レムナントコレステロールと高血圧や2型糖尿病との関連性

コレステロールに善玉、悪玉はありません。どれも同じコレステロールです。違いはそれを運ぶリポタンパク質です。LDLコレステロールは悪玉コレステロールと不名誉な呼び方をされてしまっていますが、もちろん、その中で悪いものがあるとすればコレステロールではなくLDLです。

レムナントコレステロールも真の悪玉コレステロールと考えられていますが、悪いのはレムナントのリポタンパク質です。(「レムナントは酸化LDLとほとんど同じ?」参照)

ApoCⅢというアポリポタンパクは中性脂肪が豊富なレムナントリポタンパクが肝臓で取り込まれるのを低下させてしまいます。ApoCⅢが多くなることにより、高中性脂肪血症、高レムナントリポタンパク血症を引き起こすことになります。(「ApoCⅢがレムナントコレステロールと関連している」参照)そして、ApoCⅢは糖質過剰摂取で増加します。糖質の中でも果糖が最も危険です。(「果糖はブドウ糖よりもApoCIIIを大幅に増加させる」参照)果糖の摂取は、ブドウ糖の摂取と同様にChREBP-1およびSREBP-1を活性化しますが、ブドウ糖とは対照的に、インスリン分泌を刺激しません。そのため果糖摂取後のApoCIII発現は、インスリンによる負の調整が働かなくなり、ApoCIIIが大きく増加すると考えられます。

低脂質高糖質の食事は空腹時でもレムナントリポタンパク質を激増させる」でも書いたように、低脂質高糖質、つまり糖質過剰摂取はレムナントリポタンパク質を大きく増加させます。そして、レムナントリポタンパクは食後かなりの時間経っても大量の残存しています。(「レムナントリポタンパク質は食後12時間経っても大量に残っている」参照)

レムナントを簡単に知る方法は、中性脂肪値を見れば良いです。「レムナントコレステロール増加は高中性脂肪を表している」で書いたように、レムナントコレステロールが高いということは中性脂肪が高いことを表していることになります。レムナントコレステロールは中性脂肪を非常に多く含んだVLDLからできていることを考えれば当然です。

さて、前置きが長くなりましたが、今回の研究では、レムナントコレステロールと高血圧、2 型糖尿病との関連性、およびその2つの疾患の併発との関連性を分析しています。

2005~2018年のアメリカの国民健康栄養調査の17,749人のデータを使用しました。(図は原文より、表は原文より改変)

調整モデル3
OR(95%信頼区間)
 高血圧1.068(1.063,1.073)
 2型糖尿病2.259(1.797,2.838)
 高血圧と2型糖尿病2.362(1.834,3.041)

レムナントコレステロールの1単位(1mmol/L=38.7mg/dL)増加あたりのオッズ比(OR)は、高血圧で1.068、2型糖尿病で2.259、両方の併存で2.362でした。

上の図の横軸はレムナントコレステロール(日本の単位にするには38.7をかけてください)で縦軸が疾患を発症する可能性です。Aが高血圧、Bが2型糖尿病、Cは高血圧と2型糖尿病の合併です。レムナントコレステロールが増加するにつれて疾患リスクは徐々に増加します。レムナントコレステロールが0.5ちょい以上だと疾患の可能性が高くなります。日本の単位だと20mg/dL以上くらいでしょう。

総コレステロール<200mg/dLLDL-C<130mg/dLHDL-C≥40mg/dL
OR(95%CI)OR(95%CI)OR(95%CI)
高血圧2.085(1.565,2.777)1.984(1.572,2.504)1.797(1.440,2.241)
2型糖尿病2.481(1.920,3.206)2.169(1.703,2.763)2.431(1.828,3.232)
高血圧と2型糖尿病3.186(2.319,4.376)2.590(1.957,3.428)2.412(1.813,3.209)

上の表のように、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールがいわゆる正常の範囲にある場合のレムナントコレステロールと疾患の関連性ですが、不思議なことに高血圧や糖尿病の発症の可能性が高くなりました。まあ、LDLコレステロールは糖尿病では比較的低い値なので、当然なのかもしれません。

小さな危険なsdLDLとレムナントは炎症に関連している可能性があるし、ApoC-IIIは、インターロイキン-1βを刺激して炎症反応を促進するそうです。

この研究でも炎症関連指標(白血球、リンパ球、単球、好中球)は、レムナントコレステロールと高血圧や2型糖尿病との関連性を部分的に媒介しました。これらのうち、白血球の媒介効果が最も大きくなりました。

いずれにしても、悪いのはコレステロールそのものではありません。レムナントや酸化LDL、sdLDLが増加する状態が悪いのです。それらを増加させるのは糖質過剰摂取です。高血圧や2型糖尿病は糖質過剰症候群なので、レムナントコレステロール増加が高血圧や糖尿病と関連しているのは当然なのです。

様々な疾患を防ぐには食事の改善が必要です。

「Association of remnant cholesterol with hypertension, type 2 diabetes, and their coexistence: the mediating role of inflammation-related indicators」

「レムナントコレステロールと高血圧、2型糖尿病、およびそれらの共存との関連:炎症関連指標の媒介役割」(原文はここ

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