今回も「その1」「その2」「その3」の続きです。もちろん、突っ込む記事はこれです。ロサンゼルスにはチェリーがいっぱい実っているようです。
今回は茶色い炭水化物の玄米についてです。
この記事の4ページ内容を読むと次のように書かれています。
「玄米にはさらに色々なメリットがあることが複数の研究で報告されています。
例えば、サンプルサイズの小さな研究ですが、インドで行われた実験(ランダム化比較試験)では、白米と比べて玄米では血糖値の上がりを約20%減少させたと報告されています。玄米が糖尿病のリスクを下げたり、ダイエットに有効なのはこれが理由だと考えられます。」
この記事の著者はエビデンスレベルについて重要視しているはずです。しかし、ここにきて急にサンプルサイズの非常に小さな研究を引用しています。他に良いチェリーを見つけられなかったようです。もちろん玄米を食べる習慣など欧米にはあまりないでしょうから、玄米を扱う研究も限られてきます。インドのチェリーは次のようです。(論文はここ)
15人の太りすぎ(BMI23以上)25〜45歳の糖尿病のないアジア系インド人を対象にランダム化クロスオーバー試験を行いました。精製された白米群と、玄米群、玄米+マメ群です。夜は通常食で、朝と昼食は白米と玄米やマメを変えた食事をします。そしてこの試験を行った期間はたった5日間です。
人数は15人、試験期間は5日間。エビデンスとしてどうでしょうか?これで玄米は血糖値を下げると結論付けて良いでしょうか?
私もチェリーピッキングが好きなので、他のチェリーを探してみました。私が摘み取ったチェリーは次のようです。
対象は糖尿病または糖尿病のリスクが高い202人と先ほどの研究の13倍以上の人数です。期間は16週間で、先ほどの研究の22倍です。その結果は次のようです。(表は原文より改変)
16週間後の変化 | ||
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変数 | 白米 | 玄米 |
BMI | -0.08(-0.18〜0.01) | −0.17(−0.27〜−0.06) |
腹囲cm | −0.37(−0.78〜0.04) | −0.27(−0.86〜0.31) |
収縮期血圧mmHg | −4.78(−6.88〜−2.68) | −5.39(−7.49〜−3.29) |
拡張期血圧mmHg | −3.82(−5.13〜−2.51) | −3.92(−5.25〜−2.58) |
血糖値mmol/L | −0.16(−0.45〜0.13) | 0.01(-0.21〜0.22) |
HbA1c | 0.20(0.04〜0.36) | 0.13(0.03〜0.22) |
インスリンμU/mL | 0.19(-0.89〜1.26) | 0.13(-0.43〜0.68) |
HOMA-IR | 0.07(-0.31〜0.44) | 0.03(-0.16〜0.22) |
先ほどのインドの研究とは比較する項目が違いますが、16週間で空腹時血糖は変化なし、HbA1cはどちらも増加、インスリンとHOMA-IRは変化なしです。白米と玄米に全てのパラメーターの違いはありませんでした。
たとえ玄米が白米よりも血糖値の上がりを減少させたり、体重増加を軽減したりするとしても、それはあくまで白米と比較したものであり、玄米が健康的であるということではありません。江部先生もご自身、玄米魚菜食を実践していたのに体重が増加し、糖尿病を発症したとおっしゃっています。
玄米の健康神話は疑う必要があるでしょう。
糖質制限
「Substituting white rice with brown rice for 16 weeks does not substantially affect metabolic risk factors in middle-aged Chinese men and women with diabetes or a high risk for diabetes」
「白米を玄米に16週間置き換えても、糖尿病または糖尿病のリスクが高い中年の中国人男女のメタボリックシンドロームの危険因子に実質的な影響はない」(原文はここ)
精米機には精米後の米糠が溜まっていて、ほぼタダで入手できます。
どうしても玄米の栄養成分を摂りたい方は、玄米ー糖質=米糠(栄養成分の固まり)をなんとか美味しく食べる工夫を考えた方が良いのでは?
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
確かに米ぬかの方が良いと思います。ほとんどの栄養成分は米ぬかの方にありますからね。
ただ、米ぬかでどれほど血糖値が上がるのかは試したことがありません。