心臓の冠動脈における局所のインスリン抵抗性

2型糖尿病は心血管疾患のリスクを増加させると考えられます。それは高血糖と高インスリン血症が関連していると思われます。

高血糖になるとプロテインキナーゼC(PKC)というものが活性化し、それにより血管弛緩性
物質である一酸化窒素(NO) 介した血管弛緩が抑制されたり血管平滑筋の血管収縮が亢進するなど、心血管イベントを起こすと考えられます。

では、積極的に高血糖をインスリンなどで抑え込むと心血管イベントを減らすことができるのか、と言えばそうではありません。以前の研究では集中的に高血糖を抑え込んだ結果、低血糖や10kgを超える体重増加が増え、心血管イベントは減らず、死亡率が増加してしまいました。(ここ参照)

今回の研究では、冠動脈バイパス手術(CABG)を受けている冠動脈アテローム性動脈硬化症の674人の患者の血管を用いて研究が行われました。

その結果、全身性インスリン抵抗性または糖尿病とは無関係に、進行したアテローム性動脈硬化症の人では血管のインスリン抵抗性が存在し、血糖値とは無関係に、インスリンで治療した場合に血管の酸化ストレスおよび内皮機能障害の増加をもたらすことを示していました。

そして、このことはDPP4阻害剤によって逆転し、インスリンがその抗酸化作用と血管保護作用を発揮できるようなりました。

DPP4阻害薬の内容は、製薬会社の絡みがある研究なので置いておいて、インスリン注射による高血糖の治療は血管にとっては非常に危険である可能性があります。(「インスリンとスルホニルウレアは心血管イベントを増加させる」参照)

全身のインスリン抵抗性が無くても、局所のインスリン抵抗性は存在することがあるでしょう。局所のインスリン抵抗性は通常の検査で測定することはできないので、それほどの高血糖を示していない場合や全身のインスリン抵抗性が認められない場合に安心してしまうかもしれません。しかし、糖質を過剰に摂取していると、体のどこかの臓器、組織では局所のインスリン抵抗性が進み、その臓器や組織にとって重要なインスリンのシグナル伝達が障害され、何らかの疾患が発生する可能性があると考えられます。

人間の体は高血糖や高インスリン血症に適応した作りにはなっていません。まずは糖質制限が基本です。

糖質過剰症候群

「Insulin-induced vascular redox dysregulation in human atherosclerosis is ameliorated by dipeptidyl peptidase 4 inhibition」

「ヒトアテローム性動脈硬化症におけるインスリン誘発性血管酸化還元調節不全は、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害によって改善される」(原文はここ

2 thoughts on “心臓の冠動脈における局所のインスリン抵抗性

  1. 2型糖尿病の谷津嘉章さん64歳(アマレス/プロレスで活躍)の自伝、合併症症による足切断の写真が掲載されていました。35歳で糖尿病診断。治療は服薬・カロリー制限・運動療法。プロレスラーだった谷津さんは「痩せるわけにはいかない」と食事療法不可、服薬も忘れるのが常だったそうです。(ご担当の医師には大変失礼ですが、真面目に服薬しなかったお陰で、最近まで酷い合併症もなく過ごせていたのかも)。
    現在、糖質制限も取り組まれていますが「意思が弱いから」白米を玄米にする程度のようです。
    糖尿病(糖質)の怖さ、情報の大切さなど、考えさせられました。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      筋肉を付ければ良いので、糖質制限でたっぷりタンパク質を摂取していれば良かったかもしれないですね。
      お米が絶対の日本の食事に翻弄されたのでしょうかね?
      プロレスや相撲のように激しい運動をしていても、食事が間違っていれば糖尿病になってしまいます。

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