高齢者による自動車事故が増加しています。しかし、その原因の一部は医療にもあります。医師が処方する薬には副作用があり、運転のパフォーマンスを低下させる薬もあるからです。ただでさえ認知機能や判断力、瞬発性が低下する年齢で、さらに薬の副作用が重なれば、事故のリスクが高くなるのは当然でしょう。
今回の研究では、65歳以上の認知的に健康な人198名を対象として、毎年追跡して、潜在的にドライバーに問題を与える薬物使用と運転の路上試験の成績との関連性を評価しました。
運転の路上試験は合格、ぎりぎり、不合格に分け、ぎりぎりまたは不合格の評価を受けるリスクを分析しました。(図は原文より)
上の図は運転に支障を引き起こす可能性のある4つの薬物カテゴリーと路上試験で、ぎりぎりまたは不合格の結果の確率です。Aはあらゆる抗うつ薬、BはSSRIとSNRI(抗うつ薬の一種)、Cは鎮静薬や眠剤、Dは消炎鎮痛解熱剤のNSAIDsとアセトアミノフェンです。どれもそれらの薬の非使用者と比較すると、ぎりぎりまたは不合格になる確率が高くなります。
ぎりぎり/不合格評価のリスクは抗うつ薬の使用で2.82倍、SSRI/SNRIの使用は2.68倍、鎮静剤および眠剤をの使用は2.72倍、NSAID/アセトアミノフェンの使用は2.72倍増加しました。
上の図は脂質低下薬および抗コリン薬/抗ヒスタミン薬の使用と路上試験ぎりぎり/不合格の結果の確率です。特に意外なのは抗コリン薬/抗ヒスタミン薬で有意差が出なかったことですね。
それよりもNSAID/アセトアミノフェンの使用は2.72倍増加という方が意外かもしれないですね。NSAIDは中枢作用はあまり言われていないと思いますが、アセトアミノフェンは中枢に働く薬なので、もしかしたらアセトアミノフェンの方が危険かもしれないですね。以前の記事「アセトアミノフェンは感覚、感情を低下させるかもしれない」で書いたように、アセトアミノフェンは、危険な活動を考えるとき、人々に否定的な感情を感じさせないよう作用しているようです。このことは危険な行動を増加させる可能性があります。
高齢者は腎機能の問題があるのでアセトアミノフェンの安易な処方が多いですが、運転する高齢者には注意喚起が必要かもしれないですね。
我々医師はますます増加する運転する高齢者にもっと注意を向ける必要があると思います。(「もしかしたら、我々医師が高齢者ドライバーの事故に加担している可能性がある」参照)
「Medication and Road Test Performance Among Cognitively Healthy Older Adults」
「認知的に健康な高齢者における投薬と路上検査の成績」(原文はここ)