プラーク内出血によるアテローム性動脈硬化性プラークの進行と破裂 その1

以前の記事「冠動脈造影は将来の心筋梗塞を予測しない」で書いたように、冠動脈造影で確認し、その後閉塞した動脈は、66%の患者において、最初の血管造影で50%未満の狭窄でしかなく、97%において、狭窄は70%未満でした。全体の3分の2は以前の狭窄が軽度の冠動脈が詰まっており、さらに30%の梗塞の人では梗塞後にすでに冠動脈の閉塞が解除されており、血栓が無くなって、心筋梗塞の原因となる部位を明確には特定できない状態でした。つまり、血管造影的に重篤な冠動脈狭窄は、最初の血管造影ではその後の梗塞部位の動脈にまれにしか存在しません。アテローム性動脈硬化症がだんだんと進展して狭窄が重症化して、そこに血栓が詰まるというよりは、狭窄が進んでもいない状態で、急に冠動脈が閉塞することの方が多いようです。(もちろん、心筋梗塞直前の数週間という単位では、急速に狭窄が進行していることもあるでしょうけど)

だから、心筋梗塞の原因が、内皮の傷害があり、LDLコレステロールが動脈壁に入り込み内膜に蓄積し、マクロファージによって泡沫細胞が増加してプラークを形成して、プラークがどんどん大きくなり隆起し、アテローム性動脈硬化症が進展し、最終的には破裂してそこに血栓ができて動脈が閉塞する、というように考え自体がウソだということです。

プラークはあったとしても、恐らくはその中の状態が不安定で、プラークが大きくならなくても、破裂して血管が詰まると私は考えています。そして、もちろん血中のLDLコレステロールが高いから血管壁にコレステロールが溜まり、プラークができるというのもウソです。

プラーク発生とその成長や不安定化の原因は、出血でしょう。血管壁に出血を起こすことが、その後のプラークに発展し、プラーク内出血がプラークを成長させたり不安定化させて、そのうち破裂してしまうと思われます。

「LDLコレステロールは本当に動脈の血管内腔から血管内皮を通って、アテローム性動脈硬化を起こすのか?」シリーズの「その9」「その10」「その11」などで書いたように、プラークに認められるコレステロールの主な源は赤血球です。血管の内腔からLDLコレステロールが高いことにより、血管内に入り込むわけではありません。プラークの中身は、「その8」でも書いたように、LDLよりもかなり大きく最低でも4倍、最高で20倍もの大きさのカイロミクロンが存在するのですから、そんな大きな「穴」が開いていたら大変なことです。

血管の壁を構成する内膜の構造は、たった一層の細胞と、その下にあるほとんど細胞の存在しない組織でできているわけではなく、何十層にもなる細胞が重なっていて、脂肪は最初に内膜の浅い層に蓄積するわけではなく、深い層に蓄積していきます。

血管の内膜というのは全く血管がありません。栄養や酸素はもちろん必要ですから、どこからか栄養と酸素をもらわなければなりません。血管の内皮ではすぐ近くに血液が十分に流れているので、そこから酸素や栄養が拡散してくると考えられます。しみ込んできた栄養や酸素は内膜が薄いときは問題は起こりませんが、内膜が厚くなると段々と深い層には十分な栄養や酸素が行きわたりにくくなります。組織は栄養や酸素がなければ死んでしまうので、どこからか供給しないとなりません。そうすると、「その3」で書いたように、血管新生というものが起こるのです。血管の外膜に栄養を与える栄養血管が、ぶ厚くなって酸素欠乏になっている内膜の方へ、どんどん血管を伸ばしてきます。

