アメリカ糖尿病学会の2022年の第82回Scientific Sessionsの抄録によると、ちょっと残念な報告が上がっています。その報告はこれまで糖質制限で1年、2年と続けられていた研究の5年間の結果です。抄録なので、要旨しかわかりませので、論文化されるまで詳細はわかりません。しかし、結果は非常に残念であり、これがエビデンスとなってしまうのは、糖質制限反対派に都合よく使われてしまう可能性があります。

今回の報告は、以前の記事「糖尿病に対する1年間の食事による生理的ケトーシスのパワー」「2型糖尿病に対する糖質制限の長期的効果 2年間でも圧倒的! その1」「その2」「2型糖尿病に対する糖質制限の長期的効果 3.5年のエビデンス」で書いた研究のその後です。

「Five-Year Weight and Glycemic Outcomes following a Very-Low-Carbohydrate Intervention Including Nutritional Ketosis in Patients with Type 2 Diabetes」

「2型糖尿病における栄養ケトーシスを含む超低炭水化物介入後の5年間の体重と血糖の結果」(抄録はここ

これまでの2年間を完了した200人の患者のうち、169人(84.5%)の患者が延長に同意し、122人(72.2%)が5年間継続しました。

その結果5年間で、体重が116.4から107.6 kg(-8.8 kg)、空腹時インスリンが25.8から24.5 mIU/L(-7.9 mIU/L)、HOMA-IRが9.1から6.6(-2.5)に持続的に改善しました。糖尿病治療薬の合計は46.6%減少し、メトホルミンを除く59.9%は処方が中止されました。糖尿病治療薬を処方された患者の割合85.2%から71.3%に減少し、スルホニル尿素薬(27.0%から4.9%)、インスリン(26.2%から13.1%)、SGLT2阻害薬(10.7%から2.5%)と5年で有意に減少しました。 薬剤の使用量が減少したにもかかわらず、HbA1cは7.5から7.2%(-0.3%)に改善しました。

 

「Five-Year Follow-Up of Lipid, Inflammatory, Hepatic, and Renal Markers in People with T2 Diabetes on a Very-Low-Carbohydrate Intervention Including Nutritional Ketosis (VLCI) via Continuous Remote Care (CRC)」

「継続的リモートケア(CRC)による栄養ケトーシス(VLCI)を含む超低炭水化物介入による2型糖尿病の脂質、炎症、肝臓、および腎マーカーの5年間の追跡調査」(原文はここ

5年で、HDLコレステロールは43.0mg/dlから50.6mg/ dl(+ 17.7%)に、apoA-Iは146.9mg/dlから153.5mg/dl(+ 4.5%)に有意な増加し、総コレステロール、LDLコレステロール、apoB変化はありませんでした。非HDLコレステロールは139.2mg/dlから128.9mg/dl(-7.4%)とわずかに低下し、中性脂肪は202.3mg/dlから165.1mg/ dl(-18.4%)に低下しました。

炎症マーカーは大幅に改善し、hs-CRPは7.8nmol/Lから4.4nmol/ L(-43.6%)、白血球数は7.2k/mm3から6.4k/ mm3(-11.1%)でした。

肝臓マーカーは正常範囲内にあり、腎のマーカーに変化はありませんでした。eGFRはCKD2で安定していました。eGFRが60 ml / min / 1.73m2未満の10人の分析では、47.8から57.1 ml / min / 1.73m2への増加していました。ベースラインでCKD3の人のうち6人(60%)がCKD2に上昇しました。ベースラインでCKD2の1例がCKD3に進行しました。

 

この結果を見てどう思いますか?私は残念です。確かに5年間でベースラインよりは改善し、また効果は継続していますが、効果の程度が非常に小さく見えます。最後の3年間が本当にケトーシスを継続できていたのか疑問です。特に体重の減少程度が非常に小さいのには驚きと失望を感じました。私でさえ18kg程度減少したのに、100kgオーバーの体重が10kg以下の減少しか得られないのは、どこか方法に誤りがあるとしか思えません。

