脳卒中における小さな危険なsdLDL

脳卒中と一括りにして言いますが、そこには脳梗塞と脳出血が含まれており、それぞれは全く違う病態に見えます。脳梗塞は血栓などがつまり、脳の虚血が起きます。脳出血は文字通り出血です。真逆に近い感じです。

今回の研究ではLDLコレステロールのリポタンパク、LDLの中の小さな危険なsdLDLと脳卒中の関連を分析しています。脳卒中患者299人 （脳血栓症159人、ラクナ梗塞42人、脳内出血98人） と対照299を比較しました。LDLのパターンAは大きなフワフワした良質のLDLが優位なもので、パターンBは小さな危険なsdLDLが優位なものです。（図は原文より）

上の図はコントロール、脳卒中患者全体、脳血栓症、ラクナ梗塞、脳出血の順です。sdLDL優位のパターンBはそれぞれの脳卒中の可能性を高めました。脳卒中全体では2.28倍、脳血栓症2.87倍、ラクナ梗塞は調整なしで2.56倍でしたが調整すると有意ではなくなりました。脳出血は2.8倍です。

つまり、脳の血管が詰まる脳梗塞も脳の血管から出血する脳出血もどちらもsdLDLが増加するとリスクが高くなるのです。

上の図はsdLDLに対するパラメータの影響です。中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、収縮期⾎圧、および糖尿病の病歴はすべて、sdLDLの割合の増加と有意に関連していましたが、興味深いことにHDLコレステロールもLDLコレステロールも負の関連です。負の関連というのは高いほどリスクが低くなることを示してます。HDLコレステロールだけでなく、LDLコレステロールも高いほどリスクが低いのです。

これらすべての要因を調整した後でも、sdLDL と脳卒中の間には有意な関係がありました。

良質なLDLではなく、sdLDLが様々な疾患のリスク増加と関連しています。そこでsdLDLが簡単に測定できれば本当は良いのですが、ちゃんとした検査がなかなかできません。恐らく現在最もシェアが大きいのはデンカ社の検査でしょう。

以前の記事「sdLDLが高いと言われたけれど…」で書いたように、デンカ社の検査は精度の問題があります。測定してもその評価も難しく、どうすればいいのかわからない検査は、ただ不安になるだけで何も有益なことはないと思います。

逆にこの検査の精度の低さを医療は利用する可能性があります。多くの人でsdLDLが高いように見せかければ、治療の対象が増加します。

私自身は、中性脂肪値とHDLコレステロール値で評価をすれば十分だと考えています。主に小さなLDLを有する人の75％は、中性脂肪/ HDLコレステロール比が2.0を超えると言われています。中性脂肪/ HDLコレステロール比が4を超える場合は明らかに小さなLDLがほとんどになります。糖質制限をするとほとんどの人は中性脂肪/ HDLコレステロール比が1を下回ります。

まずは糖質制限で脳卒中を予防しましょう。

「Small dense low-density lipoproteins and associated risk factors in patients with stroke」

「脳卒中患者における小さな高密度LDLと関連危険因子」（原文はここ）