高血圧でアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を飲んでも死亡率は低下しない

多くの人はなぜ薬を飲むのでしょうか?現在ある病気を少しでも改善したくて飲んでいる人もいるでしょう。また、検査などの結果で、何らかの数値が高く、それを放置すると将来大きな病気になる可能性があるので、予防的に数値を下げようと薬を飲んでいる人もいるでしょう。しかし、究極的には死なないように薬を飲んでいるとも言えます。

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)は、高血圧の重要な治療標的です。高血圧はRAASの過剰な活性化と密接に関連しており、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)などのRAAS阻害薬は、高血圧の治療に日常的に使用されています。特に現在はARBが頻繁に処方されています。

ある研究(ここ参照)では、ARBは全原因死亡率も、心血管疾患死亡率もどちらも低下させられませんでした。37件のランダム化臨床試験、147,020人のメタアナリシスです。

高血圧の治療薬で血圧が低下すれば、医療の仮説が正しければ、全原因死亡も心血管死亡も低下するはずですが、対照群と比較して、全原因死亡リスクは1.00倍、心血管死亡リスクは0.99倍で、効果を示せませんでした。

ACE阻害薬とARBは臨床的に類似しているように見えるかもしれませんが、2つのRAAS阻害薬のク間には臨床的に違いがあります。ある研究(ここ参照、図もここより)を見てみましょう。心血管疾患罹患率および死亡率に関する20件の研究のメタアナリシスです。

ACE阻害薬試験の患者76,615人とARB試験の患者82,383人が参加しました。合計の158,998人のうち約半数がRAAS阻害薬治療群(71,401人)、残りの半数が対照群(87,597人)です。対照群はプラセボの場合と他の高血圧薬の場合があります。

上の図は、RAAS阻害薬による、全原因死亡(左)と心血管死亡(右)のリスク低下です。全原因死亡は何とか5%低下となりましたが、ちょっと微妙。心血管死亡リスクも7%低下です。それぞれの研究を見ればわかるのですが、それぞれの結果はほとんどが死亡リスクに関しては有意差が出ていません。

上の図は全原因死亡リスクに関して、ACE阻害薬(左)とARB(右)を分けた図です。ACE阻害薬は全原因死亡リスクが0.90倍になりましたが、ARBは0.99倍とまたもや全く効果を示せていません。

同様に、心血管疾患による死亡リスクもACE阻害薬では0.88倍でしたが、ARBでは0.96倍で対照群と比較して有意差が示せませんでした。

さらに、ARB使用であることが懸念されています。ARBは心筋梗塞を高める可能性があります。医療の世界では、いつものように、「ARB-心筋梗塞パラドックス」なんて呼びます。(ここ参照)ARBが心筋梗塞を増加させる結果となった研究はいくつかありますが、一番はこれでしょうか?(ここ参照、図もここより)

ARBのバルサルタンとカルシウム拮抗薬のアムロジピンとの比較の研究です。

上の図は、バルサルタンとアムロジピンの心筋梗塞発生率です。ARBのバルサルタンの方が、心筋梗塞が19%増加しています。

ARBを何とか死守したい医療業界は、その後、ARBは心筋梗塞発生率を高めない、というエビデンスを必死に出してきました。まあ、データはどうにでも、お手の物でしょう。

かなり以前に行われたパイロットスタディ(ここ参照)では、深刻な結果を招きました。ARBのカンデサルタン単独、カンデサルタンとACE阻害薬のエナラプリルの併用、またはエナラプリル単独を43週間にわたって比較する試験です。

その結果ARBのカンデサルタン単独投与群の死亡率が6.1%、カンデサルタン+エナラプリル投与群の死亡率が8.7%、エナラプリル単独投与群の死亡率が3.7%となり、うっ血性心不全による入院は、カンデサルタン単独投与群では10.7%、カンデサルタン+エナラプリル投与群では7.2%、エナラプリル単独投与群では3.7%となってしまったのです。死亡率+うっ血性心不全による入院率は、カンデサルタン単独投与群では14.6%、カンデサルタン+エナラプリル投与群では15.1%、エナラプリル単独投与群では6.4%であった。ARBはダメダメですね。これを受けて、この試験は予定よりも6週間も早く中止されました。

さらに高齢の心不全患者を対象とした研究(ここ参照、図もここより)で、ARBのロサルタンとACE阻害薬のカプトプリルの比較では、下の図のように、有意ではありませんが、ARBのロサルタンの方が全原因死亡リスクが13%多く、突然死リスクも30%多く、突然死または蘇生心停止は25%増加しました。

いずれにしても、最終的な目的である死亡率を低下させることができないのに、ARBを飲む必要ってあるのでしょうか?ARBの看過できないリスク(「降圧薬のアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)によるがんのリスク増加」「高血圧の薬アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は本当に必要な薬か? その1」「その2」「一部の高血圧の薬は腎臓を病的な状態に変化させる その1」「その2」「高血圧の薬でがんリスクが増加する その1 腎臓がん」「内服薬の併用による腎臓へのトリプルパンチの大ダメージ「トリプルワーミー」」など参照)を考えると、ここにも医療の闇があると思われます。

「RAAS inhibition and mortality in hypertension」

「RAAS阻害と高血圧における死亡率」(原文はここ

One thought on “高血圧でアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を飲んでも死亡率は低下しない

  1. 「多くの人はなぜ薬を飲むのでしょうか?現在ある病気を少しでも改善したくて飲んでいる人もいるでしょう。また、検査などの結果で、何らかの数値が高く、それを放置すると将来大きな病気になる可能性があるので、予防的に数値を下げようと薬を飲んでいる人もいるでしょう。しかし、究極的には死なないように薬を飲んでいるとも言えます。」

    〇〇教会と類似のビジネスモデルに見えてしまいます。

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