降圧薬で血圧を下げるリスク

血圧は下げれば良いのでしょうか?以前の記事「日本も高血圧の目標値を下げる?」で書いたように、日本の高血圧の基準もどんどん下がってきています。高血圧の基準を下げれば下げるほど誰が得をするのか…?

以前の記事「高齢者の血圧を下げると死亡率が上がる」で書いたように、明らかに高齢者では血圧を下げる有害性を認めています。また「軽度の高血圧に薬は必要か? 降圧薬の利益と害」で示したように、軽度の高血圧では利益はなく、有害性が上回る可能性があります。

今回の日本の研究では、40〜79歳の脳卒中、冠状動脈疾患、がん、および腎臓病の27,728人の分析を行いました。血圧は次のように分類しています。

至適血圧(120/80mmHg未満)、正常血圧(120~129/80~84mmHg)、正常高値(130~139/85~89mmHg)、I度高血圧(140~159/90~99mmHg)、II~III度高血圧(160/100mmHg以上)の5つの群です。(図は筑波大学のプレスリリースより)

上の図は循環器疾患での死亡を血圧のそれぞれの群に応じて比較したものです。きれいに血圧の上昇に従い、リスクも増加しています。収縮期血圧140未満では有意差は認められませんが、140以上の血圧では有意にリスクが高くなります。

上の図は血圧の薬を飲んでいる人と飲んでいない人を分けて比較しています。薬を飲んでいない人では、先ほどと同じように血圧が上昇すると、リスクも上昇となっています。血圧が上昇するということは、動脈硬化が起きているのですから、当然でしょう。

しかし、薬を飲んでいる人を見ると状況は全く違います。U字型を描いています。何と120/80mmHg未満の至適血圧が最もリスクが高くなるのです。正常血圧(120~129/80~84mmHg)でもリスクは高いのです。それらは、II~III度高血圧(160/100mmHg以上)さえも上回っているのです。つまり、血圧を下げると言っても、130未満に下げると、逆に死亡率が上がる可能性があるのです。

常に統計的に有意というわけではないですが、同様のパターンが脳卒中および冠状動脈疾患についても観察されたようです。

しかし、これに対して、このようなことを考察しています。

「このことは、主に降圧薬によって血圧を下げることが原因で循環器疾患の死亡リスクが高くなることを示すものではなく、もともとリスクの高い人や合併症などを有する人に対して、血圧を強力に下げる処置がなされていたり、合併症が原因で血圧が下がっていることで、そのもともとのリスク要因や合併症を原因とする循環器疾患死亡リスクが高くなる可能性を示しているものと解釈されます。したがって、降圧薬を服用し、血圧が129/84mmHg以下に下がっている人は、併存するリスク要因や合併症の管理に注意する必要があるといえます。」

しかし、このデータは多変量調整しているのです。BMIや年齢、コレステロール値、糖尿病の既往、喫煙や飲酒などを調整しているのです。ある程度合併症によるリスクは調整されているはずです。また、血圧を強力に下げる処置が問題なら、「強力」に下げなければいいだけの話です。誰が強力に下げているのでしょうか?医師です。

血圧が高くなるのは動脈硬化が進んでいるからです。また、血圧を上げる原因は、以前の記事「高血圧の真犯人は塩分ではなく、脂肪?ではなく糖質だと思いますが…」で書いたように、糖質、特に果糖です。そこに対処せずに、薬だけで血圧を下げれば元々のリスクは変わらず、血圧を下げることにより臓器の血流は低下してしまいます。つまり、血圧の高い人に降圧薬だけで対処すれば当然死亡のリスクは上がるのです。

原因に対処せずに血圧を薬で下げるくらいなら、下げない方が良いのかもしれません。しかし、最も重要なことは原因に対処することです。つまり、糖質を制限することです。

「Blood pressure levels and risk of cardiovascular disease mortality among Japanese men and women: the Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk (JACC Study)」

「日本人男性と女性の血圧レベルと心血管疾患死亡率のリスク:癌リスク評価のための日本共同コホート研究(JACC研究)」(原文はここ