タンパク質さえ十分に摂っていれば筋肉の減少を防げるのでしょうか?
今回の研究では健康な年配の男性を対象として、脚を5日間固定して動かないようにして、タンパク質摂取量を増やすことにより筋肉はどうなるかを調べています。
平均年齢69歳、ギプスによって5日間の片脚の膝を固定しました。コントロールはそのままの食事、タンパク質増量群は20.7gのタンパク質、9.3gの炭水化物、3.0gの脂質を含むドリンクを1日2回飲みました。つまり1日約40gタンパク質を多く摂ることになります。(図は原文より)
上の図はAが大腿四頭筋の断面積で、Bは筋力です。左がコントロール群、右がタンパク質増量群です。白いバーが固定前、黒いバーが5日間の固定後です。
固定により、大腿四頭筋の断面積がコントロールで1.5%、タンパク質群で2.0%減少し、筋力はコントロールが8.3%、タンパク質群が9.3%減少しましたが、それぞれグループ間の違いはありません。
上の図は筋肉の様々な遺伝子発現を見ています。細かいことは省略しますが、ミオスタチン、ミオジェニン、MuRF1のmRNA発現は、両方のグループで固定化後に増加しました。MAFBxのmRNA発現はタンパク質群のみで増加しました。
ミオスタチンは、筋量を抑制する遺伝子として知られています。MAFBxおよびMuRF1の遺伝子発現の増加は筋肉タンパク質分解のマーカーです。
タンパク質群ではMAFBxとMuRF1の遺伝子発現がより増加していたのは、習慣的な食事タンパク質摂取量を超えて食事タンパク質摂取量を増やすと、全体的なタンパク質代謝回転率が強く刺激される可能性があるからかもしれません。しかし、固定して動かさない筋肉はタンパク質代謝回転率が増加しても、筋肉が維持されず、逆に分解の方向だけ働くのかもしれません。
進化の過程で食事から得る栄養はかなり貴重なものだったと考えられます。人間の体は有限の栄養素を適材適所に配分し、機能維持をしていると思われます。つまり、使わないものはどんどん切り捨てていくのです。不動化した筋肉は必要のないものとみなされ、どんどん分解され、他の部位に割り当てられるのでしょう。
以前の記事「とにかく可能な限り動きましょう」でも書いたように、入院などで安静にするだけで、筋肉は減少します。そして「活動性の低下によって失ったものは簡単には戻らない」で書いたように、一度失った筋肉は簡単には戻りません。
ちょっと疲れた、ちょっと痛いというだけで、一日中横になっていてはどんどん筋肉が低下し、さらに疲れやすく、痛くなりやすくなり、悪循環に陥る可能性があります。
そうなる前に、十分なタンパク質摂取、糖質制限、そして運動をしましょう。どれかだけではダメでしょう。
「Skeletal Muscle Disuse Atrophy Is Not Attenuated by Dietary Protein Supplementation in Healthy Older Men」
「骨格筋廃用性萎縮は健康な年配の男性の食事性タンパク質補給によって減弱されない」(原文はここ)
清水先生、おはようございます。
筋肉量や筋力を増やすことについては、例えばアスリートが禁止されている薬物を使用した場合でも、やはり運動することが必須なのでしょうか?例えが悪いですが。
高齢者で問題と聞く、サルコペニアも、タンパク質をしっかり摂取し、かつうんどうすること、この両輪が重要なのですね。
じょんさん、コメントありがとうございます。
恐らく薬物を使っても、動かなければ筋肉は増えないと思います。
もし増えるのであれば、高齢者にアスリートであれば禁止の薬物を使った治療が行われる可能性もあるはずです。
一番は動くことで、どこに筋肉が必要なのかという信号を送ることでしょう。
「糖質制限+カロリー制限」の実験中(糖質制限下でのカロリー制限は禁忌ですがあえて実験)です。
2か月の実験の結果、摂取カロリーは1800→1500kcalで300kcalほど減っていますが、蛋白質摂取量は落とさないように注意し(少し落ちてますが)、113→106gです。
結果、体重は落ちていますが、筋肉量はほぼ、維持されています。
特に運動はしていません(通勤などで8000歩程度)が、蛋白質を十分に摂取(2g/kg)していれば、日常の活動負荷に必要な筋肉量が維持されているのだと思います。
