日本の糖尿病の食事療法のガイドラインには次のような記述があります。
「メタ解析の結果では、総炭水化物摂取量と糖尿病発症リスクに有意な関係を認めなかったと報告されている。」
さて、この根拠となる論文を見てみましょう。この論文で選ばれた研究は以下のようです。(図は原文より)
上の図で注目すべきは黄色の蛍光で示した部分です。炭水化物摂取量に応じてどの研究でもいくつかのグループに分けています。そのグループ分けの最高量のグループと最低量のグループの炭水化物摂取量または総エネルギー摂取量に対する割合を示しています。最低グループの摂取量として最も低いのは下から4つ目の研究で、104.38g/日です。これならとりあえずギリ糖質制限と言えそうです。その他は130g/日を超えたものばかりです。ただ、下から4つ目の研究は当然、食事アンケートによるものです。過少申告もありそうです。そこで、中身を見てみると、最低の104.38gのグループのエネルギー摂取量はなんと1,000kcal/日程度しかありません。対象が女性だけであるとはいえ、あまりに摂取エネルギーが少なすぎます。完全に過少申告でしょう。
炭水化物の摂取割合の研究は最低でも33.4%です。これは糖質制限ではありません。
つまり、今回の研究も、全く糖質制限とはほど遠い研究ばかりを集めて分析してしまった、無意味なエビデンスを採用して、総炭水化物摂取量と糖尿病発症リスクに有意な関係を認めなかった、と言ってしまっているのです。根拠がないものを根拠があるように見せる記述は一般社会では「詐欺」と考えられます。
先日の記事「スポーツドリンクに含まれる電解質には意味がない」のような、スポーツドリンクが効果があるように見せかける企業の戦略と、医療が同じレベルではダメでしょう。
日本の糖尿病治療に明日はあるのでしょうか?次のガイドラインの改訂では、手の平が返されるのでしょうか?
糖質過剰症候群
「Long-term Low-carbohydrate Diets and Type 2 Diabetes Risk: A Systematic Review and Meta-analysis of Observational Studies」
「長期の低炭水化物ダイエットと2型糖尿病のリスク:観察研究の系統的レビューとメタ分析」(原文はここ)
通常の(糖質無頓着)食事摂取を継続していると、データの細かい数字を読みとるまでの 集中力を維持するのは困難で、取り敢えず結果で「自分は大丈夫」安心するのでしょう。
正論は「うるさい事いわないで。飯がまずくなる」程度の認識かも。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
ほとんどの人は細かいところまで気にせず、結果だけを重視していると思います。
それをガイドラインを作る側は知っているので、このようなガイドラインが出来上がるのでしょう。