インスリン値やHDLコレステロール、中性脂肪の変化も物足りません。どこかで糖質をしっかり摂取しており、データは虚偽なのか、辻褄合わせをしてデータを出しているのか、細かいことはわかりません。もちろん、なかなか糖質制限でも痩せない人はいると思いますが、ここまでではないでしょう。

5年間という長期の研究はこれが恐らく最長で、唯一でしょう。それだけにこの結果をもって糖質制限の効果はこんなもんだと思われてしまうのが残念で仕方がありません。

論文化された際には中身をじっくり見てみたいと思います。

9 thoughts on “糖質制限5年間の残念な結果”
  1. NHKラジオニュースをよく聞きます。
    先日、糖尿病専門医がダイエットについて解説
    「糖質制限は筋肉が落ちたり眩暈などの症状、リバウンドもあるので勧められない」そうです。
    受診料払っている者としては残念ながら、
    朝コーヒーだけ・夕食はサラダのみ、といった食習慣を「糖質制限」と認識されてました。
    確かに眩暈しそうです。

    「なんちゃって糖質制限」ありそうですね。

  2. 糖質制限を始めて1年が経過しました。
    体重は20キロ減少し、血圧も安定。不整脈も改善しました。
    実体験から糖質制限の有効性は確信しているし、糖質制限に関する本も10冊以上読みました。
    しかし、最近、ふと思うのですが、もし世の中の人の大半が糖質制限に目覚め、米や麦などの穀物を摂取しなくなったとしたら、果たして世界人口70億人超を養っていくだけのタンパク質と脂質が地球上に存在するのでしょうか?
    昆虫食なども考えられなくはありませんが、肉や卵、乳製品は絶対的に不足し、世の中は、サバイバル状態に陥るかもしれません。
    もちろん、そんな世の中がすぐに到来するとは思えませんが、可能性としては排除できないような気がします。

    1. ペーすけさん、コメントありがとうございます。

      糖質制限で様々な改善良かったですね。
      糖質は非常に依存性の高いものですから、絶対に世界中で大半の人が糖質制限をする時代は来ません。
      多く見積もっても2割程度だと思っています。

  3. 清水先生、こんばんは。
    この文献の検査値は糖質制限の方々のものとは思えないですね。
    糖質制限がどのような内容だったのかわからないですね。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      一応ケトーシスを確認しているはずですが、それが嘘の申告なのか、その時だけ頑張って糖質制限をしているのか?
      何かが違う気がしてなりません。
      もちろん、この結果でも糖尿病の標準治療では絶対に到達できないレベルですが。

  4. 確かに、おかしな結果ですね。考えられる一番大きな理由は、いつも、ドクターが指摘している「食事の過少申告」ではないかと。5年間といえば、絶対に自宅(外食も含め)での食事ですから、過少申告は当然考えられますね。食事はまともに申告しても、おやつを一日4回食べていたとかも考えられますし。

    1. omasicoさん、コメントありがとうございます。

      一応、ケトン体値の申告もあるはずですが、これが虚偽なのか、申告の前日だけコントロールしていたのか、
      それともやはり2年で平均ケトン体値270なので、ケトーシスに入っていたとは言えないのかもしれませんね。

  5. 私は糖質制限5年になります。薬剤なしで糖尿病は正常値を維持していますし、体重もBMI21前後を維持しています。日常的に運動はしていませんが除脂肪体重(筋肉量)も維持しています。糖質制限が原因で筋肉量が減ることはないと思います。
    研究内容で気になるのは、中性脂肪です。減ってはいますが正常値にはなっていないのではないのではないでしょうか。ケトーシスが維持できているように思えません。
    糖質制限に否定的な多くの研究同様にこの研究も中途半端なケトーシスを維持できていない糖質制限とは言い難いものではないかと想像できます。
    糖質制限で大事なのはケトーシスを維持することであり、そうでなければカロリー制限と何ら変わらないのではないでしょうか。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      ケトン体値はそれぞれ違い、上がりやすい人もいますが、そうでない人もいると思います。
      ただ、今回の研究は平均で270というケトン体値なので、多くの人がケトーシスになっていなかったようです。
      私の以前の記事も過剰な「称賛」をしてしまっていたので、反省すべきですね。
      それでも、通常の治療よりは成績がかなり良いのですが。

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