with Symptoms?」

「頸動脈プラーク内出血および狭窄:プラークの進行のどの段階でプラーク内出血が発生するのでしょうか。また、どのような場合に症状が現れる可能性が最も高いのでしょうか」(原文はここ

2 thoughts on “プラーク内出血によるアテローム性動脈硬化性プラークの進行と破裂 その3

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      数値も医療にとって都合の良いことしか指摘されません。
      HDLコレステロールが低くても、ほとんどの人がそれを知りません

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