ただし、週末になると通勤による歩行がなくなる分運動が減り、筋肉量も明らかに落ちます。運動は筋肉量にリアルタイムに反映するように感じます。
前回検査日(9/5 実験開始)→今回検査日(11/7) の変化です。
■検査結果(9/5→11/7)
アルブミン 4.3 → 4.5
総コレステロール 247 → 250
LDLコレステロール 149 → 161
HTLコレステロール 77 → 77
中性脂肪 59 → 48
AST 19 → 19
ALT 18 → 16
γ-GT 16 → 16
血糖値 104 → 95
HbA1C 5.8 → 5.8
クレアチニン 0.75→ 0.72
eGFR 82.9 → 86.7
尿酸 5.3 → 5.7
■体組織(9/5→11/7)
体重 56.1 → 54.8
筋肉量 43.9 → 43.7
体脂肪率 17.5 → 15.9
内臓脂肪レベル 9.5 → 8.5
※身長161.5cm
■食事(月平均)
8月→ 9月→10月→11月
摂取量 1800→1690→1596→1493 kcal
蛋白質 113→ 107→ 104→ 106 g
脂 質 131→ 119→ 110→ 98 g
糖 質 42→ 47→ 47→ 47 g
西村 典彦さん、コメントありがとうございます。
貴重なデータありがとうございます。
今日の記事にさせていただきます。
今朝も朝3時から12.6Kランニング(アップルウォッチNIKEアプリで5’48″/KM)。
朝運動すると頭も冴え(るような気がします)、一日いろんなことが捗ります。
眼鏡が曇るのが悩みです。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
朝3時ですか!すごいですね。私も空腹ランニングを良く行いますが、非常に冴える気がしますし、気分が良いですね。
でも北海道はもう寒くなってきました。昨日も朝ランを始めたときの気温は1度でした。冬は嫌いです。
私もジョギングは、早朝です。5:30頃から1時間程度で10 km程度走ります。
コロナ前は、土日だけでしたが、テレワークをすることが多くなり、ジョギングの回数も増えました。出社時は走る時間がなかったです。
走ると頭がすっきりする気がします。
じょんさん、コメントありがとうございます。
空腹のケトランは脳にたっぷりのケトン体を送り込むのかもしれないですね。
以前母の事でアドバイスいただきありがとうございます。「この状態で退院なんて無理」と方々から言われ続け、訪問診療医が見つからない中、受け入れてくれる医師が見つかりなんとか退院しましたが、少し気になることが・・・。退院した時から「エルネオパ2号」を毎日1パック(40滴)継続中です。退院時は高カロリーゼリーやドリンクの補助食品と全粥状態で、寝たきりで開眼も発語もほぼない状態でしたが、退院して2か月の現在はよく笑い、大好きな豚カツを食べ、車椅子に乗り、家族と食卓を囲めるようになりました。全介助ですが(笑)。自宅療養を受け入れてくれた医師の治療方針には、なかなか言いにくいところです。血糖値が204となっていた時から、糖質は一切やめ、卵・豆腐・刺し身・肉・オリーブオイル・MCTオイル・アマニオイル・マヨネーズ・(高齢・女性向け)プロテインを中心に野菜やキノコをとりつつ摂取しています。食欲はどんどん旺盛になり元気な時とほぼ同じくらい食べます。一日の血糖値を測ったところ食前は100位で、食後2~3時間で高くても140でおさまっています。TPは入院時は3.7まで下げられてしまいましたが、今は何とか6前後に留まっています。軽度貧血はありますが、たいしたことないです。低Naになりやすく、梅干し、味噌汁は欠かせません。137~140で経過しています。アルブミンが3.7で低いです。退院直後よりかなり動きも多くなっていますが、要介護5には変わりありません。エルネオパ2号を継続している事に関して、それほどシリアスにならなくても大丈夫でしょうか。(入院中は清水先生のアドバイス通り主治医に話し、ビーフリードとイントラリポスで経過しました)疾患名は脳膿瘍です。アルブミンやTPが基準値になればエルネオパを検討してくれそうな気もするのですが、糖質制限・運動・たんぱく質摂取を心がけてはいますが、食事などで具体的にもっと気を付けることはあるでしょうか?