早い時間の夕食とその後の空腹時間が長いと脂肪が分解しやすい

ホルモン感受性リパーゼ(HSL)は、脂肪組織に貯蔵してある中性脂肪を分解する酵素です。インスリンは脂肪を蓄積する作用があり、このHSLは脂肪分解する作用があり、ちょうど反対の作用を示します。インスリンがちょっと分泌されるとHSLの働きは抑制されます。このHSLの活性にも日内変動があるようです。

この研究では、腹腔鏡胃バイパスを受けた18人の重度肥満の人のHSLを調べています。(図は原文より)

上の図はHSLの活性を示しています。横軸は時間です。わかりにくいので横軸の上側の目盛りを見てみましょう。午前0時つまり夜中の12時が最もHSL活性が高く、お昼12時くらいが最低になっています。午前0時は通常睡眠状態であり、さらに絶食状態です。その状態に合わせて、HSLの活性を増加させて、脂肪を分解して十分なエネルギーを供給していると考えられます。

上の2つの図は夜間の絶食時間とHSLの変動のリズムの振幅の大きさを示しています。夜間絶食時間が11.20時間を超える人では、HSL活性リズムの振幅がほぼ2倍(1.91倍)でした。絶食時間が長いほどHSLリズム振幅は大きくなりました。

上の図は夕食の時間とHSLの振幅の関係です。夕食を摂る時間が遅いほどHSLの振幅は小さくなりました。習慣的な早い夕食(21:52以前)は遅い食事より1.60倍高い振幅でした。

どうやらHSL活性の毎日のリズムは脂肪組織に固有であるようであり、視交叉上核にある体内時計の作用に依存していないようです。

つまり、夜遅い食事や短い空腹時間だと、夜間のHSL活性の自然な増加を妨げてしまいます。

以前の記事「遅い夕食の影響」でも書いたように、人間のさまざまなホルモンなどは毎日時間で変動する日内変動のリズムがあります。それは人間が進化の過程で獲得してきたメカニズムです。それに合わせて生活することが最も人間の体にとって優しいことだと思います。何を食べるか?どのようなタイミングで食べるか?などによってもこのようなメカニズムが狂ってしまう可能性があります。

なかなか痩せない人は、夕食は早めに、その後の空腹時間は長めにしてみると効果が上がるかもしれませんね。

 

「Circadian Rhythms in Hormone-Sensitive Lipase in Human Adipose Tissue: Relationship to Meal Timing and Fasting Duration」

「ヒトの脂肪組織のホルモン感受性リパーゼの概日リズム:食事のタイミングと絶食期間との関係」(原文はここ

4 thoughts on “早い時間の夕食とその後の空腹時間が長いと脂肪が分解しやすい

  1. 糖質制限の目的が「血糖値上昇を抑えて血管の炎症や中性脂肪の蓄積を避けて循環器系疾患やガンなどを予防すること」であるならば、糖質制限以外にも血糖値上昇を抑える術はあると考えて試行錯誤、自らの体で人体実験を重ねました。
    夕食は家内の特製スープを前菜で空腹に流し込むと、その後の糖質や酒を大量に摂取しても血糖値の上昇が130未満で収まります。
    私はこれで良いのではないかと思っております。
    但し、朝食と昼食は特製スープが摂れないため、糖質を摂ると血糖値は160まで上昇するため糖質制限食をしています。

    1. 習志野人さん、コメントありがとうございます。

      興味深い結果ありがとうございます。
      糖質制限の一つの目的は確かに血糖値上昇を抑えることですが、もう一つはインスリン分泌を減らすことでもあります。
      食べる順の違いで、血糖値の上昇は抑えられても、インスリン分泌量は抑えられない可能性があります。
      食べる順で確かに血糖値の上昇は抑えられるかもしれないが…
      食べる順番ダイエットの効果は?
      などを参考にしてみてください。

  2. >食べる順の違いで、血糖値の上昇は抑えられても、
    >インスリン分泌量は抑えられない可能性があります。

    横からすみません。
    インスリンの分泌量は血糖値が上昇するから増えるのではないでしょうか?

    ところで、知人の医師が言うには動脈硬化の原因は血圧やコレステロールよりも
    血糖値の影響が非常に大きいとのことでした。
    やはり血糖コントロールは大切ですね。
    動脈硬化の指標のひとつにCAVI、ABIというものがあると健康番組でやってました。
    これは信頼できる指標なのでしょうか?
    一度、測定してみたいものです。
    シミズ様は測定したことありますか?

    1. 伊達さん、コメントありがとうございます。

      コメントでご紹介した記事を参照にしてください。
      インスリンは血糖値が上昇するから増えるというよりも、血糖値の上昇を抑えるために増えるのかもしれません。
      インスリンの感受性も高く、糖質摂取量もそれほどではなければ、インスリン分泌量も大きく増加しない可能性はありますが、
      糖質量が多ければ、食べる順で吸収が遅くなるだけで、インスリンもダラダラと分泌が続くと思われます。

      CAVI、ABIについての信頼度は私にはわかりませんし、測定もしていませんので、コメントできません。

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