毎回ウルトラマラソンの前後では血液検査を行っています。今回は4年ぶりのレースでしたが、レース前後の検査データの傾向は変わっていません。(古いデータは「ウルトラマラソンと血液検査2018」をご覧ください)
レース前 | レース後 | レース前 | レース直後 | レース翌日 | レース前 | レース後 | |
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検査項目 | 18.6.22 | 18.6.25 | 19.6.28 | 19.6.30 | 19.7.1 | 23.06.23 | 23.06.26 |
白血球数 | 4240 | 7590↑ | 4340 | 12690↑↑ | 7050↑ | 4250 | 5230 |
赤血球数 | 467 | 409↓ | 465 | 472 | 401↓ | 462 | 410 |
ヘモグロビン | 14.1 | 12.4↓ | 14.2 | 14.4 | 12.2↓ | 14.3 | 12.6 |
血小板数 | 18.2 | 15.1 | 18.8 | 21.6 | 15.2↓ | 20.9 | 16.2 |
総蛋白 | 7.5 | 6.6↓ | 7.3 | 8.1↑ | 7.0↓ | 7.6 | 6.7 |
アルブミン | 4.7 | 4.2↓ | 4.7 | 5.1↑ | 4.4↓ | 4.8 | 4.4 |
総ビリルビン | 1.2 | 1.6↑ | 1.1 | 1.2 | 1.5↑ | 0.9 | 1.6 |
直接ビリルビン | 0.3 | 0.4 | 0.2 | 0.3 | 0.3 | 0.2 | 0.3 |
AST(GOT) | 14 | 51↑ | 13 | 35↑ | 47↑↑ | 20 | 40 |
ALT(GPT) | 15 | 21 | 13 | 23 | 31↑ | 38 | 27 |
LDH | 141 | 232↑ | 134 | 319↑ | 232↑ | 144 | 190 |
CPK | 79 | 1725↑↑ | 82 | 690↑↑ | 780↑↑ | 83 | 990 |
BUN | 18.8 | 24.9↑ | 18.1 | 29.5↑ | 26.0↑ | 24.9 | 26.8 |
クレアチニン | 0.80 | 0.73 | 0.8 | 0.83 | 0.64↓ | 0.72 | 0.71 |
ナトリウム | 140 | 138 | 141 | 144 | 140 | 138 | 137 |
カリウム | 3.9 | 3.1↓ | 4.1 | 5.5↑ | 3.0↓ | 4.2 | 3.8 |
クロール | 101 | 102 | 103 | 102 | 103 | 102 | 104 |
カルシウム | 9.1 | 8.5↓ | 9.2 | 10.0 | 8.4↓ | 9.2 | 8.7 |
鉄 | 104 | 65 | 50 | 88↑ | 85 | 100 | |
フェリチン | 62.4 | 104.9↑ | 60.4 | 64.3 | 86.0↑ | 22.8 | 59.4 |
TIBC | 353 | 389 | 316↓ | ||||
CRP | 0.05以下 | 6.17↑↑ | 0.05以下 | 0.18↑ | 3.88↑↑ | 0.17 | 2.28 |
中性脂肪 | 45 | 33↓ | 32 | 34 | 25 | 34 | 23 |
総コレステロール | 318 | 265↓ | 355 | 396 | 301↓ | 357 | 303 |
HDLコレステロール | 99 | 95 | 106 | 119 | 104 | 106 | 96 |
LDLコレステロール | 213 | 150↓ | 212 | 233 | 169↓ | 221 | 178 |
血糖 | 91 | 94 | 86 | 97 | 91 |
現在レース前は当然糖質制限ですが、レース中には糖質入りのエネルギージェルを摂ります。しかし、今回は暑いからこそ、それほど積極的に糖質をレース中に摂ることはしませんでした。その方が熱中症には成りづらいのではと勝手に考えていたからです。また暑いからこそ前半は心拍数を上げず、体力を温存するようにもしました。
