スタチンと認知症の関連はいまだに議論があります。アメリカのFDAはスタチン使用と認知障害との潜在的な関連性について2012年にblack box warning(枠囲み警告)を出しています。FDAは「まれに、スタチンの使用に関連した認知障害(例、記憶喪失、物忘れ、健忘症、記憶障害、混乱)の市販後報告があります。報告されているこれらの症状は一般に重篤ではなく、スタチンの中止により回復可能ですが、症状の発現までの時間(1日から数年)と症状の消失(中央値3週間)はさまざまです。」と述べています。(ここ参照)
最近の研究では、スタチンは認知機能低下に関連しないという結果がいくつも出ています。だから、現在のところ何とも言えません。
しかし、私はエビデンスの中でも再現性のある研究の意味は大きいと思っています。(この論文参照)
この研究では12 週間、18人の高齢者にスタチンの6週間の中止、その後6週間の再投与を受けました。総コレステロールはスタチンの中止により増加し、再投与により減少しました。認知機能の評価で、 スタチンの中止に伴ってスコアの改善を認め、再投与後にスコアの低下が起きたのです。
コクランでも認知症予防に対するスタチンの効果は否定的です。(ここ参照)
認知症は糖質過剰症候群であり3型糖尿病とも言われています。2型糖尿病と認知症のリスクの関連は十分にあることを考えると、スタチンによる糖尿病発症リスクは認知症のリスクにもなりかねない可能性があります。
全ての人にとって、敢えてLDLコレステロールを低下させる利益はほとんどありません。LDLコレステロールは量ではなく、コレステロールを運ぶLDLというリポタンパク質の質が問題です。
糖尿病でなくても糖質過剰摂取ではLDLコレステロールはあまり上昇しません。しかし、そのLDLの質は非常に低いです。小さな危険なLDLが増えたり、糖化や酸化を受けたりしやすくなります。
さらにケトン体が認知機能を改善することを考えれば、コレステロールを気にするより、糖質摂取量を気にした方が認知症の予防効果は高いでしょう。(「ケトン体は認知機能を改善する」「アルツハイマー病に対するケトン食の効果」この論文など参照)
「Lipid-lowering therapy and the risk of dementia: lessons learned from two decades of controversy」
「脂質低下療法と認知症のリスク:20年にわたる論争から学んだ教訓」(原文はここ)
改めて、
糖質制限後は加齢にも関わらず
糖質過剰摂取時代より認知機能の
改善を(主観ですが)感じます。