その5」で書いたように、アポリポタンパク質のapoCⅢが高いLDLは、低apoCⅢを有するLDLよりも内膜内のビグリカンへのより高い結合を示すそうです。さらに、apoCⅢ含量が高いほど、細胞外動脈プロテオグリカンのバイグリカンに結合するリポタンパク質の能力がより大きくなります。LDL粒子サイズはapoCⅢ含有量と逆相関します。つまり、より小さい、より密度の高いLDL粒子(sdLDL)は、1粒子あたりより多くの量のapoCⅢを持っていることになります。sdLDLは小さいから血管内腔から血管壁の中に入り込むわけではなく、このようなメカニズムがあって、血管の外膜から伸びた新生血管から入り込むと思われます。

プラーク内出血や赤血球の話から逸れてしまいましたが、内膜の新生した血管は外膜から発生しますが、外膜からの微小血管の急速な増殖、動脈硬化性環境への曝露は、無秩序な分岐と未熟な内皮を特徴とする異常な血管発達を刺激し、「漏れやすい」不完全な内層を形成します。この未熟な血管網は、赤血球からの遊離コレステロールを供給するプラーク内出血の重要な発生源となります。

プラーク内出血を起こすと、赤血球の過剰蓄積によって引き起こされるプラークの急速な変化が起こり、安定病変から不安定病変への移行を促進する可能性があります。赤血球がプラーク内に漏れると、さらにプラークの壊死核の拡大を引き起こします。狭窄率が50%未満のプラークでは、約25%に壊死核が認められ、狭窄の重症度が増すにつれてその有病率は増加します。狭窄率が70%を超えると、約75%のプラークに壊死核が認められます。(ここ参照)(図は原文より)

上の図は、プラーク破裂(左)、プラーク侵食(びらん)(中)、または重度の冠動脈疾患(右)で死亡した患者の他の冠動脈病変部位におけるプラーク内出血の頻度を示しています。興味深いことに、プラーク破裂により死亡した患者では、プラーク内出血を伴う部位の数が最も多くなっていました。プラーク破裂により死亡した患者の冠動脈血管では、プラーク侵食や断面積の 75% を超える狭窄を伴う安定病変と比較して、プラーク出血がより頻繁に発生することが示唆されています。

プラーク内出血は、出血自体が炎症刺激として機能するでしょう。そうするとさらに不安定化します。プラーク内出血があった人は、対照群と比較して、18 か月後に新たなプラーク出血を起こす可能性がはるかに高くなります。(ここ参照)

このように見ていくと、アテローム性動脈硬化症、それに伴う冠動脈疾患や脳血管疾患に、LDLコレステロール増加が関係していないことがわかるでしょう。

プラークにはLDLもあるかもしれません。しかしカイロミクロンもあるし、VLDLもあります。コレステロールもありますが、コレステロールを運んでくるのはLDLだけではなく、赤血球が大きな役割を果たします。赤血球がプラークのコレステロールを増加させるならば、コレステロールが悪いと思っている医師は赤血球を減らすべきではないでしょうか?医療の仮説は都合よくできていて、見たくないものは見ません。医療や製薬会社の利益になる部分だけを強調します。

「Atherosclerotic plaque progression and vulnerability to rupture: angiogenesis as a source of intraplaque hemorrhage」

「アテローム性動脈硬化性プラークの進行と破裂の脆弱性:プラーク内出血の原因としての血管新生」(原文はここ

2 thoughts on “プラーク内出血によるアテローム性動脈硬化性プラークの進行と破裂 その1

  1. 再度『透析を止めた日』(堀川惠子)を読んでの感想です:
    腎移植で透析9年間中断できたそうですが、その間の(記載内容だけでも)食生活無頓着ぶりには
    恐ろしくなってしまいました(色々事情はあるとは思いますが、透析の反動かほぼ飲み放題/食べ放題)。
    それが原因とは限りませんが9年経過後、透析再開となりました。

    医療者にとって、食事は二の次三の次なのでしょうね、
    先生も常々おっしゃっているように、食事は健康維持の最優先事項と、私も思います。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      透析は医療側にはありがたいですからね。
      医療は腎臓を攻撃する仕掛けがいっぱいです。

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