今回のデータでいつもと違うのは白血球増加がほとんど起きていないことです。ほとんどの場合レース翌日は7,000以上になっていたのに、今回は5,000台です。CRPの上がりも過去最低です。なぜ炎症が軽度だったのでしょうか?よくわかりません。しかし2019年の考察でも書きましたが、練習不足で臨んだレースよりも、調整が上手くいきそれなりの練習ができた年の方がCPKや炎症所見があまり上がらないのではないかと思います。今年もそれなりに練習が積めました。
溶血はいつも通り起きていて、ヘモグロビンは低下しています。ビリルビンも上がり、鉄も上がっていますね。
総蛋白もアルブミンも毎年かなりの減少です。ダメージの修復にはタンパク質が必要なのでしょう。
カリウムの低下は軽度でした。これまでで一番汗をかいたと思っていますが、汗での喪失は意外と少なかったのかもしれません。「第38回サロマ湖100kmウルトラマラソン分析 エネルギーと塩分と水分」でも書いたように、今回非常に大量の汗をかいたのに、汗が水っぽく、塩分の味がせず、電解質の喪失が少なかったのではないかと思っています。
今回もカルシウムが低下しました。アルブミン低下による見かけ上の低下かもしれません。カルシウムの半分程度はアルブミンと結合しています。しかし、これもいつもよりも軽度です。
フェリチンも炎症でレース後増加していますが、今年はレース前が非常に低かったので、増加しても大した値ではありませんね。
脂質系の中性脂肪、総コレステロール、LDLコレステロールはレース後に低下しています。体中の細胞が脂質のエネルギー、コレステロールを欲しているのでしょう。
肝機能系のAST、ALTはレース前に20と38となっていて、普段よりも軽度上昇していました。表には示していませんがγGTが104もあり、肝機能障害を思わせます。実はレース前訳あって漢方薬を何度か飲みました。そこに含まれるオウゴン(黄芩)が悪さをしたと思います。自分の体がここまでオウゴンに反応するとは思っていませんでした。今後はレース前だけでなく普段も気を付けないと…
しかし、以前も書きましたが、人間の体はこれほどの過酷な運動を行っても、この程度の変化に抑えているのです。素晴らしい機能を備えています。逆に、激しい運動もしないのにデータが非常に崩れている人は、どれほど人間の本来のメカニズムに反したことをしているか?または、どれほどダメージのある状態なのか?ということを考えた方が良いのかもしれません。
4年分年齢重ねていらっしゃるのに関わらず、100kmレース前後の検査データの傾向変化が無いとは、
4年分の糖質制限による体質改善も進んでいらっしゃるのですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
毎年データを取って、自分なりに分析して楽しんでいるだけです。
あまり世の中にこのようなデータが公開されていないので、興味がある方にとって
何かの足しになればと思います。
「今回は暑いからこそ、それほど積極的に糖質をレース中に摂ることはしませんでした。その方が熱中症には成りづらいのではと勝手に考えていたからです。」
糖質摂取は短時間競技では「脳をだまし」記録向上につながるのかもしれませんが、
血糖値の変動によって、長時間の運動では身体へのダメージとなるのでしょうか。
飲酒で2〜3時間は無敵な気分でも、実際は身体に負担かけ、
翌朝はヘロヘロなことと似ていますね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
推測でしかありませんが、熱中症が増加したのは糖質過剰摂取によるものだと考えています。
そうすると、熱中症にスポーツドリンクを推奨するのはまさにマッチポンプです。
運動してもスポーツドリンクが必要ないのに、運動もせずただの発汗でスポーツドリンクなんて馬鹿げています。
こんにちは。
シューズはどんなものを履いて走りましたか?
佐藤 猛志さん、コメントありがとうございます。
今回の勝負シューズはEvoRide SPEEDでした。ホカのMACH 5と迷いましたが、何となくEvoRideにしました。