糖質制限でケトン体があまり上がらないのですが… その2

人間は1日あたり最大300gのケトン体を生成することができると言われています。(ここ参照)

しかし、「その1」でも書いたように、糖質制限でもあまりケトン体が上がらない場合もあります。その理由として、エネルギーとして消費されている可能性を書きましたが、もう一つの理由として考えられることがあります。

それは、糖質制限でLDLコレステロールが増加することとも関連すると思われます。

以前の記事「糖質制限とLDLコレステロール上昇 その7 運動による上昇①」で書いたように、糖質制限をするウルトラマラソンランナーではLDLコレステロールが増加しています。そして、「その8」で書いたように、糖質制限アスリートでは、コレステロールの合成も不変または低下、吸収も低下なのに血液検査のコレステロールは増加しているのです。第3のコレステロールの増加の経路があると考えられます。

それがケトン体からのコレステロール合成です。

ケトン体のβヒドロキシ酪酸の前駆体であるアセト酢酸はしばしばミトコンドリア空間から出て、細胞質ゾルでアセトアセチルCoAに変換され、HMG-CoA レダクターゼ作用を介してコレステロール合成が行われる可能性があります。ケトン合成はミトコンドリアでのみ、コレステロール合成は細胞質でのみ行われます。

慢性的に高エネルギー消費をするような状態だと、大量のケトン体を合成しますが、何らかの要因でアセト酢酸の状態でミトコンドリアから出ていくケトン体が増加し、それが血中のケトン体減少、LDLコレステロールの増加につながるのだと思われます。

でも、LDLコレステロールが高いのが悪いのですか?

糖質制限でケトン体質のウルトラランナーは、糖質過剰摂取ウルトラランナーと比較して、LDLコレステロールは確かにおよそ2倍にもなりますが、HDLコレステロールは60%も高く、小さなLDLであるsdLDLは56%も低くなります。

リポタンパク質インスリン抵抗性指数(LP-IR)というもので示されるインスリン抵抗性も、糖質過剰摂取ウルトラランナーでは平均26.7、ケトン体質ウルトラランナーでは平均5.8です。これをおよそでHOMA-IRに変換すると、糖質過剰摂取ウルトラランナーで2.51、ケトン体質ウルトラランナー1.58です。1.6以下正常、2.5以上はインスリン抵抗性ありと考えると、糖質過剰摂取ウルトラランナーはウルトラランナーでありながらインスリン抵抗性ありです。

血中のケトン体が減少して、コレステロールが増加しても、それ以外の数値は断然糖質制限の方が良いのです。そもそも様々な検査データは糖質過剰摂取を前提にしたものです。

もちろん私はこれからも糖質制限でケトランです。

「Paradox of hypercholesterolaemia in highly trained, keto-adapted athletes」
「高度に訓練されたケトン体に適応した運動選手における高コレステロール血症のパラドックス」(原文はここ

「Lipoprotein insulin resistance index: a lipoprotein particle-derived measure of insulin resistance」

「リポタンパク質インスリン抵抗性指数: リポタンパク質粒子由来のインスリン抵抗性の尺度」(原文はここ

One thought on “糖質制限でケトン体があまり上がらないのですが… その2

  1. 清水先生、いつもありがとうございます

    ブログや著書をいつも拝見してるのですが、私は物忘れが酷く整理整頓ができない、おそらくADHDです

    糖質制限をして以来、身体の組織は明らかに良くなってきましたが、この大事な事忘れたりしてしまう脳の不具合だけはなかなか治りません(普段はパソコンを使うことで解決させてるのですが理不尽な人事異動があり、パソコンをあまり使えない仕事になり最近問題がより顕在化してます)

    おそらくニューロン神経の問題よりも神経伝達物質であるシナプスが長い糖質中毒で失われており、脳の栄養をほぼケトン体にしても失われたシナプスを復活させるのは困難なのだと考えています

    関係のないコメント申し訳ありません

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